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地方での起業は、東京などの都市部と比べてコストを抑えながら、地域の特性を活かしたビジネスを展開できる魅力的な選択肢です。近年、テレワークの普及やデジタル化の進展により、地方でも都市部と変わらないビジネス環境が整いつつあります。
内閣府の調査によると、移住して起業する人の約86%がテレワークを実施しており、副業から本格的な起業へと発展させるケースも増えています。また、政府は地方創生の一環として、起業支援金や移住支援金など最大300万円の支援制度を用意し、地方での新しいチャレンジを後押ししています。
(出典:内閣府 地域の新たな担い手としての移住起業者に関する分析 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2022/05seisakukadai21-0.pdf)
本記事では、地方起業のメリットと課題、活用できる支援制度、そして成功に導くための具体的なポイントを解説します。地方での起業を検討されている経営者やマネジメント層の方々に、実践的な情報を提供いたします。
地方起業とは、東京・神奈川・埼玉・千葉の東京圏以外の地域で事業を立ち上げることを指します。特に近年注目されているのは、都市部から地方へ移住して起業する「移住起業」です。
従来の地方起業は、生まれ育った地域で事業を承継したり、地元の資源を活かした事業を展開するケースが中心でした。しかし、デジタル技術の発展により、場所を選ばずビジネスができる環境が整い、都市部で培ったスキルや人脈を活かしながら地方で新しい事業を始める動きが加速しています。
政府も地方創生の重要施策として起業支援に注力しており、2025年度は43道府県で起業支援金制度が実施される予定です。(出典:内閣府 地方創生 起業支援金 https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)
地方起業が注目される背景には、働き方の多様化と社会課題解決への関心の高まりがあります。新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが急速に普及し、場所に縛られない働き方が現実のものとなりました。
内閣府の調査によると、移住起業者のテレワーク実施率は85.8%と、地方在住の起業者(45.3%)や東京圏在住者(65.0%)を大きく上回っています。また、移住起業者の約41%が「社会や地域に貢献できる仕事がしたい」という動機で起業しており、収入よりも社会的価値を重視する傾向が見られます。
(出典:内閣府 地域の新たな担い手としての移住起業者に関する分析 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2022/05seisakukadai21-0.pdf)
デジタル化により商圏の制約が少なくなり、地方でも全国や海外をターゲットにしたビジネスが展開できるようになったことも、地方起業を後押ししています。
地方起業の最大のメリットは、初期投資と運営コストを大幅に抑えられることです。オフィスや店舗の賃料は都市部の半分以下のケースも珍しくありません。
内閣府の調査では、移住起業者の約28%が自宅の一部を事務所として活用しており、24.3%がシェアオフィスやサテライトオフィスなど柔軟な事業スペースを利用しています。都市部では高額になりがちなオフィス賃料を節約できることで、限られた資金を商品開発やマーケティングなど、事業の成長に直結する分野に集中投資できます。
また、人件費も都市部より抑えられる傾向にあり、固定費を低く保つことで、事業の安定性を高めることができます。
地方では都市部ほど市場が飽和しておらず、競合が少ない環境でビジネスを展開できます。特に、デジタルマーケティングやオンラインサービスなど、都市部では当たり前の手法が地方ではまだ浸透していない分野も多く存在します。
都市部で培った知識やノウハウを地方で活用することで、競合に対して優位性を確保しやすくなります。また、地域に根ざした事業を展開することで、地元の顧客から強い支持を得られる可能性も高まります。
地域独自の資源や文化を活用したビジネスは、全国展開する大企業には真似できない独自性を持ち、ブランド価値の構築にもつながります。
地方には、農産品、伝統工芸、観光資源、自然環境など、都市部にはない豊富な地域資源が存在します。これらを活用することで、独自性の高いビジネスモデルを構築できます。
地方創生起業支援事業では、地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進など、地域の課題に応じた幅広い事業分野が支援対象となっています。
(出典:内閣府 地方創生 起業支援金 https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)
地域との連携を深めることで、自治体や地元企業からの支援を得やすくなり、事業の持続性も高まります。地域に貢献する事業は、住民からの信頼も得やすく、長期的な成長基盤を築くことができます。
地方起業における最大の課題の一つが、優秀な人材の確保です。都市部と比べて労働人口が少なく、専門的なスキルを持つ人材を見つけることが困難なケースがあります。
この課題に対しては、テレワークやリモートワークの活用が有効です。移住起業者の多くは、都市部に残った人脈を活用し、オンラインで業務を委託したり、副業人材を活用したりしています。内閣府の調査によると、移住起業者の84.2%が副業を実施しており、柔軟な働き方を取り入れています。
また、地域おこし協力隊や地域活性化起業人制度など、外部人材を受け入れる公的制度も活用できます。総務省の地域活性化起業人制度では、派遣元企業に対して年間最大560万円の支援が用意されています。
地方は人口が少ないため、地域内だけでは市場規模に限界があります。特に消費者向けビジネスの場合、顧客数の制約が事業成長のボトルネックになる可能性があります。
この課題を克服するには、オンライン販売やECサイトの活用が不可欠です。地域の特産品や独自のサービスを全国や海外に販売することで、市場規模の制約を突破できます。
実際に、移住起業者の多くはデジタルツールを積極的に活用しており、オンライン商談やネット販売により商圏を拡大しています。地方という地理的制約を、独自性やストーリー性に転換することで、むしろ競争優位性として活かすことも可能です。
地方では、都市部のようにビジネスネットワークが自然に形成されにくい傾向があります。移住起業者にとって、地域との人的つながりを構築することは、事業成功の重要な要素です。
内閣府の調査では、移住起業者が起業場所を選ぶ際に「親戚・家族がいること」「知り合いや同僚がいること」「以前訪問して場所が気に入ったこと」を重視する傾向が明らかになっています。つまり、何らかの「ご縁」が地方起業の成功確率を高めるのです。
地域の商工会や青年会議所、起業家コミュニティに積極的に参加することで、ビジネスパートナーや顧客との出会いが生まれます。自治体の移住支援窓口や起業支援団体も、ネットワーク構築の重要な拠点となります。
地方創生起業支援事業による起業支援金は、地域の課題解決に資する社会的事業を新たに起業する方を対象に、最大200万円が支給される制度です。起業等に必要な経費の2分の1が補助されます。
対象となるのは、東京圏以外の都道府県や市町村、または東京圏内の条件不利地域において社会的事業の起業を行う場合です。事業分野としては、子育て支援、地域産品を活用する飲食店、買い物弱者支援、まちづくり推進など、地域の課題に応じた幅広いものが想定されています。
(出典:内閣府 地方創生 起業支援金 https://www.chisou.go.jp/sousei/kigyou_shienkin.html)
2025年度は、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府以外の43道府県で実施予定です。各都道府県・市町村によって要件や申請書類、受付期間が異なるため、起業を検討している地域の自治体に直接確認することが重要です。
東京23区に在住または通勤する方が、東京圏外へ移住し、起業や就業等を行う場合、移住支援金が支給されます。世帯での移住の場合は最大100万円、単身での移住の場合は最大60万円が支給されます。
起業支援金と移住支援金を合わせると、最大300万円の支援を受けることが可能です。移住支援金の対象となるには、移住直前の10年間で通算5年以上、東京23区に在住または東京圏に在住して東京23区へ通勤していることなどの要件があります。
この制度は、地方への人の流れを創出し、地域の活性化を図ることを目的としており、多くの自治体が独自の上乗せ支援を行っている場合もあります。
地方起業では、国の制度以外にも様々な支援策が活用できます。経済産業省の中小企業庁では、創業・スタートアップ支援として複数の補助金制度を用意しています。
(出典:経済産業省 中小企業庁 創業・スタートアップ支援 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/chiiki/index.html)
【主な支援制度】
小規模事業者持続化補助金<創業型>:小規模事業者の販路開拓等を支援
日本政策金融公庫の新規開業資金:創業時の融資制度で特別利率が適用される場合も
各自治体独自の創業支援制度:家賃補助、設備投資支援など
これらの制度を組み合わせることで、初期投資の負担を大きく軽減できます。申請には事業計画書の作成が必要なため、計画段階から専門家のサポートを受けることをお勧めします。基本的には地域の商工会に相談すると、その町にあった支援制度のサポートをしていただけます。
内閣府の調査によると、移住起業者は平均年齢37.2歳、男性の割合が82.5%、平均世帯年収は623.2万円となっています。従来から地方に住む起業者(平均年齢44.9歳)と比べて若く、都市部でキャリアを積んだ後に地方で起業するパターンが多いことがわかります。
移住起業者の特徴として、雇用創出効果が大きい点が挙げられます。起業当初の従業員数が3人以上の企業の割合は、移住起業者で38%、地方起業者で28%となっており、移住起業者のほうが規模の大きい事業を展開する傾向があります。
また、資金調達方法も多様で、自己資金に加えて、金融機関からの借入、助成金・補助金、クラウドファンディングなど、複数の手段を組み合わせて資金を確保しています。
(出典:内閣府 地域の新たな担い手としての移住起業者に関する分析 https://www5.cao.go.jp/keizai3/2022/05seisakukadai21-0.pdf)
成功している地方起業家には、いくつかの共通点が見られます。
【起業のきっかけ】 移住起業者の多くが「自分の裁量で自由に仕事をしたい(45.1%)」「自己実現をしたい(37.8%)」「社会や地域に貢献できる仕事がしたい(41.1%)」という動機を持っています。特に注目すべきは、地方起業者と比べて「社会や地域に貢献したい」という意識が有意に高い点です。
【起業場所の選定】 移住起業者は、「以前訪問して場所が気に入ったこと」「観光地であること」など、生活の質や地域との縁を重視する傾向があります。単なるビジネス環境だけでなく、生活全体の満足度を考慮した場所選びが、長期的な事業継続につながっています。
【地域との関係性】 成功している起業家は、地域コミュニティとの良好な関係を構築しています。地域の課題を理解し、その解決に貢献する姿勢が、地元からの支援や協力を引き出しています。
移住起業者の大きな特徴は、テレワークと副業を積極的に活用している点です。テレワーク実施率85.8%、副業実施率84.2%という高い数値は、柔軟な働き方が地方起業の成功要因となっていることを示しています。
特に興味深いのは、起業準備段階で副業として事業を開始し、軌道に乗ってから本格的に起業するパターンが多いことです。移住起業者の約52%が、起業準備中に起業と同じ事業領域で副業に従事していました。
この「副業から起業へ」という段階的なアプローチは、リスクを抑えながら事業の実現可能性を検証できる有効な方法です。都市部での仕事を続けながら、週末や夜間に地方での事業を育て、十分な見通しが立った時点で完全移住するというステップを踏む起業家も増えています。
地方起業を成功させるには、地域の市場環境を正確に把握することが不可欠です。都市部と地方では消費者のニーズや購買行動が異なるため、先入観にとらわれず、現地での丁寧な調査が重要になります。
【調査すべき項目】
地域の人口動態と年齢構成
競合の有無と提供サービスの内容
地域住民の消費傾向と所得水準
地域固有の課題とニーズ
自治体の産業政策と支援制度
事業計画書の作成は、補助金申請に必要なだけでなく、事業の実現可能性を客観的に評価する機会となります。商工会議所や金融機関、自治体の創業支援窓口では、事業計画策定のサポートを提供しています。
地方起業において、デジタルツールの活用は市場規模の制約を克服する鍵となります。オンライン販売、SNSマーケティング、クラウドサービスなどを駆使することで、地方からでも全国・世界をターゲットにしたビジネスが可能になります。
【活用すべきデジタルツール】
ECサイト・オンラインショップ:BASE、Shopifyなどで簡単に開設可能
SNSマーケティング:Instagram、Facebook、X(旧Twitter)で情報発信
クラウド会計・管理システム:freee、マネーフォワードで業務効率化
Web会議システム:Zoom、Google Meetで場所を選ばない商談
プロジェクト管理ツール:Slack、Notionでリモートチーム管理
デジタル化により、地方でも都市部と同等のビジネス環境を構築できます。むしろ、地方の独自性とデジタルの利便性を組み合わせることで、新しい価値を創造できます。
地方起業の成功には、地域との良好な関係が欠かせません。移住起業者は「よそ者」として見られる可能性もあるため、地域に溶け込む努力が必要です。
【関係構築の具体的方法】
地域の祭りやイベントへの積極的な参加
商工会、青年会議所などの経済団体への加入
地域の課題解決に貢献する姿勢の明示
地元企業や生産者との協業
地域住民とのコミュニケーション機会の創出
地域コミュニティとの強い結びつきは、事業の安定性を高めるだけでなく、口コミによる顧客獲得や、地元メディアへの露出機会にもつながります。地域に根ざした事業は、大企業には真似できない独自の強みとなります。
地方起業では、複数の資金調達手段を組み合わせることが重要です。内閣府の調査によると、移住起業者は自己資金に加えて、金融機関からの借入(31.3%)、助成金・補助金(21.0%)、友人・知人等からの支援(25.7%)など、多様な資金源を活用しています。
【効果的な資金調達の流れ】
【ステップ1:自己資金の準備】
最低限の運転資金は自己資金で確保。創業時の生活費も含めて計画的に貯蓄。
【ステップ2:公的支援制度の活用】
起業支援金、移住支援金など、返済不要の補助金を最大限活用。
【ステップ3:金融機関からの融資】
日本政策金融公庫の創業融資や、地域金融機関の創業支援ローンを検討。
【ステップ4:その他の資金源】
クラウドファンディングで顧客開拓も兼ねた資金調達や、エンジェル投資家からの出資も選択肢に。
資金調達においては、事業計画の質が審査の鍵を握ります。専門家のアドバイスを受けながら、説得力のある計画書を作成することをお勧めします。
地方起業は、短期的な利益よりも、地域との共生と持続的な成長を目指す姿勢が重要です。地域に根ざした事業は、一朝一夕には構築できませんが、時間をかけて信頼関係を築くことで、強固な事業基盤となります。
【長期的視点で考えるべきこと】
地域経済への貢献と雇用創出
後継者育成や事業承継の計画
地域資源の持続可能な活用
地域コミュニティの活性化への寄与
若年層へのUIJターンの誘発
内閣府の調査では、移住起業者が若年層との交流事業などを通じて、さらなるUIJターン者を呼び込む効果が報告されています。自身の事業成功だけでなく、地域全体の活性化に貢献する視点を持つことで、行政や地域からのサポートも得やすくなります。
また、事業が軌道に乗った後も、常に新しい技術やトレンドを取り入れ、変化に対応できる柔軟性を維持することが大切です。
地方起業は、低コストで競合が少ない環境で、地域資源を活かした独自性の高いビジネスを展開できる魅力的な選択肢です。テレワークの普及とデジタル化により、地方でも都市部と変わらないビジネス環境が整いつつあります。
政府は地方創生の一環として、起業支援金(最大200万円)と移住支援金(最大100万円)を合わせた最大300万円の支援制度を用意しており、2025年度も43道府県で実施予定です。これらの制度を活用することで、初期投資の負担を大幅に軽減できます。
地方起業を成功させるには、綿密な市場調査、デジタルツールの活用、地域との関係構築、柔軟な資金調達戦略、そして長期的視点での事業運営が重要です。地方という選択は、単なる場所の移動ではなく、新しい働き方と生き方を実現する可能性を秘めています。
地方起業に関心をお持ちの方は、まずは気になる地域の自治体や商工会議所に相談し、支援制度や地域の情報を収集することから始めてみてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人

藤田 泰仁
合同会社well co代表。全国の商工会議所などの公的機関で登壇もする事業戦略コンサルタント。店舗開業支援は無料から行っており、上場企業を含む30社以上と提携し総合支援を行う。また民間でも集客から現場まで幅広く月額1万円から経営支援を行う。
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