文責:藤田 泰仁
完全予約制の飲食店の集客は、①予約の条件を決める、②店主が料理中でも予約を受けられる受け皿を作る、③Googleマップで見つけてもらう、④Instagramで「行ってみたい」を作る、⑤開店初月は身近な人と紹介から予約を積み上げる、の順で整えると、グルメサイトに頼りすぎずに新規予約が入る流れを作れます。あわせて、キャンセルポリシーの明示と前日の確認連絡で、無断キャンセルによる損失を防ぎましょう。
完全予約制の店は「予約までの道」を先に作ると新規客が入りやすい
完全予約制の飲食店は、ふらっと入るお客様がいないぶん、「店を知る→予約する→来店する」までの道筋(導線)を、開店前に用意しておくことが集客の土台になります。グルメサイトに頼らずに予約を集めたいなら、おすすめの順番は、①人数・時間・コース・キャンセルの決まりなど「予約の条件」を決める、②店主が料理中でも予約を受けられる受け皿を作る、③Googleマップで見つけてもらう、④Instagramで店の雰囲気を伝えて「行ってみたい」を作る、⑤開店初月は身近な人と紹介から予約を積み上げる、の5つです。経済産業省などが参加した勉強会のレポートでは、無断キャンセルは予約全体の約1%で起きているとされています。小さな店ほど1件の影響が大きいため、キャンセル対策も導線の一部として最初に組み込みましょう。
合同会社well coの藤田です。事業戦略顧問として、飲食店をはじめ地域のお店の集客や事業づくりのご相談を受けています。店主が1人で料理も接客も担う完全予約制のお店では、「開店したのに予約が入らない」「グルメサイトに載せるべきか迷っている」という声をよく聞きます。この記事では、これからお店を開く人、開いたばかりの人に向けて、開店前後に何をどの順で整えれば新規予約が入るのかを整理します。
なぜ完全予約制の店は「導線」から考えるべきなのか?
完全予約制の店には、通りがかりのお客様が入ってくることがほとんどありません。つまり、新規のお客様はすべて「どこかで店を知り、予約をして来る」人です。どこか一か所でも流れが途切れていると、予約はそこで止まってしまいます。たとえばInstagramで料理を見て興味を持っても、予約の方法が分からなければ、その人は別の店を探します。
グルメサイトは、この流れをまとめて用意してくれる便利な仕組みです。一方で、掲載のしかたや予約の受け方はサイトのルールに沿う必要があり、費用もかかります。ここで言う「頼らない」は「使わない」という意味ではありません。グルメサイトがなくても予約が入る自前の導線を先に持っておけば、グルメサイトを使うかどうかも、落ち着いて判断できるようになります。
| 段階 | やること | うまくいっているかの目安 |
|---|---|---|
| 1. 予約の条件を決める | 人数・時間・コース・料金・キャンセルの決まりを決める | 店の予約ルールを一文で説明できる |
| 2. 受け皿を作る | 料理中でも受けられる予約方法を用意する | 取りこぼした問い合わせ・電話の数 |
| 3. 見つけてもらう | Googleビジネスプロフィールを整え、予約リンクを付ける | マップからの予約・電話・経路検索の数 |
| 4. 行きたいと思ってもらう | Instagramで料理・店内・店主の人柄を伝える | プロフィールから予約ページへ進んだ数 |
| 5. 初月の予約を積み上げる | 身近な人・近隣・紹介から予約をいただく | 新規予約の数と、何を見て来たか |
段階1:開店前に「予約の条件」を決めておく
最初にやるのは、どんな予約をどう受けるかという「予約の条件」を決めることです。ここが曖昧なままだと、ホームページにもGoogleマップにもInstagramにも、ばらばらの情報が出てしまいます。お客様が迷うだけでなく、店主1人では受けきれない予約が入ることもあります。
- 受けられる人数と回転:1日に何組・何名まで受けるか。1回転か2回転か。
- 予約の形:コースのみか、席だけの予約も受けるか。料金の目安はいくらか。
- 予約の締め切り:仕込みが必要なら「〇日前まで」など、受付の期限を決める。
- キャンセルの決まり:いつまでなら無料か、それ以降はどうなるか(キャンセルポリシー)。
- どんな人に来てほしいか:記念日の食事、接待、ひとりでゆっくり、など。写真や文章の方向が決まる。
店主1人の店では、仕込みと調理にかけられる量に限りがあります。だからこそ、「無理なく、良い状態で迎えられる予約の数」から逆算して条件を決めるのが大切です。紙1枚にまとめられる程度の内容で十分です。
段階2:店主が料理中でも予約を受けられる受け皿を作る
次に、店を知った人が迷わず予約できる受け皿を作ります。店主1人の店でよく起きるのが、「営業中に電話に出られず、予約の機会を逃していた」というケースです。電話だけに頼らず、時間を問わず受け付けられる方法を1つ用意しておきましょう。
- Web予約を用意する:予約システムや予約フォームを使い、空き状況を見て申し込める形にする。
- 電話の受付時間をはっきり書く:「電話は〇時〜〇時」と書き、営業中は出られないことも伝える。
- 予約ページで条件を見せる:段階1で決めた人数・料金・キャンセルポリシーを、予約前に必ず目に入る場所に書く。
- 情報を1か所にそろえる:営業日や料金が、Googleマップ・ホームページ・Instagramで食い違わないようにする。
予約を受けたら「何を見てご予約いただきましたか?」と聞いて、簡単に記録しておくのもおすすめです。どこから予約が来ているかが分かると、次にどこへ力を入れるかを決めやすくなります。
段階3:Googleマップで見つけてもらい、そのまま予約へつなぐ
「地名+ジャンル」でお店を探す人の多くは、Googleマップを見ています。そこで、Googleマップに表示される店の情報「Googleビジネスプロフィール」を整えることが、グルメサイトに頼らない導線の中心になります。Googleマップでの見つけてもらいやすさを高める取り組みは、MEO対策と呼ばれます。
完全予約制の店にとって特に大事なのが、プロフィールに予約ページへのリンクを付けることです。Googleの公式ヘルプ「ローカル ビジネス リンク」によると、ビジネスプロフィールには予約や席の確保に使うリンクを追加でき、複数ある場合は上部に表示するリンクを選べます。マップで店を見つけた人が、その場で予約ページへ進めるようにしておきましょう。プロフィールの整え方は「MEO対策とは?飲食店・整骨院・サロンが自分でできる最初の手順」で詳しく紹介しています。
段階4:Instagramで「行ってみたい」を作り、予約ページへ案内する
完全予約制の店は、入る前に中の様子が分かりにくいお店です。初めての人は「どんな料理が出るのか」「どんな雰囲気か」「店主はどんな人か」を確かめてから予約します。Instagramは、この不安を減らし、「行ってみたい」と思ってもらう場として役割を決めて使うと、予約につながりやすくなります。
- 料理:コースの流れや季節の一皿など、来店したときに出会えるものを見せる。
- 店内:席の数、カウンターの距離感、入口など、初めての人が不安に思う部分を写す。
- 店主の人柄:食材を選ぶ理由や仕込みの様子など、この店を選ぶ理由になる話を伝える。
- 予約への案内:プロフィールに予約ページのリンクを置き、投稿の最後でも予約方法を案内する。
投稿の数を増やすより、見た人が迷わず予約まで進めるかどうかが大切です。投稿が予約につながらないときの見直し方は「インスタ集客が売上につながらないのはなぜ?投稿より先に見直す予約導線」、DMでの問い合わせ対応を楽にしたいときは「インスタのDM自動送信は使うべき?予約につなげる設定と注意点」も参考にしてください。
段階5:開店初月は身近な人と紹介から予約を積み上げる
開店してすぐは、Googleマップのクチコミも、Instagramの投稿も少ない状態です。この時期の予約は、検索よりも「人のつながり」から入ることが多くなります。開店初月にまとまった新規予約が入るお店は、開店前から次のような準備を進めていることがよくあります。
- 開店前から知らせる:知人や前職のつながりに、開店日と予約方法を直接伝えておく。
- 近隣にあいさつする:近くのお店や事業者に店を知ってもらう。接待や会食の場として思い出してもらえることがある。
- 来てくれた人に次の一歩を案内する:帰り際に、次回の予約や、紹介したい人への案内カードを渡す。
- 感想を自然にお願いする:満足してもらえたら、Googleマップへのクチコミを一言お願いする。
クチコミのお願いには注意点があります。消費者庁によると、2023年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となりました。事業者が第三者に依頼・指示して行わせた投稿も、広告であることを隠していれば対象になり、規制を受けるのは事業者(広告主)の側です。「高評価のクチコミを書いてくれたら1品サービス」のような頼み方は避け、感想を自然にお願いするのが基本です。
無断キャンセルは、どう防げばよいのか?
完全予約制の店では、予約が入ってから来店までの間も導線の一部です。食材を仕込み、席を空けて待っている以上、無断キャンセル(No show)は大きな痛手になります。2018年に経済産業省や弁護士、業界団体などが参加する勉強会がまとめた「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」では、無断キャンセルは予約全体の約1%で起き、損害は年間約2,000億円と推計されています(トラベルボイスの報道による)。
| 対策 | 具体的なやり方 |
|---|---|
| 予約の再確認 | 前日などに、日時と人数を確認する連絡を送る |
| キャンセルしやすい仕組み | 電話以外にも、メッセージやWebでキャンセル連絡ができるようにする |
| キャンセルポリシーの明示 | いつから、いくらのキャンセル料がかかるかを予約前に示す |
| 事前決済・デポジット | コース予約などで、料金の一部または全部を事前に受け取る |
同じ報道によると、レポートは店側の対策として、上の表のような予約の再確認、キャンセル連絡をしやすくする仕組み、キャンセルポリシーの明示、事前決済やデポジット(予約金)の導入を挙げています。キャンセル料の目安としては、コース予約なら全額、席のみの予約なら平均客単価の5〜7割という考え方が示されています。ただし、キャンセル料の決め方や請求の可否は個別の事情で変わるため、迷ったときは弁護士など専門家に確認してください。
開店前後の1か月、何をどの順で進めればよいか?
ここまでの5つの段階を、開店前後の時期に当てはめると、次のような順番になります。すべてを完璧にしてから開店する必要はありません。少なくとも「予約の条件」と「受け皿」は開店前にそろえ、残りは開店後に育てていくイメージです。
| 時期 | 主にやること |
|---|---|
| 開店の1か月ほど前 | 予約の条件とキャンセルポリシーを決める。予約方法を1つ決めて準備する |
| 開店の2〜3週間前 | Googleビジネスプロフィールを整え、予約リンクを付ける。Instagramで開店準備の様子を発信し始める |
| 開店の1〜2週間前 | 知人・近隣に開店日と予約方法を伝える。予約の前日確認の文面を用意する |
| 開店後の1か月 | 来店した人に紹介とクチコミをお願いする。「何を見て予約したか」を記録し、週ごとに振り返る |
店主1人で進めるときにつまずきやすい点
一つひとつの作業は難しくありません。それでも、開店前後はやることが多く、つまずく場面はだいたい決まっています。
- 時間が足りない:仕込みや内装、仕入れ先との調整に追われ、集客の準備がいつも後回しになる。
- 手段を一度に増やしてしまう:グルメサイト、Instagram、ホームページ、チラシを同時に始め、どれも中途半端になる。
- 効果が分からない:どこから予約が来たかを記録しておらず、続けるかやめるかを判断できない。
- 店の方向性が決まらない:誰に来てほしい店かが曖昧なまま、料金や発信の内容がぶれる。
特に最後の点は、集客の手段だけを見ていても答えが出にくい悩みです。「どんなお客様に、どんな時間を過ごしてもらう店なのか」が決まると、料金も、写真も、予約の条件も自然にそろってきます。集客の相談から始まって、店のコンセプトや事業の計画全体の整理に話が広がることも少なくありません。
まとめ
完全予約制の飲食店の集客は、①予約の条件を決める、②料理中でも受けられる受け皿を作る、③Googleマップで見つけてもらい予約リンクでつなぐ、④Instagramで「行ってみたい」を作る、⑤開店初月は身近な人と紹介から予約を積み上げる、の順番で進めると、グルメサイトに頼りすぎない導線を作れます。あわせて、キャンセルポリシーの明示と前日の確認連絡で、無断キャンセルによる損失を防ぎましょう。まずは、今のお店で予約の流れが途切れている場所がないか、お客様の目線でたどってみてください。
とはいえ、料理と接客を1人で担いながら、どこから手を付けるかを決め、記録を取り、見直しを続けるのは簡単ではありません。店のコンセプトや優先順位の整理は、外から一緒に考える人がいると進めやすくなります。当社の事業戦略顧問では、集客から事業全体の戦略づくりまで、経営者の方と一緒に整理し、実行まで伴走しています。「うちの店は何から整えればいいか」を一度整理したいときは、お気軽にご相談ください。
よくある質問
- 完全予約制の飲食店は、グルメサイトに載せないと集客できませんか?
- 載せなくても集客の道はあります。Googleビジネスプロフィールに予約リンクを付け、Instagramや紹介から予約ページへ案内する導線を作れば、グルメサイト以外からも予約を受けられます。グルメサイトを使うかどうかは、自前の導線を整えたうえで判断するのがおすすめです。
- 店主1人で電話に出られないとき、予約はどう受ければよいですか?
- Web予約や予約フォームなど、時間を問わず受け付けられる方法を1つ用意しましょう。電話の受付時間をはっきり書き、営業中は出られないことも伝えておくと、お客様も迷いません。
- キャンセル料はいくらに設定すればよいですか?
- 2018年の「No show(飲食店における無断キャンセル)対策レポート」では、無断キャンセルの場合の目安として、コース予約は全額、席のみの予約は平均客単価の5〜7割という考え方が示されたと報じられています。大切なのは、予約前にキャンセルポリシーを分かりやすく示しておくことです。個別の判断に迷うときは専門家に確認してください。
- 開店直後にクチコミを増やすため、割引と引き換えにお願いしてもよいですか?
- おすすめしません。事業者が依頼・指示したことを隠した投稿は、2023年10月1日から景品表示法のステルスマーケティング規制の対象になっています。来店した方に、感想を自然にお願いするのが基本です。
出典:Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ローカル ビジネス リンク」/消費者庁「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」/トラベルボイス(2018年11月5日)No show対策レポートについての記事
