お問い合わせ

COLUMN

開業1〜3年目で売上が安定しない人へ|起業が軌道に乗るまでの順番

2026.10.25

文責:藤田 泰仁

起業が軌道に乗るまでを早めるには、原因を「商品の設計」「集客の導線」「資金」に切り分け、まず資金で試せる期間を確かめ、次に商品を絞り、最後に集客の導線を整える順番で手を付けるのが近道です。

起業が軌道に乗るのが遅れる原因は「商品の設計・集客の導線・資金」の3つに分けられる

開業して1〜3年たっても売上が安定しないとき、原因はたいてい「商品の設計」「集客の導線」「資金」のどれか、または組み合わせです。商品の設計とは、誰に・何を・いくらで売るかの決め方。集客の導線とは、お客様が知ってから申し込むまでの道筋。資金とは、売上が育つまで事業を続けられる体力です。手を付ける順番は、まず資金で「あと何か月試せるか」を確かめ、次に商品を絞り、最後に導線を整えるのが基本です。順番を間違えると、頑張りが売上に結びつきにくくなります。

合同会社well coの藤田です。事業戦略顧問として小規模事業者を支援していると、「立ち上げたものの、軌道に乗るまでに思ったより時間がかかっている」というご相談をよくいただきます。これは珍しい悩みではありません。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」では、開業後間もない企業のうち、採算が「黒字基調」なのは67.0%で、33.0%は「赤字基調」と答えています。また、現在苦労していることの1位は「顧客・販路の開拓」(48.8%)、2位は「資金繰り、資金調達」(36.2%)でした。この記事では、売上が安定しない原因を切り分け、どこから手を付ければよいかを順番に整理します。

「軌道に乗る」とは、どんな状態のことか?

この記事では、「毎月の売上で、家賃などの固定費と自分の生活費をまかない、少し手元に残る状態が続いていること」を軌道に乗った状態と考えます。ある月だけ売上が大きくても、翌月に大きく落ちるなら、まだ安定しているとは言えません。

目安になるのが「損益分岐点(そんえきぶんきてん)」です。これは、売上と経費がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上の金額のことです。毎月の売上がこの線を安定して超えるようになれば、ひとまず軌道に乗ったと言えます。まずは自分の事業の損益分岐点がいくらなのかを把握しておくと、「あとどれくらい足りないのか」が数字で見えるようになります。

なぜ軌道に乗るまでが長くなるのか?3つの原因を切り分ける

売上が安定しない状態は、外から見るとどれも同じに見えます。けれど、原因によって打つ手はまったく違います。次の表で、自分の事業にどのサインが当てはまるかを確かめてみてください。

原因よくあるサイン最初に確かめること
商品の設計問い合わせは来るのに決まらない/値下げしないと売れない/「何屋さんか分からない」と言われる誰に・何を・いくらで売るかを1行で言えるか
集客の導線SNSやホームページを頑張っているのに問い合わせが増えない/どこから来たお客様か分からない知ってから申し込むまでのどこで人が離れているか
資金売上より支払いの心配が先に立つ/新しいことを試す余裕がない今の手元資金で、あと何か月事業を続けられるか

実際には、3つが絡み合っていることがほとんどです。たとえば、商品が絞れていないから集客の言葉もぼやけ、集客がうまくいかないから資金が減っていく、という流れです。だからこそ、「全部を同時に直そう」とせず、順番を決めて1つずつ手を付けることが大切です。

手を付ける順番は「資金→商品→集客の導線」

私がおすすめしている順番は、資金、商品、集客の導線です。資金を先にするのは、試せる期間が分からないまま動くと、焦って値下げや場当たり的な広告に走りやすいからです。商品を導線より先にするのは、売るものがぼやけたまま集客を強めても、成約につながりにくいからです。

1. 資金:「あと何か月試せるか」を先に数える

最初にやりたいのは、手元のお金で、あと何か月事業を続けられるかを数えることです。そのために役立つのが「資金繰り表」です。資金繰り表とは、月ごとに入ってくるお金と出ていくお金を並べ、月末にいくら残るかを見通す表のことです。売上の入金が遅れる月や、税金・借入の返済が重なる月も書き込みます。

残りの期間が分かると、「この3か月で商品を見直す」「半年以内に新しい集客を試す」といった計画が立てられます。もし期間が短いと分かったら、早めに金融機関へ相談するのも選択肢です。資金のめどが立ってから動くと、判断に余裕が生まれます。

2. 商品の設計:「誰に・何を・いくらで」を1行で言えるか

次に見直すのが商品の設計です。開業したばかりの頃は、売上をつくりたい気持ちから、頼まれた仕事を何でも引き受けがちです。その結果、メニューが増えすぎて「結局、何が得意なお店なのか」が伝わらなくなることがあります。

確かめ方はシンプルです。「〇〇で困っている△△な人に、□□を、××円で提供している」と1行で言えるかを試してみてください。言えないなら、まず対象のお客様を絞り、いちばん喜ばれている商品を中心に並べ直します。価格も、原価と手間、そして先ほどの損益分岐点から逆算して決めます。安さで選ばれる状態は、忙しいのに利益が残らない原因になりやすいからです。

既存の事業に、新しい商品を足す場面でも考え方は同じです。私が支援した税理士事務所では、顧問サービスに加えて、コンサルティングのような新しいサービスを始める際の全体設計を担当しました。誰に何を提供するかを整理して立ち上げた結果、3か月目の時点で月30万円の粗利(売上から原価を引いた利益)を上乗せできています。

3. 集客の導線:お客様が離れている場所を見つける

商品が絞れたら、集客の導線を整えます。導線は「知る→興味を持つ→調べる→問い合わせる→申し込む」のように段階に分けて考えます。たとえばSNSで知った人が、プロフィールを見て、ホームページを開き、予約や問い合わせをする、という流れです。どこか1か所でも分かりにくいと、そこで人は離れてしまいます。

ポイントは、新しい集客の手段を増やす前に、今ある導線のどこで止まっているかを確かめることです。Instagram集客がうまくいかず、月商が約9万円だった事業者さんを支援したときも、まず全体の導線を整理しました。その結果、2か月後には月商90万円まで伸びています。また、紹介業者を通さないと入居者が集まらなかった高級介護施設では、広告宣伝費を増やさずに2回のアドバイスを行い、残っていた14室すべてが埋まりました。どちらも、業種や状況が違えば結果は変わります。ただ、「手段を増やす前に道筋を整える」順番が効いた例だと感じています。

今日からできる、軌道に乗せるための点検リスト

ここまでの内容を、手を付ける順番に沿って点検リストにまとめました。上から順に、できているものに印を付けてみてください。

  • 毎月の固定費と、自分に必要な生活費を合計した金額が分かっている
  • 自分の事業の損益分岐点(利益がゼロになる売上)がいくらか分かっている
  • 今の手元資金で、あと何か月事業を続けられるか分かっている
  • 「誰に・何を・いくらで」を1行で言える
  • いちばん売れている(喜ばれている)商品が分かっている
  • お客様がどこで自分の事業を知ったかを記録している
  • 知ってから申し込むまでの導線を、自分でスマートフォンからたどって確かめた

印が付かなかった項目のうち、いちばん上にあるものが、最初に手を付ける場所です。全部を一度にやろうとせず、1つずつ片付けていきましょう。

一人で抱え込まないための相談先

開業1〜3年目は、営業も現場も事務も一人でこなしていることが多く、立ち止まって整理する時間が取りにくい時期です。先ほどの調査でも、開業時と比べて「従業員の確保」や「従業員教育、人材育成」といった人に関する悩みの割合が高くなっていると報告されています。事業が育つほど、考えることは増えていきます。

まず気軽に使えるのが、公的な無料の相談窓口です。たとえばよろず支援拠点は、国が全47都道府県に設置している経営相談所で、中小企業・小規模事業者や創業予定の方が無料で何度でも相談できます。資金の不安が大きい場合は、取引のある金融機関や日本政策金融公庫に早めに相談しておくと安心です。

一方で、3つの原因のうちどれから手を付けるかという優先順位づけや、決めたことを毎月続けていく実行の部分は、一度の相談では片付かないこともあります。自分の事業のことほど、外から見たほうが整理しやすいものです。

まとめ

起業が軌道に乗るまでが長引くときは、原因を「商品の設計」「集客の導線」「資金」の3つに切り分けて考えましょう。手を付ける順番は、まず資金で試せる期間を確かめ、次に「誰に・何を・いくらで」を絞り、最後に集客の導線のどこで人が離れているかを確かめて整えることです。順番を決めて1つずつ進めれば、頑張りが売上に届きやすくなります。

とはいえ、日々の仕事をこなしながら、自分の事業を冷静に切り分けるのは簡単ではありません。当社の事業戦略顧問では、商品設計、集客、資金、業務改善までをまとめて見ながら、経営者と一緒に優先順位を整理し、実行まで伴走しています。「どこから手を付ければいいのか、一度整理したい」と感じた方は、気軽にご相談ください。

よくある質問

起業してから軌道に乗るまで、どれくらいかかりますか?
業種や事業の規模、準備の状況によって大きく変わるため、一律の期間は言えません。期間の長さより、損益分岐点を安定して超えられているかを目安にし、届いていない場合は原因を切り分けて手を付けることをおすすめします。
売上が安定しないとき、まず集客を増やすべきではないですか?
集客は大切ですが、先に資金で試せる期間を確かめ、商品を「誰に・何を・いくらで」の形に絞ってからのほうが、集客の効果が出やすくなります。売るものがぼやけたまま集客を強めると、問い合わせが来ても決まりにくいためです。
資金繰り表は、どのくらい先まで作ればよいですか?
まずは半年から1年先までを月ごとに作ってみるのがおすすめです。税金や借入の返済、季節による売上の波など、支払いが重なる月を早めに見つけられます。
3つの原因のどれに当てはまるか、自分で判断できないときは?
記事中の表と点検リストで、当てはまるサインを書き出してみてください。それでも絞りきれない場合は、公的な無料の相談窓口や、事業全体を見られる専門家に相談し、外の目で整理してもらうのも一つの方法です。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)/よろず支援拠点(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

CONTACT

経営者の挑戦を応援します

まずはお気軽にご相談ください。

受付:平日10:00〜18:00