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営業代行と代理店の違いは?小さな会社が外の営業力を借りる前に比べる5点

2026.10.28

文責:藤田 泰仁

営業代行は「売る活動」だけを外に任せ、売るのはあくまで自社という形です。代理店は「売る権利」ごと任せ、相手が自分の判断で売る形です。お客様情報と品質を自社で握りたいなら営業代行、自社では届かない販路を一気に広げたいなら代理店が向いています。どちらにするかは、任せる範囲・お金のかかり方・お客様情報の持ち主・品質の管理しやすさ・自社に残るものの5点で比べて決めます。

営業代行は「売る活動」を、代理店は「売る権利」を任せる

営業代行と代理店のいちばんの違いは、何を外に任せるかです。営業代行は、電話でのアポイント取りや商談など「売る活動」を外部に頼む形で、契約の相手はあくまで自社です。代理店は、自社の商品を売る権利ごと相手に任せ、相手が自分の営業網で売る形です。そのため、お金のかかり方、お客様情報を誰が持つか、売り方や価格をどこまで管理できるかが大きく変わります。小さな会社が選ぶときは、任せる範囲・お金のかかり方・お客様情報の持ち主・品質の管理しやすさ・自社に残るものの5点を並べて比べると、自社に合う形が見えてきます。

合同会社well coの藤田です。事業戦略顧問として小規模事業者を支援する中で、集客だけでなく営業や営業管理のご相談もお受けしています。よく聞くのが「本業で手いっぱいで、営業まで手が回らない」という声です。外の営業力を借りるのはよい選択肢ですが、営業代行と代理店は似ているようで中身がまったく違います。この記事では、契約する前に比べておきたい5つの点を整理しました。

営業代行と代理店はそれぞれどんな仕組みか?

まず言葉の意味をそろえます。営業代行は、営業の一部または全部を外部の会社や個人に「業務として」頼む形です。リスト作り、電話やメールでのアポイント取り、商談、見積もりの提出など、どこまで頼むかは契約で決めます。お客様と売買契約を結ぶのは自社です。

代理店は、自社の商品やサービスを「売る役」そのものを相手に任せる形です。ひと口に代理店といっても、実際には大きく2つのタイプがあります。

  • 代理店型(取次ぎ・仲介):相手はお客様を紹介したり、自社の代わりに契約を取り次いだりして、成約に応じた手数料を受け取る。売買契約の当事者は自社
  • 販売店型(買い取り):相手が自社から商品を仕入れ、自分の名前でお客様に売る。相手は売値と仕入れ値の差で利益を得る

日本貿易振興機構(ジェトロ)の「代理店契約と販売店契約の相違点:日本」でも、代理店は売買契約の当事者にならず手数料を受け取り、販売店は商品を買い取って自らの名義で売る、と整理されています。あわせて「販売代理店」「特約店」といった名前だけでは区別できないため、契約書で権利と義務をはっきり書くことが大切だと説明されています。名前ではなく、契約の中身で判断するのがポイントです。

比べる点営業代行代理店(取次ぎ型)代理店(販売店型)
任せるもの売る活動(アポイント・商談など)お客様の紹介・契約の取り次ぎ仕入れて売ることそのもの
お客様と契約するのは自社自社代理店
お金のかかり方業務への報酬(固定・成果・併用)成約に応じた手数料卸値と売値の差(マージン)
お客様情報の持ち主自社(扱いを委託する)契約による(決めておく必要がある)基本は代理店
売り方・価格の管理しやすい比較的しやすいしにくい(価格は相手が決める)

比べる点1:どこまで任せるのか?

最初に決めるのは、「活動を手伝ってほしい」のか「売ることごと任せたい」のかです。ここがあいまいなまま契約すると、期待とのずれが起きやすくなります。

  • 商品の説明や価格は自社で決めたい、お客様との関係も自社で育てたい → 営業代行
  • 自社では届かない地域や業界に、相手の取引先を通じて広げたい → 代理店
  • まずは見込み客との接点だけ増やしたい → 営業代行の中でもアポイント取りだけを頼む形

営業代行は「人手を借りる」発想、代理店は「販路を借りる」発想と考えると分かりやすいです。自社の課題が人手不足なのか、販路そのものがないことなのかで、向く形が変わります。

比べる点2:お金はどうかかるのか?

結論として、営業代行は「売れる前から」費用がかかることが多く、代理店は「売れたときに」費用が出ていく形が基本です。どちらが得かは、売上の規模と見込みで変わります。

形主な払い方気をつけたい点
営業代行(固定報酬)月ごとに決まった額を払う成果が出なくても費用がかかる。何をもって成果とするかを先に決める
営業代行(成果報酬)アポイント1件、受注1件などに応じて払う「成果」の定義があいまいだと、質の低いアポイントにも費用がかかる
代理店(取次ぎ型)成約額に応じた手数料を払う売れるほど手数料も増える。料率と支払いのタイミングを決めておく
代理店(販売店型)代理店に卸値で売る(自社の売上は卸値分)1件あたりの利益が減る。代わりに在庫や代金回収のリスクは代理店が負う

前述のジェトロの解説でも、代理店(取次ぎ型)では代金回収のリスクや損益は本人(自社)が負い、販売店では代金回収の責任は販売店が負うとされています。つまり、手数料型は利益を多く残せる代わりに、未払いのリスクは自社に残ります。販売店型は利益が薄くなる代わりに、そのリスクを相手に移せます。

比べるときは、月の費用だけでなく「1件売れたら手元にいくら残るか」を形ごとに計算してみてください。粗利(売上から仕入れや外注費を引いた利益)で比べると、判断を誤りにくくなります。

比べる点3:お客様情報は誰のものになるのか?

小さな会社ほど見落としやすいのが、お客様情報の持ち主です。営業代行なら、お客様は自社のお客様なので、情報も自社に残すのが基本です。販売店型の代理店では、お客様は代理店のお客様になるため、誰が買ってくれたのか自社には分からないこともあります。

営業代行に自社の顧客リストを渡す場合は、個人情報の「委託」にあたることがあります。個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」では、利用目的の達成に必要な範囲で取り扱いを委託する場合、提供先は第三者に当たらないとされる一方、委託元には委託先を監督する責任があると示されています。具体的には次のような対応です。

  • 適切な委託先を選ぶ(安全管理の状況を事前に確かめる)
  • 安全管理の内容を契約で取り決める
  • 委託先での取り扱いの状況を把握する(再委託の有無も含む)

あわせて、営業代行が新しく集めた見込み客の情報や商談の記録を、契約終了後も自社で使えるかどうかも契約で決めておきましょう。せっかく育てた見込み客が、契約が終わると手元に何も残らないという事態は避けたいところです。営業の記録の型は「営業管理とは?直販を始めた小規模事業者が最初に整える記録の型」で紹介しています。外部に頼む場合も、この型で報告してもらうと自社の資産として残せます。

比べる点4:売り方や品質をどこまで管理できるのか?

売り方や価格をしっかり管理したいなら、営業代行のほうが向いています。営業代行は自社の代わりに動く立場なので、説明のしかた、使う資料、価格の出し方を自社で決めて指示しやすいからです。

販売店型の代理店では、価格を自社が決めることに法律上の制約があります。公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」では、事業者が流通業者の販売価格(再販売価格)を拘束することは、原則として不公正な取引方法に当たり違法になるとされています。一方で、取引が委託者の危険負担と計算で行われる委託販売や、相手が単なる取次ぎとして機能している場合などは、価格を指示しても通常は違法にならないとも示されています。

つまり「価格や売り方をそろえたい」なら、営業代行か取次ぎ型の代理店が向いています。販売店型を選ぶ場合は、価格以外の部分、たとえば商品説明の資料や研修、問い合わせ窓口の分け方などで品質をそろえる工夫が必要です。契約の形で判断が分かれる部分なので、具体的な条項は弁護士など専門家に確認しましょう。

比べる点5:契約が終わったとき、自社に何が残るのか?

最後に考えたいのは、外部との契約が終わったあとのことです。営業代行でも代理店でも、任せきりにすると「どう売れたのか」が自社に残りにくくなります。

  • どんなお客様が、どんな言葉で買ってくれたか(売れるトーク・断られる理由)
  • 見込み客と商談の記録
  • 代理店の場合は、地域や業界での取引のつながり

営業代行なら、定期的な報告の項目に「断られた理由」や「よく聞かれた質問」を入れてもらうと、自社の営業の改善材料になります。代理店なら、契約期間や更新の条件、終わるときの在庫やお客様の引き継ぎを先に決めておくと安心です。代理店ビジネスそのもののリスクは「代理店ビジネスとは?儲かる仕組みと始める前に知る5つのリスク」でも整理しています。

なお、営業代行を個人のフリーランスに頼む場合は、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の対象になることがあります。公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでは、発注する側は業務を頼んだら直ちに、仕事の内容や報酬の額、支払期日などの取引条件を書面またはメールなどで明示する必要があると説明されています。口約束で始めないことが大切です。

結局、うちの会社にはどちらが合うのか?

迷ったときは、次の目安で考えてみてください。どちらか一方に決める必要はなく、地域や商品ごとに使い分ける会社もあります。

こんな状況なら向いている形
商品の説明に専門知識が要り、売り方の品質をそろえたい営業代行
お客様と長く付き合い、リピートや紹介を増やしたい営業代行(情報を自社に残す)
売れるまで費用をかけにくい代理店(取次ぎ型)
自社では届かない地域・業界に一気に広げたい代理店(販売店型も含む)
在庫や代金回収のリスクを減らしたい代理店(販売店型)

もう1つ大事なのは、外に任せる前に「自社で売れる型」がどこまでできているかです。自社で売れた経験が少ないまま外に任せると、うまくいかない理由が商品なのか、売り方なのか、相手なのか分からなくなります。最初の数件は自分で売り、売れる相手と伝え方をつかんでから任せると、どちらの形でも指示や評価がしやすくなります。直販の基本は「直販とは?代理店を通さず直接売ること|直販営業と間販の違いを比較表で解説」で解説しています。

まとめ

営業代行は「売る活動」を任せる形で、お客様情報と売り方を自社で握りやすい代わりに、売れる前から費用がかかることがあります。代理店は「売る権利」を任せる形で、売れたときに費用が出ていく代わりに、販売店型では価格やお客様情報を自社で管理しにくくなります。任せる範囲・お金のかかり方・お客様情報の持ち主・品質の管理しやすさ・自社に残るものの5点を並べて比べ、契約書で中身をはっきりさせてから始めましょう。

とはいえ、営業を外に任せるかどうかは、商品の設計や価格、集客の導線、社内の人手とも深くつながっています。「そもそも今、何から手をつけるべきか」で迷うときは、事業全体の優先順位から整理するのが近道です。当社の事業戦略顧問では、戦略の整理から集客・営業の仕組みづくり、実行まで、経営者と一緒に進めています。ひとりで抱えず、考えを整理する相手として気軽に相談してみてください。

よくある質問

営業代行と代理店の違いを一言でいうと?
営業代行は「売る活動」だけを外に任せ、お客様と契約するのは自社です。代理店は「売る権利」ごと任せ、相手が自分の営業網で売ります。販売店型の代理店では、相手が商品を仕入れて自分の名前で売ります。
小さな会社にはどちらが向いていますか?
お客様との関係や売り方の品質を自社で保ちたいなら営業代行、自社では届かない販路を広げたい、売れるまで費用をかけにくいなら代理店が向いています。まず自社で数件売り、売れる型をつかんでから任せると失敗しにくくなります。
代理店に販売価格を指定してもよいですか?
代理店が商品を買い取って売る販売店型の場合、販売価格を拘束することは独占禁止法上、原則として違法とされています。取次ぎ型や真正の委託販売など、実質的に自社が売っていると認められる場合は扱いが変わります。公正取引委員会の流通・取引慣行ガイドラインを確認し、契約は専門家に相談しましょう。
営業代行に顧客リストを渡しても大丈夫ですか?
利用目的の範囲で営業を委託するために渡す場合は、個人情報保護法上の「委託」として扱われることがあります。その場合、委託先を選ぶときの確認、契約での取り決め、取り扱い状況の把握といった監督の責任が自社に生じます。

出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「代理店契約と販売店契約の相違点:日本」/個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」/公正取引委員会「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」/公正取引委員会 フリーランス法特設サイト

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