文責:藤田 泰仁
リピーターを増やすには、割引で呼び戻すより先に「来店記録→次回の案内→連絡のタイミング」の順で再来店の仕組みを作るのが近道です。顧客台帳には来店日・内容・次回の目安・連絡してよいかを記録し、会計のときに次回の目安を伝え、連絡は台帳から出した来店間隔に合わせて送ります。広告のメールやSMSは事前の同意と表示のルールを守り、個人情報は利用目的を示したうえで必要な分だけ記録しましょう。
リピーターは「来店記録→次回の案内→連絡のタイミング」の順で増やす
小さな店がリピーターを増やすには、割引で呼び戻すより先に、再来店の仕組みを3段階で作るのが近道です。1つ目は、お客様ごとの来店日や内容を記録する「顧客台帳」を作ること。2つ目は、会計や見送りのときに「次はいつ頃がよいか」を伝えること。3つ目は、台帳から出した来店間隔に合わせて、思い出してもらえる時期に連絡することです。この順番なら、値引きで利益を削らずに「また行こう」と思うきっかけを増やせます。広告のメールやSMSは事前の同意が原則で、個人情報は利用目的を示して扱う必要があります。ルールを守ることも、信頼される店の条件です。
合同会社well coの藤田です。飲食店や整骨院、サロンの店主さんと話していると、「新規のお客様はある程度来るようになった。でも2回目につながらない」という相談をよく受けます。話を聞くと、お客様の記録がほとんど残っていなかったり、次回の話をしないまま見送っていたり、連絡するのは割引のお知らせのときだけだったりすることが多いです。この記事では、割引に頼らずに再来店の仕組みを作る一般的な手順を、顧客台帳の作り方から順に整理します。
新規は来るのに、なぜ2回目につながらない?
2回目につながらない理由は、サービスの質より「思い出してもらうきっかけがない」ことにある場合が少なくありません。初回で満足していても、次に行く理由やタイミングが分からなければ、日々の忙しさの中で忘れられてしまいます。現場でよく見かけるパターンを表にまとめます。
| よくある状態 | 起きていること | 見直す点 |
|---|---|---|
| お客様の記録が残っていない | 誰がいつ来て、何を頼んだか分からない | 顧客台帳を作る |
| 次回の話をしないで見送る | お客様が「次はいつ行けばいいか」を決められない | 会計のときに次回の目安を伝える |
| 連絡先を聞いていない、聞いても使っていない | 思い出してもらう手段がない | 連絡してよいかを確認して記録する |
| 連絡は割引のときだけ | 割引がないと来ない習慣がつく | 来店間隔に合わせた案内に切り替える |
| 全員に同じ内容を一斉に送る | 関係のない内容が続き、読まれなくなる | 台帳で相手と時期を絞る |
割引で呼び戻す方法は、なぜ続けにくい?
割引は来店のきっかけにはなりますが、それだけに頼ると利益が削られ、「割引のときに行く店」として覚えられやすくなります。割引をやめた途端に客足が戻る、という声も現場ではよく聞きます。割引そのものが悪いわけではありません。先に記録と案内の仕組みを作り、割引は「使いどころを決めて足すもの」と考えるほうが長続きします。割引がなぜ効くのか、どう見せると逆効果になりにくいかは「割引が効くのはなぜ?クーポンと期間限定の心理効果」でくわしく解説しています。
ステップ1:顧客台帳には何を書く?
顧客台帳とは、お客様ごとの来店の記録をまとめた一覧のことです。最初は「来店日・来店内容・次回の目安・連絡してよいか」の4つがあれば十分に役立ちます。項目を増やしすぎると記録が続かないので、まずは少なく始めましょう。
| 項目 | 記録の例 | 何に使うか |
|---|---|---|
| お名前・連絡先 | 山田様・メール(またはLINE) | 次回の案内を届ける |
| 来店日 | 2026/11/3 | 来店間隔を出す |
| 来店内容 | カット+カラー/コース料理/施術メニュー | 次回の提案を考える |
| きっかけ | Googleマップ・Instagram・紹介など | どの集客がリピーターにつながるかを見る |
| 次回の目安 | 6週間後頃・年末の会食など | 連絡の時期を決める |
| 連絡してよいか | お知らせ可・予約の連絡のみ・不可 | 送ってよい相手だけに送る |
| メモ | 好み・話した話題・苦手なもの | 次回の接客に生かす |
業種ごとに足すとよい項目
| 業種の例 | 足すとよい項目 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 飲食店 | 人数・利用の場面(記念日・接待など)・苦手な食材 | アレルギーの情報は、聞く目的を伝えて必要な範囲で記録する |
| 整骨院・整体 | 来院の頻度・施術メニュー・次回予約の有無 | 体の状態の記録は扱いが重い。後の「個人情報」の章を参照 |
| エステ・ネイルなどのサロン | 使った商材・デザイン・施術の周期 | 写真を残すなら、撮影と保存の了承をもらう |
紙・表計算・予約システム、どれで作る?
道具は「続けられるもの」で選ぶのが基本です。お客様が少ないうちは紙の台帳や表計算ソフト(ExcelやGoogleスプレッドシートなど)でも十分です。予約システムを使っている店は、すでにある顧客の記録機能を確かめましょう。新しく作るより、今ある道具の項目を整えるほうが早いことも多いです。どの道具でも、記録は営業時間内にその場でつけるのが続けるコツです。記録を営業管理として整える考え方は「営業管理とは?直販を始めた小規模事業者が最初に整える記録の型」も参考になります。
ステップ2:次回の案内はいつ、どう伝える?
次回の案内は、お客様が満足している「会計や見送りのとき」に伝えるのがいちばん自然です。後から連絡するより、その場で次回の目安を共有しておくほうが、お客様も予定を立てやすくなります。
- 次回の目安を具体的に伝える(例:「この長さなら6週間後くらいが整えやすいです」「次の季節のコースは12月から始まります」)
- その場で予約を取れるなら、候補日を2つほど示して選んでもらう
- 予約しない方には「目安の頃にお知らせしてもよいですか?」と聞き、答えを台帳に記録する
- 名刺やショップカードに、次回の目安を書き込んで渡す
- 予約やお知らせを受け取る窓口(予約ページ・LINE公式アカウントなど)を1つに絞って伝える
ここで大切なのは、売り込みではなく「お客様の都合に合わせた目安」として伝えることです。整骨院の場合、次回の来院を勧める言い方が施術の効果を約束するように聞こえないよう、言葉選びにも気をつけましょう。
ステップ3:連絡のタイミングはどう決める?
連絡のタイミングは、他店の目安より、自分の店の台帳から出した「来店間隔」で決めるのが確実です。リピーターの方が前回から何日後に来ているかを10人ほど並べると、その店なりの間隔が見えてきます。
| 連絡の種類 | 送る時期の考え方 | 内容の例 |
|---|---|---|
| お礼 | 初回来店の当日〜翌日 | 来店のお礼と、次回の目安の再確認 |
| 次回のお知らせ | 台帳の来店間隔の少し前 | 「そろそろ〇〇の時期です」と予約先を1つ添える |
| しばらく来ていない方へ | いつもの間隔を大きく過ぎた頃 | 近況のお知らせ。割引を付けるかは決めて使う |
| 季節・行事 | 年末・新年度・記念日の前など | 季節のメニューや予約が混む時期のお知らせ |
来店間隔は業種や店によって大きく違います。たとえば仮に、ある美容室でリピーターの来店間隔が6週間前後に集まっていれば、5週目あたりにお知らせを送る、という決め方ができます。飲食店なら、記念日や会食など「利用の場面」の前に送るほうが合うこともあります。数字は店ごとに違うので、まずは自分の台帳で確かめてみてください。
メッセージの送りすぎを防ぐには?
送りすぎを防ぐいちばんの方法は、「送ってよい相手」と「送る回数の上限」を先に決めておくことです。加えて、メールやSMSで広告やお知らせを送るときは、法律のルールがあります。
広告のメール・SMSは、事前の同意が原則
広告や宣伝のメールには「特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)」というルールがあります。警視庁の案内では、広告宣伝メールは原則として受信者の事前の承諾が必要で、本文には送信者の名前、受信拒否の連絡先(メールアドレスかURL)、受信拒否ができることを表示する必要があると説明されています。例外もありますが、くわしい範囲は迷惑メール相談センターで確認するよう案内されています。また、総務省の特定電子メール法のページでは、電話番号を使ってメッセージを送るサービス(SMS)も、この法律の対象になると説明されています。
- お知らせを送ってよいかを、来店時やフォームではっきり聞き、台帳に記録する
- メールの本文に、店名・受信を止める方法・連絡先を毎回入れる
- 「止めたい」と言われたら、すぐに台帳の「連絡してよいか」を「不可」に変える
- LINE公式アカウントなどは、ブロックされると届かなくなる。法律の対象かどうかに関わらず、相手に合った内容と回数に絞る
店として「送る回数の上限」を決めておく
法律を守っていても、回数が多すぎるとお知らせは読まれなくなります。「一人のお客様に送るのは、次回のお知らせと季節のお知らせを合わせて月に〇回まで」のように、店のルールを決めておきましょう。全員に一斉に送るより、台帳で「来店間隔が近い人」「その季節のメニューを頼んだことがある人」に絞るほうが、内容も相手に合いやすくなります。InstagramのDMで予約の案内をする場合の設定と注意点は「インスタのDM自動送信・予約送信の違いは?予約につなげる設定と注意点」で整理しています。
顧客台帳の個人情報で気をつけることは?
顧客台帳は個人情報のかたまりです。個人情報保護法は、個人事業主や小さな店も対象になります。個人情報保護委員会の「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」をもとに、台帳に関係する主なルールを整理します。
| ルール | ガイドラインでの考え方 | 店でできること |
|---|---|---|
| 利用目的を決める | 利用目的はできる限り具体的に決める。「マーケティング活動に用いるため」のような抽象的な書き方では足りない | 「ご予約の確認と、次回来店時期のお知らせのため」のように書く |
| 利用目的を伝える | 取得したら利用目的を本人に通知するか公表する。書面で本人から直接取得する場合は、あらかじめ明示する | カルテや会員登録の用紙・フォームに利用目的を書いておく |
| 目的の外で使わない | 利用目的を変えるときは、元の目的と関連する範囲を超えてはならない | 予約のために聞いた連絡先に、関係のない広告を送らない |
| 安全に管理する | 漏えいなどを防ぐため、必要かつ適切な措置をとる | 台帳を置く場所や閲覧できる人を決め、パスワードをかける |
整骨院・整体は「体の状態の記録」に特に注意
同じガイドラインでは、病歴などは「要配慮個人情報」とされ、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで取得してはならないとされています。けがや体の不調の記録は、内容によってはこれにあたる可能性があります。問診票で同意をもらう、記録は施術に必要な範囲にとどめる、お知らせ用の台帳とは分けて管理する、といった対応を考えましょう。迷ったら個人情報保護委員会の相談窓口に確認するのが安心です。また、柔道整復の施術所は広告できる内容が決められています。福岡市保健所の「施術所等について広告し得る事項」では、広告は方法を問わず対象になり、施術者の技能や施術方法、経歴に関する内容にわたってはならないと整理されています。お知らせの文面に何を載せるかは、所在地の保健所に確認しておきましょう。
効果はどう確かめる?
仕組みが効いているかは、「初回のお客様のうち、2回目に来た人の割合」で確かめるのが分かりやすい方法です。台帳があれば、月ごとに数えられます。
- その月に初めて来たお客様の数を数える
- そのうち、決めた期間内(例:来店間隔の1.5倍まで)に2回目に来た人を数える
- 2回目に来た人÷初めて来た人で割合を出す(例:仮に初回20名のうち8名なら40%)
- きっかけ別(Googleマップ・Instagram・紹介など)にも同じ割合を出し、リピーターにつながりやすい集客を見つける
- 次回の伝え方や連絡の時期を1つだけ変え、翌月の割合と比べる
数字は月ごとに1枚にまとめておくと、変化に気づきやすくなります。まとめ方は「小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい」も参考にしてください。
記録と連絡の手間を減らすには?
再来店の仕組みでいちばん続かないのは、記録と連絡の作業です。営業中は手が離せず、閉店後にまとめて作業するのは負担が大きいものです。手間を減らす工夫として、次のような方法があります。
- 予約フォームの項目を台帳の項目とそろえ、入力を二度手間にしない
- お礼や次回のお知らせの文面を、場面ごとにひな形にしておく
- AIの文章作成ツールで、季節のお知らせやSNS投稿の下書きを作り、店主が手直しする
- 手書きの問診票やカルテは、OCR(画像の文字を読み取ってデータにする機能)で取り込む。ただし個人情報を外部のサービスに入れる前に、そのサービスの取り扱いを確認する
- 予約の状況や再来店の割合を、月に1回まとめて見る時間を決めておく
まとめ
リピーターを増やすには、割引で呼び戻す前に「来店記録→次回の案内→連絡のタイミング」の順で仕組みを作ることが大切です。顧客台帳には来店日・内容・次回の目安・連絡してよいかを記録し、会計のときに次回の目安を伝え、台帳から出した来店間隔に合わせてお知らせを送りましょう。広告のメールやSMSは事前の同意と表示のルールを守り、個人情報は利用目的を示して必要な分だけ扱うことが、長く信頼される店につながります。
とはいえ、台帳をつけ、文面を考え、時期を見て送る作業を、営業しながら続けるのは簡単ではありません。当社の「ディープラ」は、AIチャットでの文章作成やOCR、SNS投稿の作成、自動送信、レポートなどを1か所で使える、小規模事業者向けのツールです。無料で試せる範囲もあるので、記録や連絡の手間を少しでも減らしたいと感じたら、まずは今の作業のどこが置き換えられそうか、触って確かめてみてください。
よくある質問
- 顧客台帳は紙でもいいですか?
- お客様が少ないうちは紙でも役立ちます。ただし来店間隔の計算や連絡先の絞り込みは手間がかかるので、件数が増えてきたら表計算ソフトや予約システムへの移行を考えましょう。紙の場合も、鍵のかかる場所に保管するなど管理のルールを決めておくことが大切です。
- お知らせはどのくらいの頻度で送ればいいですか?
- 決まった正解はありません。自分の店の台帳から来店間隔を出し、その少し前に送るのが基本です。あわせて「一人に月〇回まで」と上限を決め、全員への一斉送信より、時期や好みが合う人に絞って送るほうが読まれやすくなります。
- 来店したお客様にメールでお知らせを送るのに、同意は必要ですか?
- 広告や宣伝のメールやSMSは、特定電子メール法で原則として事前の同意が必要とされています。例外もありますが、範囲の判断は簡単ではありません。来店時やフォームで「お知らせを送ってよいか」をはっきり聞いて記録し、本文には店名と受信を止める方法を入れておくと安心です。
- 整骨院で症状を記録してもいいですか?
- 施術に必要な記録は大切ですが、病歴などは要配慮個人情報とされ、原則として本人の同意なく取得できません。問診票で利用目的を示して同意をもらい、記録は必要な範囲にとどめ、お知らせ用の台帳とは分けて管理しましょう。迷ったら個人情報保護委員会の相談窓口に確認してください。
- 割引はまったく使わないほうがいいですか?
- 使ってはいけないわけではありません。割引だけに頼ると利益が削られ、割引のときだけ来る習慣がつきやすくなります。記録と案内の仕組みを先に作り、しばらく来ていない方へのお知らせなど、使う場面を決めて足すのがおすすめです。
出典:総務省「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」/警視庁「迷惑メールに関する情報提供」/個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」/福岡市保健所「施術所等について広告し得る事項」
