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入口商品と本命商品はどう分ける?飲食店・サロン・教室の例で解説

2026.11.08・集客・営業

文責:藤田 泰仁

入口商品と本命商品は、先に本命を決め、その価値の一部を短く小さく切り出して入口にすると分けられます。入口の価格は本命に進む割合で回収できるかを計算し、案内した人数と本命に進んだ人数を分けて数えながら直していきます。

入口商品は初めての人が試すための商品、本命商品は店が続けて売りたい主力の商品で、先に本命を決めてその一部を切り出すと分けやすくなります。 注意したいのは体験のあとの案内です。国民生活センターによると、パーソナルトレーニングの契約に関する相談は2021年度の495件から2025年度は1,457件に増え、無料体験のあとに断りきれず契約したという事例も紹介されています(国民生活センター「パーソナルトレーニングに関する契約トラブル」2026年10月7日公表、消費生活センター等からの経由相談を除く件数)。

入口商品と本命商品は「目的」で分ける

入口商品と本命商品は、目的で分けます。入口商品は、初めての人が店との相性を確かめるための商品です。本命商品は、店が続けて売りたい主力の商品です。分けるときは先に本命を決め、その一部を短く小さく切り出して入口にします。入口の価格は、原価と集客費を足した額との差を計算し、本命に何人進めば回収できるかまで確かめます。案内は、入口の提供が終わってから、相手の了承を得て1つだけ提案します。入口だけで終わる人が多いときは、案内した人数と本命に進んだ人数を分けて数え、詰まっている段階を直します。実態と違う「お試し」の表示はしません。

入口商品と本命商品の違いは?

違いは5点です。特に大事なのは「見る数字」で、入口は単体の利益ではなく、本命に進んだ人の割合まで含めて判断します。

比べる点入口商品本命商品
目的店との相性を確かめてもらう悩みの解決や満足を届け、店の利益を支える
主な買い手初めての人、迷っている人入口で店を知った人、常連のお客様
中身本命の一部を短く小さくしたもの店が一番力を入れている内容
価格の考え方試しやすさを優先し、持ち出しの上限を決める時間と手間に見合う粗利が残る価格にする
見る数字本命に進んだ人の割合粗利、続けて利用する回数
粗利は、売上から材料費など売るたびにかかる費用を引いた残りです。

フロントエンド・バックエンドと入口商品・本命商品は同じ?

商品の話で使う場合は同じ意味です。フロントエンド商品は入口商品、バックエンド商品は本命商品を指します。システム開発で使う「フロントエンド(画面側)」「バックエンド(処理側)」とは別の言葉なので、調べるときは「商品」まで入れると混ざりにくくなります。

入口商品は割引と同じではありません。割引は価格の下げ方で、入口商品は商品の組み立て方です。割引がお客様の気持ちにどう働くかは「割引が効くのはなぜ?クーポンと期間限定の心理効果を小さな店向けに解説」で整理しています。この記事では、その次に考える「何を入口にして、何を本命にするか」を扱います。

入口商品と本命商品はどの順番で分ける?

順番は、本命を決めるところから始める5段階です。入口から考えると、本命とつながらない安い商品ができやすくなります。

  1. 本命商品を1つ決める
  2. 本命の一部を切り出して入口商品を作る
  3. 入口の価格と原価を計算する
  4. 本命へ案内する順番を決める
  5. 入口だけで終わる人の数を確かめて直す

ステップ1:本命商品はどう決める?

この段階のゴールは、店が続けて売りたい商品を1つに絞ることです。売上が一番大きい商品ではなく、粗利が残り、続けて提供したいと思える商品を選びます。

  • 商品ごとに売上、材料費、かかる時間を書き出す
  • 1時間あたりの粗利が大きい順に並べる
  • 「続けて提供したいか」「次の利用につながるか」で1つに絞る

現場でよくあるのは、一番売れている商品をそのまま本命と考えてしまうことです。売れていても、手間がかかって利益が残らない商品なら、増やすほど店主の時間がなくなります。本命は「増えたときに店が楽になる商品」かどうかで確かめると選びやすくなります。

ステップ2:飲食店・サロン・教室では入口をどう切り出す?

この段階のゴールは、本命の良さが少し分かる入口商品を作ることです。本命と同じ人が、同じ考え方で提供し、同じ悩みを扱うものにします。

  • 本命のどの部分を体験してもらうかを1つ決める
  • 時間や量を減らし、提供の手順を毎回同じにする
  • 入口の内容と本命との違いを一文で書く
業種入口商品の例本命商品の例避けたい切り出し方
飲食店夜の看板料理を小さくした平日ランチ夜のコース夜の料理と関係のない安いだけのメニュー
サロン通常コースの一部を受けられる30分の体験メニュー90分の通常コース通常コースと手順も担当も違う体験メニュー
教室普段のクラスと同じ進め方の体験レッスン月4回の月謝クラス体験だけ特別な内容で、入会後の授業と違うもの
商品の組み立て方の例です。店の状況に合わせて置き換えてください。

入口で満足しきらない形にすることも大切ですが、わざと中身を薄くする必要はありません。入口の内容には納得してもらい、「続けるとさらにこうなる」という違いを本命側に残す、という考え方です。

ステップ3:入口商品の価格と原価はどう計算する?

この段階のゴールは、本命に何割進めば入口の持ち出しを回収できるかを数字で出すことです。入口の価格は、この割合が現実的かどうかを見て決めます。

  • 入口と本命の価格、材料費など、かかる時間を書き出す
  • 1人あたりの集客費(広告費などの合計÷入口を買った人数)を出す
  • 下の4つの式で、必要な本命移行率を計算する

本命移行率とは、入口を買った人のうち本命も買った人の割合です。計算に使う式は次の4つです。

  1. 入口の粗利=入口の価格−材料費など
  2. 入口の持ち出し=1人あたりの集客費−入口の粗利
  3. 本命の粗利の見込み=本命1回の粗利×平均の利用回数
  4. 必要な本命移行率=入口の持ち出し÷本命の粗利の見込み
項目(すべて仮の数字)飲食店サロン教室
入口の内容平日ランチ30分の体験メニュー1回の体験レッスン
入口の価格1,200円3,300円1,000円
入口の材料費など440円700円200円
入口の粗利760円2,600円800円
1人あたりの集客費1,500円4,600円3,800円
入口の持ち出し740円2,000円3,000円
本命の内容夜のコース90分の通常コース月4回の月謝クラス(1か月分)
本命の価格6,000円8,800円12,000円
本命の材料費など2,160円1,300円1,500円
本命1回(教室は1か月)の粗利3,840円7,500円10,500円
平均の利用回数2回3回4か月
本命の粗利の見込み7,680円22,500円42,000円
必要な本命移行率約9.6%約8.9%約7.1%
数字はすべて計算の流れを示すための仮の数字で、業界の平均や実例ではありません。人件費と家賃は含めていません。

サロンの例で検算します。入口を10人に売ると、持ち出しは2,000円×10人で20,000円です。そのうち1人が本命に進むと22,500円の粗利が見込めるので、差し引き2,500円のプラスです。10人に1人は10%で、必要な約8.9%を超えています。

この式には人件費と家賃が入っていないので、結果は「最低限ここを超えたい」という線として見てください。平均の利用回数は、仮に置くのではなく、できるだけ自店の記録から出します。

1人で回す店は入口商品の時間も見る

1人で回す店では、入口商品は空いている時間に絞るのが基本です。上のサロンの例で説明を含めて入口に60分かかるとすると、1時間あたりの粗利は2,600円です。本命は90分で7,500円なので、1時間あたり5,000円です。本命で埋まる時間に入口を入れると、1時間あたり2,400円の差が出ます。予約枠を分けて、入口は空きやすい曜日や時間帯だけにすると、この差を抑えられます。

ステップ4:本命へ案内する順番は?

この段階のゴールは、お客様が断りやすい形で本命を知ってもらうことです。入口の提供が終わり、感想を聞いてから、了承を得て1つだけ提案する順番にします。

  • 予約の前に、入口の内容・料金・追加料金の有無を書いておく
  • 入口の提供中は本命の話を持ち出さない
  • 感想を聞いたあと「続ける場合の案内をしてもいいですか」と確かめる
業種案内のタイミング伝え方の例
飲食店会計のとき、または帰り際「夜はこの料理をコースで出しています。よければメニューをお持ちください」と渡す
サロン施術後に感想を聞いたあと料金表を見せて、通常コースとの違いを説明し、その場で決めなくてよいと伝える
教室体験レッスンの終了後月謝とクラスの日程を紙で渡し、持ち帰って考えてもらう
案内の一例です。その場で決めてもらうことを目的にしていません。

断られたら、そこで案内を終えます。長時間の説明や「今日だけ」と急がせる言い方は、その場で売れたとしても、あとの解約やクチコミで返ってくるおそれがあります。後日連絡する場合は、連絡してよいかを先に確かめて記録しておきます。

「お試し」の表示で避けたいことは?

避けたいのは、書いてある内容と実際の条件が違うことです。条件をあとから出すと、お客様の信頼を失うだけでなく、景品表示法などの問題になるおそれがあります。実際に、予約サイトに説明がなかったのに、無料体験のあとで「体験のみの場合は料金が発生する」と言われたという相談も公表されています(国民生活センター「無料体験と思ったら…?『セルフホワイトニング』の契約トラブル」2025年7月22日公表)。

避けたい表示・やり方何が起きるか最初の対策
「無料」「お試し」と書き、当日に条件を追加する取引条件を実際より有利に見せる表示として、有利誤認にあたるおそれがある料金と条件を予約の前に見える場所へ書く
売ったことのない価格を「通常価格」として並べる不当な二重価格表示にあたるおそれがある実際に普段売っている価格だけを並べる
「先着5名」と書いて用意していない、限定の内容をはっきり書かないおとり広告にあたるおそれがある実際の枠数と期間をそのまま書く
入口のあとに長時間の勧誘をする苦情や契約トラブルにつながりやすい案内の時間と話す内容を先に決める
個別の表示が問題になるかどうかは、内容によって判断が変わります。迷うときは消費者庁の窓口や専門家に確認してください。

有利誤認は、価格などの取引条件について、実際より著しく有利だと消費者に誤認される表示のことで、故意でなくても規制の対象になります(消費者庁「有利誤認とは」)。「通常価格」は、最近相当期間にわたって販売されていた価格なら不当表示のおそれはないとされています(消費者庁「二重価格表示」)。おとり広告の考え方は消費者庁「おとり広告に関する表示」で確認できます(いずれも2026年11月8日確認)。

エステ・語学教室・学習塾の本命はコース契約のルールも確かめる

本命が長期のコース契約になる場合は、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたるかを確かめます。これは、エステや語学教室など継続して受けるサービスの契約に関するルールです。エステは期間1か月超、語学教室・学習塾・家庭教師・パソコン教室は期間2か月超で、いずれも総額5万円超の契約が対象です。対象になると、書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフや中途解約のルールが適用されます(消費者庁 特定商取引法ガイド「特定継続的役務提供」、2026年11月8日確認)。対象は決められた7類型に限られるので、自店があてはまるかはこのページで確認してください。

ステップ5:入口だけで終わる原因はどう確かめる?

この段階のゴールは、どこで止まっているかを段階ごとの人数で見つけることです。「入口の人が本命に来ない」とひとまとめにせず、案内した人数と本命を買った人数を分けて数えます。

  • 入口を買った人を、買った月ごとに一覧にする
  • 案内したか、本命を買ったか、理由があれば何かを記録する
  • 自店の来店間隔に合わせて確認する時期を決め、本命移行率を出す

仮の数字で見てみます。ある月に入口を買った人が40人、案内できたのが30人、本命に進んだのが6人なら、本命移行率は6÷40で15%です。案内できた割合は30÷40で75%、案内した人のうち本命に進んだ割合は6÷30で20%です。ステップ3のサロンの例なら必要な約8.9%を超えていますが、10人には案内できていないことも分かります。

記録の残し方は「飲食店・整骨院・サロンのリピーターを増やす方法|顧客台帳の作り方」が参考になります。来店日や内容に「入口か本命か」「案内したか」の欄を足すだけで、この確認ができます。

数字の状態考えられること最初に見直すこと
案内した人の割合が低い案内のタイミングがない、切り出しにくい案内の場面と一言を決めて紙に書く
案内しても本命に進まない入口と本命のつながりが弱い、価格の差が大きすぎる入口の中身と本命の違いの説明を直す
入口の予約はあるが特定の経路だけ本命に進まない安さだけで来ている人が多い可能性があるその経路の広告文と、特典の出し方を見直す
本命に進むが続かない本命の内容や次回の案内に課題がある本命の感想を聞き、次回の案内を決める
原因は一つとは限りません。数字を見ながら1か所ずつ直すと、何が効いたのか分かりやすくなります。

直す場所は一度に1つにします。同時に変えると、何が効いたのか分からなくなるからです。毎月の数字をどう並べるかは「小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方」もあわせて読むと整理しやすくなります。

入口商品と本命商品のよくある質問

入口商品は赤字でもいいですか?
赤字でも成り立ちますが、持ち出しの上限と回収の条件を先に決めておくことが前提です。必要な本命移行率を計算し、自店の記録で届きそうにないなら、価格か集客費を見直します。
入口商品は無料にしたほうがいいですか?
無料が向くかどうかは店によります。無料は申し込みの心理的な負担を下げますが、入口だけを目当てにする人が増える場合もあるので、小さな価格をつけた形と比べて判断します。
入口商品はいくつ用意すればいいですか?
最初は1つで十分です。複数あると、どの入口が本命につながったのか分かりにくくなります。
すでにある割安メニューを入口商品にしてもいいですか?
本命とつながる内容ならそのまま使えます。つながらない場合は、本命の一部を体験できる内容に組み直すほうが、次の案内がしやすくなります。
お客様に本命をすすめるのが苦手です。どうすればいいですか?
了承を得てから、紙の案内を渡すだけでも始められます。その場で決めてもらおうとせず、持ち帰って考えてもらう形にすると、案内する側も受ける側も負担が小さくなります。

入口商品と本命商品の分け方で、最初にやることは?

最初にやるのは、今ある商品を書き出して本命を1つ決めることです。本命が決まれば、入口の中身も、入口にかけてよい金額も、案内の順番も決めやすくなります。

とはいえ、どの商品を本命にするかは、価格だけでなく、集客の経路や店主の時間の使い方とも関わります。何から手をつけるかを一人で決めきれないときは、第三者と一緒に整理するのも一つの方法です。合同会社well coの事業戦略顧問では、優先順位の整理から実行まで、経営者と一緒に進めています。

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