文責:藤田 泰仁
ハイタッチ営業とは、担当者がお客様一人ひとりと直接・個別に関わる営業のやり方です。少人数のBtoB企業では、すべてのお客様に同じ手間をかけるのではなく、売上や関係の深さでお客様を3段階に分け、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを使い分けます。分ける前提として記録をそろえ、定型の連絡は自動送信に任せると、人が時間を使うべきお客様に手間を回せます。
ハイタッチ営業とは、お客様一人ひとりに個別で深く関わる営業のやり方
ハイタッチ営業とは、担当者がお客様と直接やりとりし、一人ひとりの課題に合わせて提案や支援をする営業のやり方です。これに対してロータッチは、勉強会や説明会など「複数のお客様にまとめて」関わるやり方、テックタッチはメールやメッセージの自動送信など「仕組みで」関わるやり方を指します。直販(自社で直接お客様に売ること)を始めた少人数のBtoB企業では、すべてのお客様にハイタッチで関わろうとすると時間が足りなくなります。そこで売上や関係の深さでお客様を3段階に分け、関わり方を使い分けるのが現実的です。
合同会社well coの藤田です。小規模事業者のご相談をお受けしていると、「直販を始めてお客様が増えてきたけれど、全員に同じように連絡していたら本業の時間がなくなった」という声をよく聞きます。この記事では、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの違いと、少人数の会社でのお客様の分け方、記録と自動化で手間を減らす方法を順にまとめます。直販そのものの基本は「直販とは?直販営業と間販の違い」で解説しています。
ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチは何が違うのか?
3つの違いは、「1人の担当者が、何人のお客様に、どのくらい個別に関わるか」です。もともとはSaaS(インターネット経由で使うソフトウェア)の会社で、契約後のお客様を支える「カスタマーサクセス」の考え方として広まった言葉ですが、BtoBの営業全般にも当てはめられます。
| 関わり方 | 中身 | 1件あたりの手間 | 向いているお客様 |
|---|---|---|---|
| ハイタッチ | 個別の面談・訪問・電話。お客様ごとに提案を作る | 大きい | 売上が大きい、継続的な取引がある、関係が深い |
| ロータッチ | 少人数の勉強会、オンライン説明会、定期的な個別相談の枠など、複数のお客様にまとめて関わる | 中くらい | 取引はあるが、毎回個別の提案までは要らない |
| テックタッチ | メールやメッセージの自動送信、よくある質問のページ、使い方の動画など、仕組みで関わる | 小さい | 取引額が小さい、まだ検討段階、情報があれば自分で進められる |
なお、「ハイタッチ営業」という言葉の使い方は会社によって少しずつ違います。たとえばSalesforceのブログ記事「ハイタッチ営業とは?ロータッチ営業との違いやメリットなども解説」では、ハイタッチ営業を代理店を通さずに顧客企業と直接やりとりする営業手法と説明し、個別対応が必要なぶんコストがかかる一方、ロータッチ営業はCRMやSFAなどのツールを使って少ないコストで多くの顧客に関われると整理しています。言葉の定義より、「個別に関わる量をお客様ごとに変える」という考え方をつかむことが大切です。
なぜ少人数のBtoB企業こそ関わり方を分けるべきなのか?
理由は、営業に使える時間が限られているからです。大きな会社なら担当者を増やして対応できますが、少人数の会社では社長や数名のスタッフが本業と営業を兼ねています。お客様が10社のうちは全員に電話できても、30社、50社と増えると、同じやり方は続きません。
現場でよくあるのは、次のような状態です。
- 声の大きいお客様への対応に追われ、売上の大きいお客様へのフォローが後回しになる
- 小さな取引のお客様にも毎回個別で見積もりや説明をしていて、手間に対して売上が合わない
- 検討中のお客様への連絡を忘れ、いつの間にか他社に決まっている
- 誰にいつ何を伝えたかが社長の頭の中にしかなく、人に任せられない
関わり方を分けるのは、お客様を差別するためではありません。限られた時間を、いちばん成果につながるところに回すためです。テックタッチのお客様にも、必要な情報がきちんと届く仕組みを用意すれば、むしろ「連絡が来ない」という不満を減らせます。
お客様を3段階に分けるにはどうすればよいか?
いちばん手軽なのは、売上の大きい順に並べて区切る「ABC分析」を、お客様に当てはめる方法です。そこに「今後の伸びしろ」や「関係の深さ」を加えて、最終的な段階を決めます。
手順1:お客様ごとの売上を並べる(ABC分析)
中小企業基盤整備機構のJ-Net21「すぐに使える/小売店のABC分析表」では、売上高の大きい順に並べて累計シェア(上から順に足した売上の割合)を出し、たとえば上位50%までをA、80%までをB、それ以外をCとする方法が紹介されています。記事は商品の分析ですが、ABC分析は小売業に限らずさまざまな業界で使われている手法だと書かれています。同じ手順をお客様に当てはめると、次のようになります。
- 直近1年など期間を決め、お客様ごとの売上(できれば粗利)を集計する
- 売上の大きい順に並べ、上から累計シェアを計算する
- 累計シェアで区切り、A・B・Cの3グループに分ける
手順2:売上だけで決めず「伸びしろ」と「手間」で調整する
売上だけで分けると、取引を始めたばかりで今後大きくなりそうなお客様がCに入ってしまいます。BtoBでは、次のような点も見て段階を上げ下げします。
| 見る点 | 段階を上げる例 | 段階を下げる例 |
|---|---|---|
| 今後の伸びしろ | 取引を始めたばかりだが、追加の発注が見込める | 単発の取引で、次の予定がない |
| 関係の深さ | 決裁者と直接話せている、ほかの会社を紹介してくれる | 担当者が頻繁に替わり、関係が続きにくい |
| 対応にかかる手間 | 個別の調整が必要な商品を使っている | 決まった商品を決まった量だけ注文している |
手順3:段階ごとに「関わり方」と「連絡の頻度」を決める
最後に、段階ごとの関わり方を決めます。数字は目安なので、自社の商品や人数に合わせて調整してください。
| 段階 | 関わり方 | 連絡の例 |
|---|---|---|
| A(重点のお客様) | ハイタッチ | 月1回の個別面談やオンライン打ち合わせ。課題を聞き、個別に提案する |
| B(大切に育てたいお客様) | ロータッチ | 四半期ごとの勉強会や説明会、決まった時期の個別相談の枠 |
| C(仕組みで支えるお客様) | テックタッチ | 定期的なお知らせメール、使い方やよくある質問のページ、節目ごとの自動メッセージ |
段階は一度決めて終わりではありません。半年に一度など時期を決めて見直し、Bのお客様がAに上がる、Aのお客様が取引を減らしてBに下がる、といった動きを反映させます。
分けたあとに必要な「記録」とは?
お客様を分けて関わり方を変えるには、「誰がどの段階か」「最後にいつ何を伝えたか」が分かる記録が欠かせません。記録がないと、Aのお客様への連絡が空いていても気づけないからです。最初は表計算で十分なので、顧客台帳に次の列を足すところから始めましょう。
- 段階(A・B・C)
- 関わり方(ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチ)
- 最後に連絡した日と、その内容
- 次に連絡する予定日
- 段階を見直した日
顧客台帳や商談の記録の作り方は「営業管理とは?直販を始めた小規模事業者が最初に整える記録の型」で詳しく紹介しています。記録の型がそろっていれば、段階の見直しも表を並べ替えるだけで済みます。
自動送信で手間を減らすには?
テックタッチの中心になるのが、メールやメッセージの自動送信です。毎回同じ内容を手で送っている連絡は、自動化の候補になります。たとえば次のような場面です。
| 場面 | 自動で送る内容の例 | 人が対応するきっかけ |
|---|---|---|
| 問い合わせ・資料請求の直後 | お礼と資料、よくある質問の案内 | 返信で具体的な相談が来たとき |
| 契約・初回納品の直後 | 使い始めの手順、連絡窓口の案内 | 手順どおりに進まないという連絡が来たとき |
| 取引から一定期間たったとき | 定期点検や追加注文の案内 | 案内に反応があったとき |
| しばらく連絡がないとき | 近況を尋ねる短いメッセージ | 返信があり、困りごとが分かったとき |
ポイントは、自動送信を「送りっぱなし」にしないことです。返信や反応があったお客様には人が個別に対応し、必要ならBやAの関わり方に切り替えます。自動送信は、人が関わるべきお客様を見つけるための入り口として使うと効果的です。
広告・宣伝のメールを自動で送るときの注意
新商品の案内やキャンペーンなど、広告・宣伝のためのメールを送るときは「特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)」を守る必要があります。この法律では、取引関係にある相手など一定の場合を除き、事前に同意を得た相手にだけ広告・宣伝のメールを送れる「オプトイン」という方式がとられています。また、送信者の氏名・名称や、受信を拒否するための連絡先の表示なども求められます。法律と、総務省・消費者庁の「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」は、総務省の迷惑メール対策のページで確認できます。自動送信を設定する前に、同意の取り方と配信停止の手段を必ず確かめておきましょう。
AIで記録と連絡の手間をさらに減らすには
記録と自動送信の仕組みができても、面談の内容をまとめる、連絡の文面を考える、段階を見直すといった作業は残ります。こうした「書く・まとめる・整理する」作業は、AIが得意な分野です。
- Aのお客様との面談の会話から議事録を作り、次に提案することを書き出す
- OCR(画像から文字を読み取る技術)で名刺や注文書の文字を読み取り、台帳に写す手間を減らす
- AIチャットに自動送信のメールやメッセージの下書きを作ってもらい、自社の言葉に直して使う
- 顧客の一覧をもとに、しばらく連絡していないお客様や段階を見直すべきお客様を整理してもらう
ただし、AIが作った文面や整理の結果は、必ず自分の目で確かめてから使いましょう。どのお客様を優先するか、どんな提案をするかを決めるのは人の仕事です。どの作業から手をつけるかに迷う方は、「「時間がない」を減らす業務改善の進め方」も参考にしてください。
まとめ
ハイタッチ営業とは、お客様一人ひとりと直接・個別に関わる営業のやり方です。少人数のBtoB企業では、売上の大きい順に並べるABC分析でお客様を3段階に分け、伸びしろや関係の深さで調整したうえで、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを使い分けます。段階と連絡の記録をそろえ、定型の連絡は自動送信に任せることで、人が時間を使うべきお客様に手間を回せます。
記録や連絡の手間をまとめて減らしたい方には、当社が提供するディープラもあります。営業管理や自動送信の機能に加えて、議事録作成やOCR、AIチャット、SNS投稿づくりなどをひとつの場所で使えるプラットフォームです。本業とお客様との対話に使える時間を少しでも増やしたい方は、一度のぞいてみてください。
よくある質問
- ハイタッチ営業とロータッチ営業の違いは何ですか?
- ハイタッチ営業は、担当者がお客様一人ひとりと個別に面談や提案をする関わり方です。ロータッチ営業は、勉強会や説明会など複数のお客様にまとめて関わったり、ツールを使って効率よく多くのお客様に関わったりするやり方です。1件あたりの手間はハイタッチのほうが大きくなります。
- テックタッチとは何ですか?
- テックタッチとは、メールやメッセージの自動送信、よくある質問のページ、使い方の動画など、仕組みを使ってお客様に関わるやり方です。1件あたりの手間が小さいので、取引額が小さいお客様や検討段階のお客様に向いています。
- お客様が少ないうちから3段階に分ける必要はありますか?
- お客様が10社前後で全員に十分連絡できているなら、急いで分ける必要はありません。ただ、記録に「段階」の列だけでも作っておくと、お客様が増えて手が回らなくなったときにすぐ切り替えられます。
- 取引のあるお客様にも、宣伝メールを送るときは同意が必要ですか?
- 特定電子メール法では、取引関係にある相手への送信など、事前の同意がなくても送れる例外が定められています。ただし表示義務など守るべき点はあるため、総務省のページで公開されている法律とガイドラインを確認してから送信の仕組みを作りましょう。
出典:Salesforce Japanブログ「ハイタッチ営業とは?ロータッチ営業との違いやメリットなども解説」(2025年6月19日)/J-Net21「すぐに使える/小売店のABC分析表」/総務省「迷惑メール対策」(特定電子メール法関係法令・ガイドライン)
