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収入の柱を増やしたいデザイナーへ|売上の内訳から次の一手を決める方法

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

デザイナーが収入の柱を増やすときは、新しい商品を考える前に、売上の内訳を4つの切り口で分けて、いちばん偏っている所を見つけることが先です。その偏りを補う一手を1つに絞り、期間と判断の数字を決めて試せば、今の仕事を止めずに次の柱を育てられます。

デザイナーの収入の柱は、売上の内訳を4つに分けて「偏り」から決める

デザイナーが収入の柱を増やすときは、新しい商品を考える前に、過去12か月の売上を「取引先別」「仕事の種類別」「単発か継続か」「1時間あたりの粗利」の4つに分けて見ることから始めます。いちばん偏っている切り口が、今の弱点です。1社に売上が集まっていれば取引先を広げる手を、月ごとの売上の波が大きければ継続の仕事を、忙しいのに手元に残らなければ単価や進め方の見直しを先に考えます。次の一手は1つに絞り、試す期間と判断に使う数字を先に決めておくと、続けるかやめるかを迷わずに決められます。

総務省統計局の統計Today No.197「基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方」によると、令和4年就業構造基本調査で、本業がフリーランスの人は209万人、有業者の3.1%でした。この調査でのフリーランスは、実店舗がなく人を雇っていない自営業主や一人社長を指し、独立して働くデザイナーもここに含まれます。一人で仕事を回していると、目の前の案件で手一杯になり、売上の中身を見直す時間はなかなか取れません。この記事では、個人や少人数で活動するデザイナーに向けて、売上の内訳の分け方と、そこから次の一手を選ぶ手順をまとめます。

デザイナーの「収入の柱」とは?取引先の数とは何が違う?

収入の柱とは、ほかとは別の理由で売上が入ってくる仕事のまとまりのことです。取引先が5社あっても、すべてが同じ制作会社経由の下請けで、同じ種類のバナー制作なら、発注元の方針が変わったときにまとめて止まるおそれがあります。この場合、柱は実質1本です。反対に、取引先が少なくても、制作の受託と毎月の更新契約のように売上の入り方が違えば、柱は2本と数えられます。

あわせて覚えておきたい言葉が2つあります。受託のように案件ごとに売上が立つ形を「フロー型」、月額の契約のように毎月の売上が積み上がる形を「ストック型」と呼びます。どちらがよいというより、両方を組み合わせると、月ごとの売上の波をならしやすくなります。

デザイナーの売上の内訳は、どの切り口で分ければよいか?

切り口は4つで、それぞれ見えてくる弱点が違います。4つを並べて、いちばん偏りが大きいものを探します。

切り口見る数字偏っているときのサイン補う一手の方向
1. 取引先別上位1社・上位3社が売上に占める割合1社が止まると、毎月の固定費をまかなえない新しい取引先や、直接の依頼を増やす
2. 仕事の種類別ロゴ・Web・チラシ・パッケージなど種類ごとの売上1種類の仕事に売上が集まっている得意な仕事の前後にある仕事を足す
3. 単発か継続か契約で毎月決まって入る売上の割合月ごとの売上の波が大きい保守・更新・月額制作など継続の仕事をつくる
4. 1時間あたりの粗利案件ごとの粗利÷かかった時間忙しいのに手元に残らない単価・修正回数・進め方を見直す

売上の内訳から次の一手を決める手順は?

ゴールは、次に増やす柱を1つ、数字の根拠つきで選ぶことです。次の5段階で進めます。

  1. 過去12か月の売上を、案件ごとに1枚の表に書き出す
  2. 取引先別に分けて、上位の取引先への集まり方を見る
  3. 仕事の種類別と、単発・継続別に分けて、売上の波の原因を見る
  4. 案件ごとに1時間あたりの粗利を出す
  5. いちばん偏っている切り口を選び、次の一手を1つ決めて試す

段階1:デザイナーの売上は、何を1枚の表に書き出す?

この段階のゴールは、過去12か月の案件をすべて、同じ形の表にそろえることです。

  • 請求書の控えや会計ソフトから、過去12か月の案件を拾う
  • 1案件1行で、取引先・仕事の種類・金額・単発か継続かを書く
  • かかった時間と外注費を、分かる範囲で書き添える

12か月分を見るのは、繁忙期と閑散期をまとめて見るためです。会計ソフトの取引先別の集計や請求書の控えを使えば、新しく記録を始めなくても作れます。時間の記録がない案件は、覚えている範囲の概算でかまいません。正確さより、すべての案件を同じ表にそろえることを優先してください。下の表は、個人で活動するデザイナーを想定した記入例で、数字は説明のための架空のものです。

取引先仕事の種類単発か継続か年間売上粗利(売上−外注費)かかった時間1時間あたりの粗利
A社(制作会社)バナー・LP単発(毎月発注あり)300万円300万円600時間5,000円
B社(飲食店)ロゴ・メニュー単発60万円60万円80時間7,500円
C社(工務店)Webサイトの更新継続(月額契約)60万円60万円60時間10,000円
D社(サロン)チラシ単発40万円40万円50時間8,000円
その他5件名刺・パンフレットなど単発140万円120万円300時間4,000円
合計--600万円580万円1,090時間約5,300円

段階2:デザイナーの売上を取引先別に見ると、何が分かる?

この段階のゴールは、いちばん大きな取引先が止まったときに何か月もつかを、数字で言えるようにすることです。

  • 取引先ごとに年間売上を合計する
  • 上位1社と上位3社が売上に占める割合を出す
  • 上位の取引先の取引条件と、入金までの日数を確かめる

記入例では、A社だけで売上の50%、上位3社で70%を占めています。A社からの発注が止まると、年間売上の半分がなくなります。何%を超えたら危ないという決まった線はありません。「その取引先の売上がなくなったら、生活費と事業の固定費を何か月まかなえるか」で考えると、自分にとっての危うさが具体的に見えてきます。

上位の取引先については、取引条件も確かめておきましょう。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)について、公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでは、発注する事業者は取引条件を書面やメールなどで直ちに示し、報酬の支払期日を、成果物を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定める必要があると説明されています。法の対象になるかは取引の形によって変わるため、特設サイトで確かめてください。入金が遅い取引先に売上が集まっていると、新しい柱に回すお金の余裕も細ります。

段階3:仕事の種類と「単発か継続か」で、売上の波はどう見える?

この段階のゴールは、月ごとの売上の波が、どの仕事から来ているかを言えるようにすることです。

  • 仕事の種類ごとに売上を合計する
  • 契約で毎月決まって入る売上(継続)の割合を出す
  • 月別の売上を並べ、落ち込んだ月にどの仕事が減ったかを探す

ここで気をつけたいのは、「毎月依頼が来る」と「継続の契約がある」は別だということです。記入例のA社は毎月発注がありますが、契約は案件ごとなので、来月の依頼は約束されていません。契約で毎月の売上が決まっているのはC社のWebサイトの更新だけで、売上全体の10%です。現場では、毎月の発注が続いていることで安心し、ある月から依頼が急に減って初めて偏りに気づく、という流れがよくあります。

段階4:デザイナーの1時間あたりの粗利は、どう出してどう読む?

この段階のゴールは、「売上は大きいけれど手元に残りにくい仕事」を見つけることです。粗利とは、売上から外注費や素材の購入費など、その案件のために直接かかった費用を引いた利益のことです。

  • 案件ごとに、売上から外注費などを引いて粗利を出す
  • 粗利を、打ち合わせや修正も含めたかかった時間で割る
  • いちばん高い仕事と、いちばん低い仕事の差を見る

記入例では、売上の半分を占めるA社の仕事は1時間あたり5,000円で、C社のWebサイトの更新は10,000円です。売上の大きい仕事ほど、時間あたりでは低いということは珍しくありません。修正の回数が決まっていない、急ぎの依頼が多い、打ち合わせが長いといった理由で、時間がふくらんでいないかも一緒に見てください。

段階5:偏りのタイプ別に、デザイナーの次の一手はどう選ぶ?

この段階のゴールは、いちばん偏っている切り口を1つ選び、それを補う一手と最初の試し方を決めることです。

偏りのタイプ次の一手の例最初の小さな試し方
1社に売上が集まっている直接の依頼や、別の業種の取引先を増やす作品集(ポートフォリオ)を、狙う業種向けに作り直す
単発ばかりで月ごとの波が大きいサイトの更新やSNS用画像の月額制作など、継続の仕事をつくる今の取引先1社に、繰り返し頼まれている作業を月額で引き受ける案を出す
1種類の仕事に頼っている得意な仕事の前後にある仕事(撮影、運用、印刷の手配など)を足す取引先からよく受ける「制作以外の相談」を書き出す
1時間あたりの粗利が低い価格・修正回数・進め方を見直す次の見積もりから、修正回数と追加料金の条件を書き入れる
依頼を待つ仕事しかないテンプレートや講座、型の決まったメニューなど自分の商品を持つ小さく売り出し、買ってくれた人の数で需要を確かめる

記入例なら、取引先の偏りと継続の少なさが目立ちます。どちらも候補ですが、同時に始めると時間が足りません。たとえば「C社と同じ月額の更新契約を、B社やD社にも提案する」を選べば、継続の割合が増えると同時に、A社以外の売上も育ちます。2つの弱点に同時に効く一手があれば、それを優先するのが選び方のコツです。

自分の商品を持つ一手を選ぶ場合は、作り込む前に、売れるかどうかを確かめる必要があります。確かめ方は「小規模事業者向け・新事業の市場調査のやり方と実践ステップ」で順を追って解説しています。

試すときは、期間と判断の数字を先に決めます。「提案した数」「契約が決まった数」「その仕事の1時間あたりの粗利」のように、お金と時間が実際に動いたかで判断すると、感想に引っぱられずに続けるかを決められます。毎月の数字の追い方は「小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方」の表の形がそのまま使えます。

収入の柱を増やすとき、デザイナーがつまずきやすいのは?

いちばん多いのは、今の仕事の時間を減らさないまま、新しい柱を足そうとすることです。現場でよくあるつまずきと、最初の対策を表にまとめます。

つまずき何が起きるか最初の対策
内訳を見ずに、思いつきで始める弱点と関係のない柱が増え、偏りは変わらない段階2〜4の数字を見てから選ぶ
一度に複数の柱を始めるどれも中途半端になり、何が効いたか分からない1つに絞り、期間を決めて試す
今の仕事の時間をそのまま残す新しい柱に手が回らず、途中で止まる繰り返しの作業を減らして時間をつくる
大きな取引先の仕事を急に減らす新しい柱が育つ前に売上が落ちる新しい柱の売上が立つまで、今の仕事は続ける
値上げだけで解決しようとする取引先との関係がぎくしゃくし、依頼が減ることがある修正回数や納期の条件など、仕事の中身とあわせて見直す

新しい収入の柱に使う時間は、どうつくる?

答えは、今の仕事の中の繰り返し作業を先に減らすことです。見積もり、ヒアリング、素材集め、修正のやり取り、請求といった作業は、案件ごとに同じ手順を繰り返していることが多く、ひな形にすると時間が浮きます。ヒアリングシートを用意する、修正依頼の受け方を1つの形に決める、といった小さな工夫からで十分です。減らす作業の選び方は「「時間がない」を減らす業務改善の進め方|手間の大きい作業から順に」で紹介しています。

まとめ:デザイナーの収入の柱は、何から増やせばよいか?

最初の一歩は、過去12か月の売上を「取引先別」「仕事の種類別」「単発か継続か」「1時間あたりの粗利」の4つに分けることです。いちばん偏っている切り口を補う一手を1つ選び、期間と判断の数字を決めて試せば、今の仕事を止めずに次の柱を育てられます。

ただ、弱点が2つ以上見つかったときにどれから直すか、これから誰にどう役立つデザイナーでいたいのかとどうつなげるか、といった優先順位づけや戦略の整理は、日々の案件に追われながら一人で決めるのが難しい部分です。合同会社well coの事業戦略顧問では、商品設計や集客、業務改善までを含めて事業全体を整理し、経営者と一緒に実行まで進めています。売上の内訳を前に「次の一手を誰かと一緒に決めたい」と感じたら、一度ご相談ください。

よくある質問

デザイナーの収入の柱は、いくつあればよいですか?
決まった数はありません。大事なのは数よりも、1つが止まっても別の柱で生活と事業を支えられるかです。売上の入り方が違う柱が2本あるだけでも、1社や1種類の仕事に頼りきる状態からは抜け出せます。
取引先が多ければ、収入の柱は分かれていると言えますか?
言えない場合があります。取引先が多くても、同じ業界・同じ種類の仕事ばかりなら、業界の変化でまとめて減るおそれがあります。取引先の数に加えて、仕事の種類と単発か継続かもあわせて見てください。
時間の記録をつけていません。1時間あたりの粗利は出せますか?
出せます。過去の案件は覚えている範囲の概算で出し、これからの案件だけ記録を始めれば十分です。数か月分たまると、概算とのずれも見えてきます。
副業でデザインをしていても、この手順は使えますか?
使えます。本業の給与とは切り分けて、デザインの売上だけで同じ4つの切り口を見てください。使える時間が限られる分、1時間あたりの粗利が特に判断の助けになります。
継続の仕事は、どんなものから始めやすいですか?
今の取引先から繰り返し頼まれている作業から始めるのが、いちばん始めやすい形です。サイトの更新やSNS用の画像制作など、毎月の作業の範囲と量を決めて月額にすると、取引先にとっても予算を立てやすくなります。

出典:総務省統計局「統計Today No.197 基幹統計として初めて把握したフリーランスの働き方 ~令和4年就業構造基本調査の結果から~」/公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」(いずれも2026年11月4日確認)

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