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「扶養」という言葉を聞いたことはありますか?
よく「扶養内で働きたい」や「扶養を外れると税金が…」という話を聞きませんか?
世間で一般的に言う扶養には2種類あります。1つは「税金」の扶養で、2024年までだと、いわゆる「103万円の壁」と言われていたものです。もう一つは「社会保険」の扶養です。扶養内だと国民年金保険料が無料になったり、健康保険料がかからない等のメリットがあったり、いわゆる「130万円の壁」と呼ばれるものです。
今回は、後者の「社会保険(健康保険)」の扶養を中心にお話します。なお、社会保険という言葉は、大きな意味でいうと雇用保険を含んだり、貧困を防ぎ、社会全体で助け合う保険という意味で言ったりと意味合いが複数ありますが、ここでは、健康保険&厚生年金保険で構成される、会社員や役員の方が加入する「社会保険」という意味でお話します。
経営者の方や企業の人事・労務担当者の方は、従業員の生活面への安心や満足度向上のためにも、ぜひ押さえておきましょう。
本記事は、2025年12月時点の情報を基に解説を行います。
まず、健康保険制度の仕組みをおさえましょう。本日は、「健康保険=社会保険」ととられて読み進めてください。
日本では国民皆保険制度を採用しており、日本に住む人は何かしらの医療保険制度に加入しなければなりません。
医療保険制度とは、あらかじめ保険料を払うことで、いざ病気やけがをしたときに、医療をはじめとしたサポートを受けられる公的な保険制度を言います。
そして、この医療保険制度には、「健康保険」や「国民健康保険」、「後期高齢者医療保険」、「公務員共済」などいくつかの種類があり、働き方や収入状況にあわせて、そのいずれかに加入します。
いくつかの種類がありますが、次の①~④で加入する医療保険制度が決まります。
【どの医療保険制度に加入する?】
※実際には、より細かい振り分けや要件がありますが、ここでは割愛しています。ご了承ください。
①75歳以上か未満か
→以上なら、後期高齢者医療制度に加入。75歳未満なら②へ。
②会社員や公務員、役員か否か
→該当なら③へ。該当しないなら④へ。
③次の要件をすべて満たすか
・健康保険や共済組合の適用事業所に雇用されている
・週の所定労働時間が常勤者の4分の3以上
→満たす場合は、健康保険や共済組合に加入。満たさない場合は④へ。
※適用事業所が特定適用事業所の場合は、週20時間以上&月収見込8.8万円以上&昼間学生でなければ健康保険や共済組合に加入。詳細は後述。
④誰かの扶養になるか否か
→扶養になる場合は、健康保険や共済組合に被扶養者として加入。ならない場合は、国民健康保険又は要件を満たせば、健康保険の任意継続に加入。
では、ここからは健康保険の扶養の説明をしていきます。
なお、会社員や役員の場合は健康保険、公務員の場合は共済組合になりますが、大きな括りでは同じタイプなので、公務員の共済組合に加入する方も含めて、健康保険としてお話していきます。細かい部分で異なることがありますが、共済組合も健康保険と読み替えることでおおよそのイメージが可能です。
健康保険には、扶養制度があります。
健康保険では、保険料を払って加入する人を「被保険者」と言います。そして、この被保険者に扶養される家族を被扶養者として健康保険に加入させることができます。また、被扶養者が配偶者の場合は、国民年金にも加入が可能で、ともに追加保険料(健康保険料・国民年金保険料)はかかりません。
では、この被扶養者になるためには、どんな要件があるのでしょうか?
被保険者との「親族関係」と被扶養者自身の「収入」の2つの要件があります。
親族関係は下記の範囲か否かです。
(引用元「全国健康保険協会ホームページ」)
収入要件は下記のとおりです。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満、19歳以上23歳未満※1(配偶者※2を除く)の場合は150万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
なお、上記に該当しない場合であっても、認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満、19歳以上23歳未満※1(配偶者※2を除く)の場合は150万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入を上回らない場合には、その世帯の生計の状況を果たしていると認められるときは、被扶養者となる場合があります。
【認定対象者が被保険者と同一世帯に属していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満、19歳以上23歳未満※1(配偶者※2を除く)の場合は150万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合には、被扶養者となります。
※1 扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定します。
※2 配偶者とは被保険者の「夫」「妻」「内縁の夫」「内縁の妻」を指します。
被扶養者になるには、「親族関係」と「収入」がポイントなことがわかりました。
では、最近よく聞く「106万円の壁」とは何なのでしょうか?
まず、絶対に意識してほしいことは、被扶養者になれるのは、上記の【どの医療保険制度に加入する?】の④に該当する場合のみです。この④に該当し、かつ「親族関係」と「収入」の2点を満たすことで、被扶養者になることができます。年収130万円(年齢や障害で150万円や180万円に変化)未満が収入の要件であることは変わりません。
では、「106万円の壁」とは?
→上記の【どの医療保険制度に加入する?】で③に該当する際に登場してくる概念になります。③の中に「特定適用事業所」という言葉があります。特定適用事業所とは、簡単にいうと、社会保険加入者が51人以上いる会社を言います。
通常は、常勤者の4分の3以上の勤務があるか否かで健康保険の被保険者になるか決まってきますが、この「特定適用事業所」に勤務する場合、週20時間以上&月収見込8.8万円&昼間学生ではないの3点をすべて満たすと、短時間労働者と呼ばれ、健康保険に被保険者として加入することになります。拒否はできません。
昼間学生とは、働きながら夜間学校に通う人ではない人=通常の学生と考えてください。
ここで新たに「8.8万円」という数字が出てきました。月収8.8万円を12ヵ月分にすると、年収105.6万円になります。約106万円ですね。すなわち、「106万円の壁」という言葉はこの特定適用事業所に勤務し、月収見込8.8万円という基準から出てきた言葉なのです。
混乱してきましたよね?もう一度言います。健康保険の被扶養者になれるのは、上記の【どの医療保険制度に加入する?】で④に該当する人だけです。8.8万円(106万円)の話は③です。
なお、現在、最低賃金が1,000円を超え、週20時間の勤務をすると、月収は8.8万円を超えていくので、正直あまり意識しなくていい概念と言えるでしょう。「106万円の壁」はややこしいので、忘れてしまいましょう。
ここまで、扶養の話、被扶養者になるための要件の話をしてきました。103万円や130万円、106万円といった言葉も出てきましたが、社会保険の扶養で気にするポイントは130万円になります。
被扶養者になれば、健康保険料や国民年金保険料がかからない等、制度としての不公平さがあり、個人的には思うところもありますが、受けられるメリットがかなり大きいです。
扶養内で働くという視点でいうと、【どの医療保険制度に加入する?】の④に該当した上で、年収を130万円(年齢や障害で150万円や180万円)未満におさえるということがポイントになります。その際、特定適用事業所に勤務する場合は、週20時間以上働くと自ら被保険者として健康保険に加入することになるので、注意というイメージで考えるとわかりやすいかと思います。
なお、被保険者として社会保険に加入するということは、実は会社も保険料を半分負担しています。社会保険の仕組み上、会社と従業員が折半して保険料を払っているので、必然的に自身の保険料と同額を会社も払っているという点もあわせて覚えておきましょう。
社会保険の扶養と混同されやすいのが、税金上の扶養です。
個人で払う税金には所得税と住民税があります。
どちらも、年間の所得(収入から経費を除いたもの)に応じて負担します。なお、所得のままだと、金額が大きく、これをもとにそのまま計算すると、多大な所得税や住民税の金額になってしまいます。
そのため、生命保険の保険料や地震保険料、上記で出てきた社会保険料等をはじめ、扶養している家族の人数や子供の年齢、障害の有無、寡婦か否か等に応じて、税金額を抑えられる仕組みがあります。
税金上の扶養は、「扶養控除」や「配偶者控除」と言い、一定の金額以内であれば、扶養する側が所得税や住民税の金額を抑えることができます。
この一定の金額というのが、給与だと103万円で、いわゆる「103万円の壁」と呼ばれていたものです。なお、2025年の税制改正により従来の103万円が123万円に引き上げられましたので、今後は103万円は123万円になります。
ちなみに、通常は、この123万円等の一定の金額を1円でも超えると、扶養控除や配偶者控除は受けられず、所得税や住民税の金額が大きく変わってしまっていました。しかしながら、数年前に配偶者特別控除、2025年より特定親族特別控除が新設され、配偶者控除や扶養控除は受けられなくても、新設されたほうの特別控除は受けられるケースもあります。ここで出てくる金額が201万円や150万円等あり、「●●の壁」と呼ばれるものがいくつも出てきますが、メインどころ(今後であれば、税金は123万円の壁、社会保険は130万円)とそれ以外で整理するとわかりやすいかと思います。
収入を見る際、いつからいつで考えるのかをお話します。
社会保険では、未来に向かって考えます。一方、税金では、1月1日~12月31日の実績で考えます。
未来に向かってとはどういうことか?
社会保険では、「今、この時点で扶養されているか」で被扶養者として認定するかを判断します。そのため、130万円という言葉で説明をすると、「今、日々の収入が年間130万円未満のペースか」の判断になります。
すなわち、「今月から2ヵ月は毎月12万円の収入があります」であれば、12万円×12ヵ月=144万円なので、年間130万円未満ペースを満たしません。そのため、この2ヵ月は被扶養者になれないということになります。
一方、昨日までは年収1000万円の会社に勤めていましたが、退職し、今日から収入が0(失業手当にない)になりましたという方は、被扶養者になることができます。これは、今日の時点から年間130万円未満ペースという条件を満たすためです。
もちろん、年収1000万円でしたので、この1000万円を受け取った年(1月1日~12月31日)は税金の扶養にはなれません。
今回は、社会保険の扶養の話をしてきました。たくさん数字が出てきたり、社会保険と税金で期間や金額が違う等、複雑になっていました。
また、扶養の手続きや細かい要件等は、さらに複雑だったりもします。経営者の方や企業の人事・労務担当者の方は、これらについて、従業員からの問い合わせがあるかもしれません。
ただ、本業がありますので、こういったこともあるんだなとイメージをとらえていただき、ぜひ社会保険労務士をご活用ください。
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