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COLUMN

田舎ビジネスの成功例を公的事例集で比較|始める前に真似したい順番

2026.10.29

文責:藤田 泰仁

田舎ビジネスの成功例を公的な事例集で比べると、「地域の困りごとから始める」「小さく試してから広げる」「地域の外にも売る」という3つの型が見えてきます。始める前は、この順番どおりに、困りごとの確認→小さな試し売り→売り先の拡大と進めるのが真似しやすい方法です。

田舎ビジネスの成功例に共通するのは「困りごと・小さく試す・外にも売る」の3つの型

国や自治体が公開している事例集で田舎ビジネスの成功例を比べると、共通点は3つに整理できます。1つ目は、地域の人や産業が抱える困りごとから事業を始めていること。2つ目は、初期投資を抑えて小さく試し、売れ行きを見てから設備や人を増やしていること。3つ目は、地域の中だけでなく、地域の外や海外にも売り先を広げていること。始める前に真似するなら、この順番で進めるのがおすすめです。困りごとが本物かを確かめる前に大きく投資したり、地元だけの小さな市場に頼り切ったりすると、続けるのが難しくなりやすいからです。

合同会社well coの藤田です。事業戦略顧問として小規模事業者の支援をしながら、兵庫県西宮市を中心に地域の事業者の方々とも関わっています。地方での起業を考えている方から「田舎でうまくいっているビジネスって、何が違うんですか?」と聞かれることがよくあります。開業後の悩みとして多いのは売り先の確保です。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業後に苦労していることの1位が「顧客・販路の開拓」(48.8%)でした。この記事では、公的な事例集に載っている成功例を並べて比べ、真似しやすい「型」と「順番」を整理します。

田舎ビジネスの成功例は、どの公的事例集で調べればいい?

成功例を調べるなら、まずは国が選んで公開している事例集を見るのがおすすめです。選ぶ基準がはっきりしていて、売上や雇用などの数字が載っていることが多いからです。ネットの体験談と違い、「いつの数字か」も確かめやすくなります。今回は、次の2つを中心に見ていきます。

事例集・制度公開している機関どんな事例が載っているか
[ディスカバー農山漁村(むら)の宝](http://www.discovermuranotakara.com/)農林水産省・内閣官房農山漁村の地域資源を活かして、地域の活性化や所得向上に取り組む優良事例。第12回(2025年)は30地区を選定
[ローカル10,000プロジェクト](https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/local10000_project.html)総務省地域の資源と資金を使い、地域の課題解決につながる地域密着型の事業の立ち上げを支援する制度。活用事例も公開

「ディスカバー農山漁村の宝」は、農林水産省の発表によると、地域資源を引き出して地域の活性化や所得向上に取り組む優良な事例を選び、全国に発信するものです。ローカル10,000プロジェクトは、地域金融機関(地元の銀行や信用金庫など)からの融資などを組み合わせて事業を立ち上げる仕組みで、「地域の課題に対応していること」が要件の1つになっています。どちらも、地域の中で事業を続けることを前提にした事例が集まっています。

公的事例集の成功例を比べると、何が共通している?

「ディスカバー農山漁村の宝」でグランプリに選ばれた事例から、5つを並べてみました。数字は各事例ページに載っている期間のものです。業種も地域もばらばらですが、3つの型のどれかに当てはまる動きが見えてきます。

事例(地域)何をしたか載っている成果の数字当てはまる型
[一般社団法人Local Revolution](http://www.discovermuranotakara.com/sentei/select12/no01/)(北海道函館市)海に戻されていたマイワシを水揚げし、地元の加工会社が初期投資を抑えてアンチョビなどに加工令和6年度にマイワシ5tを消費、アンチョビ6,300本を販売困りごと・小さく試す
[株式会社もてぎプラザ](http://www.discovermuranotakara.com/sentei/select5/no10/)(栃木県茂木町)道の駅でゆずの加工品や地元産の米粉・卵のバウムクーヘンを開発。高齢化による農産物の供給不足に備えて農事組合法人も設立雇用4名→34名、道の駅全体の売上 約3,300万円→約1.8億円(平成25〜29年)困りごと・小さく試す
[株式会社沖縄UKAMI養蚕](http://www.discovermuranotakara.com/sentei/select9/no37/)(沖縄県)廃校と荒廃農地を使って養蚕し、シルクをスキンケア商品に加工。フランスや中国にも進出商品売上 400万円→1,200万円(令和元〜3年度)小さく試す・外にも売る
[株式会社べつかい乳業興社](http://www.discovermuranotakara.com/sentei/select3/no01/)(北海道別海町)町名を使った乳製品ブランドをつくり、大手コンビニや道内の菓子店と連携。ベトナムへアイスクリームを輸出売上 約4億9千万円→約5億2千万円、輸出 約600個→約3,000個(平成25〜27年)外にも売る
[株式会社 魚の屋](http://www.discovermuranotakara.com/sentei/select6/no22/)(島根県)天然わかめの刈り取りを漁師に依頼して新商品を開発。加工の一部を障がい者就労施設や一人暮らしの高齢者に委託天然わかめの商品売上 3,200万円→3.5億円(平成26〜30年)困りごと・外にも売る

※「当てはまる型」は、事例ページの記載をもとに筆者が整理したものです。各事業者が自らそう説明しているわけではありません。

型1:地域の困りごとから始めると、何がいいのか?

地域の困りごとから始めると、「買ってくれる人」と「応援してくれる人」が最初からいる状態をつくりやすくなります。困っている当事者がいるので、需要(買いたい・使いたいという気持ち)を確かめやすいのです。

函館の例では、海水温の上昇でマイワシが増え、大量死や焼却コスト、漁船への被害が起きていました。この困りごとを、アンチョビという商品に変えています。漁業者だけでなく、函館市や北海道の研究機関、加工会社、小売店などが一緒に取り組んでいるのも特徴です。困りごとがはっきりしていると、こうした協力者が集まりやすくなります。もてぎプラザの例でも、高齢化で将来の農産物が足りなくなることへの備えが、事業を広げる理由になっています。

自分の事業で真似するときは、次のように確かめてみてください。

  • その困りごとを抱えている人に、直接話を聞いたか(最低でも数人)
  • 困っている人は、解決にお金を払う意思があるか
  • 今はその困りごとをどうやってしのいでいるか(代わりの手段)
  • 同じ困りごとを持つ人が、地域の外にもいそうか

最後の項目は、あとで紹介する型3につながる大事な視点です。地域の困りごとが、ほかの地域でも共通しているなら、売り先を広げやすくなります。

型2:田舎で小さく試すには、どうすればいい?

小さく試すとは、最初から大きな設備や人を抱えず、売れるかどうかを確かめながら広げていく進め方です。田舎は人口が少ない分、外れたときの立て直しが難しいので、この型はとくに大切です。

事例を見ると、函館の取組では地元の加工会社が初期投資を抑えて加工を始めています。沖縄UKAMI養蚕は、廃校や荒廃農地(使われなくなって荒れた農地)といった、地域に今ある場所を活かしています。もてぎプラザは、売上が伸びてからバウムクーヘンの第2工場を開いています。「先に売れることを確かめ、あとから設備を増やす」という順番が読み取れます。

私が支援した例でも、この考え方は共通しています。ある税理士事務所では、顧問サービスに加えてコンサルティングのような新しいサービスを始める際の全体設計を担当しました。誰に何を提供するかを絞って始めた結果、3か月目の時点で月30万円の粗利(売上から原価を引いた利益)を上乗せできています。地方の事業ではありませんが、「既存の強みを土台に、小さく足す」点は同じです。

小さく試す方法やり方の例確かめること
今ある場所・設備を借りる空き店舗、公民館、シェアキッチン、既存の加工場を使う固定費をかけずに作れるか
期間を区切って売るマルシェやイベント、道の駅などで数回だけ販売する誰が、いくらなら買うか
予約・先払いで受ける作る前に予約を集め、数が見えてから仕入れる在庫を抱えずに需要が見えるか
ネットで反応を見るSNSや簡単な販売ページで告知し、問い合わせ数を見る地域の外からも反応があるか

型3:なぜ地域の外にも売る必要があるのか?

地域の外にも売るのは、地元の市場だけでは売上の天井が低くなりやすいからです。人口が少ない地域では、どれだけ喜ばれても、買ってくれる人の数に限りがあります。

べつかい乳業興社は、町名を使った乳製品ブランドをつくり、大手コンビニチェーンや道内の菓子店と組んで販売しています。ベトナムへのアイスクリーム輸出も、平成25〜27年で約600個から約3,000個に増えました。沖縄UKAMI養蚕も、フランスや中国に進出しています。どちらも「地域の名前や資源」を商品の価値にして、地域の外のお客様に届けています。

とはいえ、いきなり海外を目指す必要はありません。今ならSNSやネット販売で、地域の外の人に知ってもらうこともできます。ただ、発信を増やすだけでは売上につながりにくいのも事実です。私が支援したある事業者は、Instagram集客がうまくいかず月商が約9万円の状態でした。投稿を増やす前に、知ってから申し込むまでの導線(お客様がたどる道筋)を全体で整理したところ、2か月後に月商90万円まで伸びています。もちろん業種や状況によって結果は変わりますが、「外に届ける前に、受け皿を整える」ことは型3を進めるうえでも大切です。

始める前に、どの順番で真似すればいい?

真似する順番は「困りごとの確認→小さく試す→外にも売る」です。困りごとが確かでないまま試しても学びが少なく、試していない商品を外に広げると、失敗したときの損が大きくなるからです。

順番やること次に進む目安
1. 困りごとの確認困っている人に話を聞き、何に・いくらなら払うかを確かめる「お金を払ってでも解決したい」という声が複数ある
2. 小さく試す今ある場所や期間限定の販売で、実際に売ってみる繰り返し買う人や、紹介してくれる人が出てくる
3. 外にも売る地域の名前や資源を価値として伝え、ネットや他地域の売り先に広げる地元の売上が安定し、外の反応も確かめられた

あわせて、地域で使える支援制度も早めに調べておきましょう。ローカル10,000プロジェクトのように、地域金融機関の融資と組み合わせて立ち上げを支える制度もあります。ただし、要件や募集時期は年度によって変わるので、最新の公募情報を自治体や総務省のページで確認してください。

公的事例集を読むときに気をつけたいことは?

事例集は参考になりますが、そのまま真似すれば同じ結果が出るわけではありません。読むときは、次の点に気をつけてください。

  • 載っているのは、うまくいった例が中心。同じ時期に始めて続かなかった事業は見えにくい
  • 成果の数字は、事例ページに書かれた期間のもの。今も同じとは限らない
  • 法人や団体、行政、研究機関などが連携した大きめの取組も多い。一人で始める場合は規模を割り引いて考える
  • 「何をしたか」だけでなく、「なぜその順番でやったか」に注目すると、自分の事業に置き換えやすい

私が支援の現場で感じるのも、成功例の「手段」より「順番」のほうが真似しやすいということです。紹介業者を通さないと入居者が集まらなかった高級介護施設では、広告宣伝費を増やさずに2回のアドバイスを行い、残っていた14室すべてが埋まりました。新しい手段を足したのではなく、何から手を付けるかを整理し直したことが大きかったと考えています。

一人で整理しにくいときの相談先

地方での起業は、商品づくりも、売り先探しも、資金の準備も、ほぼ一人で進めることになりがちです。まず気軽に使えるのが、国が全47都道府県に設置しているよろず支援拠点です。中小企業・小規模事業者や創業予定の方が、無料で何度でも経営の相談ができます。

一方で、「自分の事業の場合、どの困りごとを軸にするか」「何を、どこまで小さく試すか」「いつ外に広げるか」という優先順位づけは、事業ごとに答えが違います。決めたことを毎月続けていく実行の部分も含めて、外の目と一緒に整理したほうが早く進むこともあります。

まとめ

公的な事例集で田舎ビジネスの成功例を比べると、「地域の困りごとから始める」「小さく試してから広げる」「地域の外にも売る」という3つの型が見えてきます。始める前に真似するなら、困りごとが本物かを確かめ、今ある場所や期間限定の販売で小さく試し、手応えが出てから地域の外へ売り先を広げる、という順番がおすすめです。事例集を読むときは、成果の数字だけでなく、その順番に注目してみてください。

とはいえ、自分の事業に当てはめて「どこから手を付けるか」を決めるのは、一人だと迷いやすいところです。当社の事業戦略顧問では、商品の設計から集客、資金の相談、業務改善までをまとめて見ながら、経営者と一緒に優先順位を整理し、実行まで伴走しています。地方での起業や新しい事業の立ち上げを考えていて、「一度、順番を整理したい」と感じた方は、気軽にご相談ください。

よくある質問

田舎ビジネスの成功例は、どこで調べられますか?
農林水産省と内閣官房の「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」や、総務省の「ローカル10,000プロジェクト」などで、公的に選ばれた事例を確認できます。売上や雇用の数字と、その期間が載っていることが多いので、比較しやすいのが利点です。
田舎で起業するなら、最初から地域の外に売るべきですか?
最初から外を狙う必要はありません。まず地域の困りごとを確かめ、小さく売って手応えをつかんでから、地域の外に広げる順番のほうが、失敗したときの損を抑えられます。ただ、同じ困りごとが地域の外にもあるかは、早めに見ておくと広げやすくなります。
小さく試すには、どのくらいの資金が必要ですか?
業種ややり方によって大きく変わるため、一律の金額は言えません。空き店舗や既存の設備を借りる、期間限定で販売する、予約を集めてから作るなど、固定費をかけない方法を選ぶほど、必要な資金は抑えやすくなります。
公的な事例をそのまま真似すれば、うまくいきますか?
同じ結果になるとは限りません。事例集には、行政や研究機関などと連携した大きめの取組も多く、時期や地域の条件も違います。手段をそのまま真似するより、「困りごと→小さく試す→外にも売る」という順番を自分の事業に置き換えるのがおすすめです。

出典:農林水産省「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」第12回選定結果(2025年11月18日)/[ディスカバー農山漁村(むら)の宝 公式サイト(各選定事例ページ)](http://www.discovermuranotakara.com/)/総務省「ローカル10,000プロジェクト」/日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」/よろず支援拠点(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

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