文責:藤田 泰仁
業務改善は、思いついた作業から手を付けるより「全部の仕事を書き出す→時間を食っている作業から順に選ぶ→小さくツールを試す→かかった時間で効果を確かめる」の順に1か月で回すほうが、時間を取り戻しやすくなります。1か月目は1〜2個の作業に絞り、手応えが出たら次の作業に広げていきましょう。
業務改善の進め方は「洗い出す→手間の大きい順に選ぶ→ツールを試す→確かめる」の4ステップ
「時間がない」を減らす業務改善は、気合いや残業ではなく順番で決まります。まず1週間、自分とスタッフの仕事をすべて書き出し、作業ごとに「1回の時間×月の回数」を出します。次に、月の合計時間が大きい作業から1〜2個だけ選び、やめられないか、まとめられないか、簡単にできないかを考えます。そのうえで、必要な作業にだけツールやAIを小さく試し、最後に改善前と後の時間を比べて効果を確かめます。1か月で4ステップを1周回すのが、小さな会社でも続けやすい進め方です。
合同会社well coの藤田です。事業戦略顧問として小規模事業者の方とお話ししていると、いちばんよく聞くお悩みが「時間がない」です。新しい集客を始めたい、商品を見直したい。でも、日々の事務作業や連絡に追われて手が回らない。この記事では、そんな経営者の方に向けて、最初の1か月でやる業務改善の進め方を順番にまとめます。
なぜ「時間がない」は、がんばっても減らないのか?
時間がないと感じるとき、多くの方は「もっと効率よくやろう」と目の前の作業を急ぎます。ただ、どの作業にどれだけ時間を使っているかが見えていないと、急いでも効果の小さい作業を直してしまいがちです。たとえば、月に1回しかない作業を半分の時間にしても、毎日20分かかっている作業がそのままなら、取り戻せる時間はわずかです。
もう1つの落とし穴は、先にツールを選んでしまうことです。「便利そうなアプリを入れたのに使わなくなった」という声は珍しくありません。どの作業の時間を減らしたいのかが決まっていないと、ツールは定着しにくいものです。だから業務改善は、ツール選びの前に「仕事の見える化」から始めます。
最初の1か月でやることの全体像
1か月を4つの週に分けると、本業の合間でも進めやすくなります。1週ごとにやることを1つに絞るのがコツです。
| 時期 | やること | できあがるもの | 目安の手間 |
|---|---|---|---|
| 1週目 | 仕事を洗い出す | 作業の一覧と、作業ごとの月の合計時間 | 1日5〜10分のメモ |
| 2週目 | 手間の大きい作業から順に選ぶ | 今月直す作業1〜2個と、その直し方 | 1〜2時間の見直し |
| 3週目 | ツールを入れて小さく試す | 新しいやり方の手順メモ | 試しながら数時間 |
| 4週目 | 効果を確かめる | 改善前と後の時間の比較、次に直す作業 | 30分〜1時間 |
目安の手間は、私の感覚としての一例です。業種や人数によって変わりますので、予定に合わせて2週間ずつに伸ばしてもかまいません。大事なのは、4つのステップを飛ばさずに順番どおり回すことです。
1週目:仕事をすべて洗い出すには?
1週目は、直すことより「書き出すこと」に集中します。頭の中で考えるだけだと、つい大きな仕事ばかり思い出し、細かい作業が抜けてしまいます。1週間だけ、実際にやった作業をその日のうちにメモしていきます。
- 作業の名前(例:予約の電話対応、請求書の作成、SNSの投稿づくり、打ち合わせのメモの清書)
- 1回にかかった時間(だいたいでかまいません)
- 月に何回あるか(毎日、週2回、月1回など)
- 誰がやっているか(自分だけか、スタッフもできるか)
メモは紙でも、スマートフォンのメモ帳でも、表計算ソフトでもかまいません。続けやすい方法を選んでください。スタッフがいる場合は、同じ形でそれぞれに書いてもらうと、経営者が知らなかった手間が見つかることもあります。
2週目:どの作業から手を付ければよいか?
手を付ける順番は、「1回の時間×月の回数」で出した月の合計時間が大きい作業からです。1回は短くても回数が多い作業は、合計すると大きな時間になっていることがよくあります。計算してみると、思っていた順番と違うことも多いはずです。
| 作業の例 | 1回の時間 | 月の回数 | 月の合計 |
|---|---|---|---|
| 問い合わせへの返信 | 10分 | 60回 | 600分(10時間) |
| SNSの投稿づくり | 40分 | 12回 | 480分(8時間) |
| 打ち合わせメモの清書 | 30分 | 8回 | 240分(4時間) |
| 月末の請求書づくり | 120分 | 1回 | 120分(2時間) |
上の表は計算のしかたを示すための例で、実際の数字は会社ごとに違います。この例なら、月末の請求書づくりより、毎日の問い合わせ返信やSNSの投稿づくりから手を付けたほうが、取り戻せる時間は大きくなります。1か月目は上位の1〜2個に絞ってください。一度に全部を変えようとすると、本業が回らなくなります。
選んだ作業は「やめる→まとめる→入れ替える→簡単にする」の順に考える
直し方を考えるときは、ECRS(イーシーアールエス)という考え方が役に立ちます。Eliminate(なくす)、Combine(まとめる)、Rearrange(順番や担当を入れ替える)、Simplify(簡単にする)の頭文字をとった、業務改善の昔からの考え方です。この順番で考えると、お金や手間をかけずに済む直し方から検討できます。
- なくす:その作業は本当に必要か。誰も見ていない報告書や、二重に記録しているデータはないか
- まとめる:毎回ばらばらにやっている作業を、1日1回などにまとめられないか
- 入れ替える:順番を変えたり、スタッフに任せたりできないか
- 簡単にする:よく使う文面のひな形を作る、ツールやAIで下書きさせるなどで手間を減らせないか
ツールやAIの出番は、主に最後の「簡単にする」です。なくせる作業にツールを入れても、時間の使い道としてはもったいないからです。
3週目:ツールやAIはどう入れればよいか?
3週目は、2週目で選んだ作業にだけツールを試します。ポイントは「小さく試す」ことです。いきなり全部の作業や全スタッフに広げず、まずは経営者自身が1つの作業で1週間使ってみます。最近は、文章の下書きや書き起こしなど、これまで人が時間をかけていた作業をAIに手伝わせることもできるようになりました。
| 時間を食っている作業 | AIやツールでできること | 人が残すこと |
|---|---|---|
| 問い合わせへの返信 | よくある質問への返信文の下書きを作る | 内容の確認と、お客様に合わせた一言 |
| 打ち合わせメモの清書 | 録音から議事録(会議の記録)の下書きを作る | 決まったことと次の担当の確認 |
| 紙の書類の入力 | OCR(画像の文字を読み取ってデータにする技術)で読み取る | 読み間違いがないかの確認 |
| SNSの投稿づくり | 投稿文の案や、ハッシュタグの候補を出す | 自社らしい言葉への手直しと、写真選び |
AIを使うときに気をつけたいのは、出てきた文章や数字をそのまま使わないことです。AIはもっともらしい間違いを出すことがあります。お客様に送る前、公開する前には、必ず人が目を通す工程を残してください。また、お客様の個人情報をどこまで入力してよいかは、ツールの利用規約やデータの扱いを確かめてから決めましょう。
4週目:効果はどう確かめればよいか?
効果は「時間」で確かめます。1週目のメモと同じ形で、改善した作業の1回の時間と回数をもう一度記録し、月の合計時間を比べます。たとえば問い合わせ返信が1回10分から5分になれば、月60回なら300分、つまり5時間を取り戻せた計算です。
- 時間が減った:新しいやり方を手順メモにして、スタッフにも広げる
- 時間が変わらない:ツールの使い方か、選んだ作業そのものを見直す
- 時間は減ったがミスが増えた:確認の工程を足すか、元のやり方に戻す
うまくいかなかった場合も失敗ではありません。「この作業にはこのツールは合わない」と分かったこと自体が前進です。結果を見たら、2週目の一覧に戻って次の作業を選び、また1か月回します。取り戻した時間を、集客や商品づくりなど本業の前に進める仕事に使えているかも、あわせて振り返ってみてください。
設備やツールの費用に使える公的な制度はある?
従業員を雇っている事業者なら、国の制度が使える場合があります。厚生労働省の業務改善助成金は、生産性向上に役立つ設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金を引き上げる事業者に、費用の一部を助成する制度です。労働者を雇用していない事業者は対象外で、対象になるのは申請して交付が決まった後に実施する取り組みです。先に買ってしまうと対象にならないので注意してください。
人手不足に悩む中小企業向けには、中小機構(中小企業基盤整備機構)の中小企業省力化投資補助金もあります。カタログから製品を選んで導入する「カタログ注文型」と、現場に合わせた設備やシステムを導入する「一般型」に分かれています。どちらの制度も、要件や申請の時期は年度ごとに変わります。使う前に必ず公式ページで最新の内容を確かめてください。
自分で進めるときにつまずきやすいところ
- 洗い出しの1週間が忙しくて、メモが続かない
- 時間を食っている作業は分かったが、やめてよいのか判断がつかない
- ツールが多すぎて、どれを選べばよいか分からない
- 作業ごとに別々のツールを入れた結果、ログインや使い分けが新しい手間になる
特に最後の点は、見落とされがちです。返信はこのアプリ、議事録はあのアプリ、SNSはまた別のサービス、と増えていくと、料金の管理や使い方を覚える時間がかかります。業務改善の目的は時間を取り戻すことなので、道具の数はなるべく少なく保つのがおすすめです。
まとめ
「時間がない」を減らす業務改善の進め方は、1週目に仕事を洗い出し、2週目に手間の大きい作業から順に選び、3週目にツールを小さく試し、4週目に時間で効果を確かめる、という4ステップです。1か月目は1〜2個の作業に絞り、手応えが出たら次の作業に広げていきましょう。
3週目のツール選びで迷ったら、当社のディープラも選択肢の1つにしてみてください。AIチャット・議事録作成・OCR・SNS投稿作成など、この記事で挙げた作業をまとめて試せる、中小企業・個人事業主向けのプラットフォームです。無料のまま使い続けることもできます(分析機能が使えないなど一部に制限があります)。まずは今月選んだ1つの作業で、時間が減るかどうかを確かめてみてください。
よくある質問
- 業務改善は何から始めればよいですか?
- まず1週間、実際にやった仕事を書き出し、作業ごとに「1回の時間×月の回数」で月の合計時間を出すことから始めます。合計時間が大きい作業から手を付けると、取り戻せる時間が大きくなります。
- 1人で事業をしていても業務改善はできますか?
- できます。1人の事業者ほど、経営者の時間がそのまま売上につながる仕事の時間になります。進め方は同じで、自分の作業を書き出し、手間の大きい作業から1つずつ直していきます。
- ツールやAIは最初から入れたほうがよいですか?
- 先に仕事の洗い出しと、直す作業選びをするのがおすすめです。やめられる作業やまとめられる作業はツールなしで時間が減りますし、ツールを入れる作業が決まっているほうが定着しやすくなります。
- 効果が出たかどうかは何で判断すればよいですか?
- 改善前と後で、同じ作業の1回の時間と月の回数を記録して比べます。あわせて、ミスやお客様からの問い合わせが増えていないかも確かめてください。
- AIに任せた文章をそのままお客様に送っても大丈夫ですか?
- おすすめしません。AIはもっともらしい間違いを出すことがあるため、送る前・公開する前には必ず人が内容を確かめてください。下書きをAIに任せ、仕上げを人が行う分担が安心です。
