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デザイン事務所が新規事業で自社商品を持つには?小さく試す3つの手順

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

デザイン事務所が新規事業で自社商品を持つには、受託で何度も繰り返している仕事から商品の種を選び、作り込む前に見本と価格で反応を確かめ、少数販売の数字で続けるかを決める3つの手順で進めるのが現実的です。受託を止めずに小さく試すことで、外れたときの損を抑えながら2本目の売上を育てられます。

デザイン事務所の自社商品は「種を選ぶ→反応を見る→少数で売る」の3手順で小さく試す

デザイン事務所が新規事業で自社商品を持つには、受託の時間を止めずに小さく試す3つの手順が現実的です。1つ目は、受託で何度も繰り返している仕事から商品の種を選ぶこと。2つ目は、作り込む前に見本と価格を見せて反応を確かめること。3つ目は、少数だけ売ってみて、続けるかを数字で決めることです。デザイン業は少人数の事業所が大半で、経済産業省「平成26年特定サービス産業実態調査」では、デザイン業の事業所のうち従業者4人以下が78.0%を占めました([経済産業省「平成26年特定サービス産業実態調査 デザイン業」](https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/tokusabizi/result-2/h26/pdf/h26outline16.pdf))。人手に余裕がないからこそ、大きく作ってから売るより、小さく試して外れを早く知る進め方が向いています。

この記事は、ロゴやパンフレット、パッケージなどを受託で制作している少人数のデザイン事務所やフリーランスのデザイナーに向けて書いています。自社商品とは、お客様の依頼を待たずに、自社で中身と価格を決めて売る商品やサービスのことです。受託とは、お客様の依頼を受けて制作し、その対価を受け取る仕事の形を指します。

デザイン事務所が自社商品を小さく試す3つの手順とは?

ゴールは、受託を続けながら、売れる見込みのある自社商品を1つ見つけることです。全体の流れは次の3段階です。

  1. 手順1:受託で繰り返している仕事から、商品の種を1つ選ぶ
  2. 手順2:作り込む前に、見本と価格を見せて反応を確かめる
  3. 手順3:少数だけ売ってみて、続ける・直す・やめるを数字で決める

デザイン事務所の自社商品には、どんな型があるのか?

違いは「在庫を持つか」「始めるまでの重さ」「確かめておくルール」の3点です。デザイン事務所が持ちやすい自社商品を、4つの型で比べます。

自社商品の型例在庫始めるまでの重さ先に確かめておくこと
定額のパッケージ開業する店向けの「ロゴ・名刺・ショップカード」一式など持たない軽い。受託の型をそのまま商品にできる対応範囲と修正回数の上限
デジタル商品テンプレート、イラスト素材、フォーマット集など持たない中くらい。販売の仕組みづくりが要る使ってよい範囲(利用規約)、通信販売の表示
物の商品文具、雑貨、オリジナルグッズなど持つ重い。製造・在庫・発送が要る製造の最小ロット、意匠登録の要否、通信販売の表示
講座・ワークショップ事業者向けのチラシ作り講座、デザインの基礎講座など持たない軽い。会場や配信の準備で始められる定員、キャンセルの扱い、配布資料の権利

迷ったときは、在庫を持たず、受託の経験をそのまま使える定額のパッケージから検討すると、外れたときの損を小さくできます。物の商品は、反応を確かめてから製造量を決める順番にすると安全です。

デザイン事務所の自社商品づくりで、つまずきやすいのはどこか?

つまずきやすいのは、デザインの完成度を上げることに時間を使い、売れるかどうかの確認を後回しにすることです。現場でよくある失敗と、最初の対策を表にまとめます。

よくある失敗何が起きるか最初の対策
完成させてから売り始める時間をかけたのに、買う人が見つからない完成前に見本と価格を数人に見せる
「誰にでも使える」商品にする誰に向けた商品かが伝わらず、選ばれない業種や場面を1つに絞って言葉にする
受託の空き時間だけで進める繁忙期に止まり、いつまでも形にならない週に使う時間を先に決めて予定に入れる
受託で作ったデザインを流用するお客様との契約や信頼を損なうおそれがある商品の素材は自社で一から作る
物の商品を最初から大量に作る在庫が残り、資金が寝てしまう少量の試作や受注生産で反応を見る

手順1:デザイン事務所の自社商品の種は、どこから選ぶ?

  • 過去1〜2年の受託案件を、業種と依頼内容で書き出す
  • 何度も同じ構成になった仕事と、よく受ける相談に印をつける
  • 「誰の、どんな悩みを、どの型で解決するか」を1文にする

この段階のゴールは、商品の種を1つに絞り、1文で説明できるようにすることです。種は、受託で何度も繰り返している仕事から選ぶのがいちばん確実です。毎回似た構成になる仕事は、すでに作り方の型ができているうえ、同じ悩みを持つお客様が他にもいることを示しています。

たとえば「開業前の飲食店から、ロゴとショップカードの依頼が毎回セットで来る」なら、それは定額パッケージの種になります。「チラシを自分で直したいという相談が多い」なら、テンプレートや講座の種になります。現場では、作りたいものから考え始めて、買う人の顔が浮かばないまま進んでしまう、という流れがよくあります。自分の好きなデザインではなく、お客様の繰り返しの悩みから出発するのがコツです。

種の候補が複数あって選べないときは、市場の大きさや競合を簡単に調べてから決めましょう。調べ方は「小規模事業者向け・新事業の市場調査のやり方と実践ステップ」で順を追って解説しています。

手順2:作り込む前に、自社商品の反応はどう確かめる?

  • 見本(数ページの試作、完成イメージ、内容の一覧)を用意する
  • 価格と提供内容を1枚にまとめ、対象に近い人に見せる
  • 「買いたいか」ではなく「この価格で申し込むか」を聞く

この段階のゴールは、作り込む前に「この価格なら申し込む」という声を数件集めることです。テストマーケティングとは、本格的に売り出す前に、小さな範囲で商品を見せたり売ったりして、反応を確かめることを指します。デザイン事務所は見本を作るのが得意なので、完成品がなくても、完成イメージで十分に反応を確かめられます。

見せる相手は、手順1で思い浮かべた業種の取引先や知人など、対象に近い人を選びます。「いいですね」という感想だけで判断しないことが大切です。感想はお世辞のこともあるため、先行申込みや予約を受け付け、実際に申し込みがあるかで判断すると、ぶれにくくなります。値段を聞かれて答えに詰まるなら、提供内容の書き出しが足りていないサインです。

物の商品のデザインを先に公開するときの注意点は?

物の商品の形や模様をSNSなどで先に公開すると、あとから意匠登録しにくくなるおそれがあります。意匠権とは、物の形・模様・色などのデザインを、登録した人が独占して使える権利です。意匠登録には、出願の前に公開されていないこと(新規性)が求められます。自分で公開した場合でも、公開から1年以内に「新規性喪失の例外」の手続きをとれば救われる制度がありますが、手続きには決まりがあります。特許庁の意匠の新規性喪失の例外に関する案内で確かめ、登録を考える場合は公開前に弁理士などの専門家に相談すると安心です。

手順3:少数販売の結果から、自社商品を続けるかどう決める?

  • 販売の前に、見る数字(申込み数・1件あたりの粗利・かかった時間)を決める
  • 期間と販売数を区切って売る
  • 期間が終わったら「続ける・直す・やめる」を数字で決める

この段階のゴールは、続けるかどうかを気持ちではなく数字で決められる状態にすることです。粗利とは、売上から材料費や外注費、販売手数料など、直接かかった費用を引いた利益のことです。デザイン事務所の自社商品は、作るのに手間がかかるわりに価格が低くなりやすいため、売れた数だけでなく1件あたりの粗利とかかった時間を必ず見ます。

数字は、「受託で同じ時間を使ったら、いくら稼げたか」と比べると判断しやすくなります。今は受託より低くても、2回目以降に手間が減る見込みがあれば「直す」、申込み自体がほとんどなければ「やめる」と決めます。やめる基準を始める前に決めておくと、ずるずる続けて受託の時間を削る事態を防げます。売れ始めて資金や人手が必要になったら、計画を書面にまとめておきましょう。まとめ方は「新事業の創業計画書の書き方|小規模事業者が動機から資金計画まで整理」が参考になります。

自社商品をネットで売るとき、デザイン事務所が確かめるルールは?

自社サイトやネットショップで自社商品を売る場合は、特定商取引法の「通信販売」のルールに沿った表示が必要です。特定商取引法とは、通信販売などのトラブルを防ぐため、事業者が守るべきルールを定めた法律です。消費者庁の「通信販売|特定商取引法ガイド」によると、広告には販売価格(送料を含む)、支払いの時期と方法、引き渡しの時期、返品に関する事項、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などを表示する必要があります。

特に返品の扱いは見落としやすい点です。同じページでは、返品について特約を表示していない場合、購入者は商品を受け取った日から8日以内なら、送料を自分で負担して返品できると説明されています。テンプレートなどのデジタル商品も含めて、返品を受けるかどうかを決め、商品ページと注文の最終確認画面に書いておきましょう。

受託を減らさずに、自社商品の時間をどうつくる?

答えは、受託の中の繰り返し作業を先に減らし、生まれた時間を自社商品に回すことです。ヒアリング、見積もり、修正のやり取り、請求といった制作の前後の作業は、型にすれば短くできることが多くあります。

  • ヒアリングシートと見積もりのひな形を作る
  • 修正の回数と受け付け方を、契約の段階で決めておく
  • 週に1〜2時間など、自社商品に使う時間を先に予定に入れる

どの作業から減らすかは、「「時間がない」を減らす業務改善の進め方|手間の大きい作業から順に」で、手間の大きい作業から順に見直す方法を紹介しています。受託以外の収益の柱を、継続契約や周辺サービスも含めて比べたい方は「制作会社の収益の柱をどう増やす?受託だけに頼らない3つの選択肢」もあわせてご覧ください。

まとめ:デザイン事務所が自社商品を持つ最初の一歩は?

最初の一歩は、過去の受託案件を書き出し、何度も繰り返している仕事を見つけることです。そこから種を1つ選び、見本と価格で反応を確かめ、少数販売の数字で続けるかを決める。この3つの手順なら、受託を止めずに、外れたときの損を抑えながら自社商品を育てられます。

とはいえ、種の候補が複数あるときにどれを選ぶか、事務所としてこれから誰にどう貢献していきたいのかとどうつなげるかといった優先順位づけは、日々の制作に追われながら一人で決めるのが難しい部分です。当社の事業戦略顧問では、商品設計から集客、業務改善まで含めて事業全体を整理し、経営者と一緒に実行まで進めています。自社商品づくりを一度誰かと整理してみたいと感じたら、気軽にご相談ください。

よくある質問

デザイン事務所の自社商品は、何から始めるのがよいですか?
在庫を持たず、受託の経験をそのまま使える定額のパッケージから始めるのがおすすめです。何度も繰り返している受託の仕事を、対応範囲と修正回数を決めて定額にするだけなので、外れたときの損が小さく済みます。
自社商品の新規事業と、受託のメニュー化は何が違いますか?
受託のメニュー化は依頼を待つ形のままで、自社商品は依頼を待たずに自社から売り出す形です。中身と価格を自社で決め、取引のない相手にも売れるものを自社商品と考えると分けやすくなります。
過去に受託で作ったデザインを、自社商品に使ってもよいですか?
使わないのが基本です。受託の制作物は、契約によって著作権などの権利がお客様に移っていることがあり、権利が手元に残っていてもお客様との信頼を損なうおそれがあります。商品の素材は自社で一から作り、迷う場合は契約書を確かめたうえで専門家に相談してください。
テンプレートなどのデジタル商品にも、特定商取引法の表示は必要ですか?
ネットで申し込みを受けて販売するなら、通信販売として表示が必要です。消費者庁の特定商取引法ガイドでは、ソフトウェアに関する取引ではその動作環境の表示も挙げられています。対象になるかや表示の仕方に迷う場合は、消費者庁の情報で確かめてください。

出典:経済産業省「平成26年特定サービス産業実態調査 デザイン業」/特許庁 意匠の新規性喪失の例外に関する案内ページ/消費者庁「通信販売|特定商取引法ガイド」(いずれも2026年11月4日確認)

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