文責:藤田 泰仁
小さな会社のプレスリリースは、「地域にとって新しい話題」を1つ選び、A4一枚に5W1Hで書いて、その話題を扱う地域の記者や記者クラブへ届けるのが基本です。掲載は約束されないので、同じ内容を自社サイトやGoogleビジネスプロフィール、SNSにも載せ、送った情報を資産として残しておきましょう。
小さな会社のプレスリリースは「地域の新しい話題×A4一枚×届け先の絞り込み」で書く
小さな会社のプレスリリースは、宣伝ではなく「地域にとって新しい話題」を1つに絞り、A4一枚にまとめるのが基本です。プレスリリースは広告と違って掲載費がかかりませんが、記事にするかどうかは媒体が決めます。だからこそ、記者が記事を書きやすいように、タイトル・リード文(要約)・5W1Hの本文・会社概要・問い合わせ先をそろえます。送り先は、その話題を扱う地域の新聞社の支局やテレビ局、市役所などにある記者クラブ、地域の情報誌などから選びます。掲載されなくても、同じ内容を自社サイトやSNSに載せれば、知ってもらうきっかけとして残せます。
合同会社well coの藤田です。小規模事業者の方と集客の話をしていると、「広告にお金をかける余裕はないけれど、もっと地域の人に知ってもらいたい」という声をよく聞きます。その選択肢の1つがプレスリリースです。ただ、「何を書けばニュースになるのか」「どこに送ればいいのか」が分からず、手が止まっている方も少なくありません。この記事では、題材の選び方からA4一枚の構成、送り先、配信後の活かし方までを順番にまとめます。
プレスリリースと広告は何が違う?
いちばんの違いは、載せ方を決めるのが誰かです。中小企業基盤整備機構のJ-Net21のプレスリリースの解説では、広告は費用を払って自社の思いどおりに載せるもの、プレスリリースは媒体側が取材・編集して報じるもので掲載費はかからない、と整理されています。そのぶん内容は思いどおりにならないこともありますが、第三者が書いた記事として信頼されやすいのが特長です。
| 比べる点 | 広告 | プレスリリース |
|---|---|---|
| 費用 | 掲載費がかかる | 掲載費はかからない(作る手間や郵送費などはかかる) |
| 載るかどうか | お金を払えば載る | 媒体が判断する。載らないことも多い |
| 内容 | 自社で決められる | 記者が取材・編集する |
| 読み手の受け取り方 | 宣伝として読まれる | ニュースとして読まれやすい |
つまり、プレスリリースは「記者に読んでもらうための資料」です。お客様向けのチラシを書く感覚で作ると、売り込みの色が強くなり、記事にしにくくなります。読み手は記者だと意識するところから始めましょう。
どんな話題がニュースになりやすい?
ニュースになりやすいのは、「地域の人にとって新しく、知る価値がある話題」です。京都府が府民向けに作ったプレスリリースの案内でも、記者の目に留まるポイントの1つ目に「ニュース性がある(公共性、社会性が高い。社会でまだ知られていない)」ことが挙げられています。小さな会社の場合、全国規模の新しさは要りません。「この地域では、まだ誰も知らない」で十分です。
| 題材の型 | ニュースになりやすい切り口の例 | ニュースになりにくい書き方 |
|---|---|---|
| 新しい取り組み | 地元の農家と組んだ新商品、地域で珍しいサービスを始めた | 新メニューを出しました、だけ |
| 地域の課題に関わる | 高齢の方の買い物を助ける配達を始めた、空き店舗を活用した | 地域貢献しています、と抽象的に書く |
| 季節・行事 | 地元の祭りや季節の行事に合わせた企画 | 季節限定セールのお知らせ |
| 人の物語 | 職人の技を受け継いだ、異業種から転身して開業した | 代表の経歴を長く並べる |
| 協働・連携 | 学校や地域団体、ほかの店と一緒に開くイベント | 自社だけのキャンペーン告知 |
| 数字や調べたこと | 地域のお客様へのアンケートで分かったこと | 根拠のない「人気No.1」 |
値引きやセールの告知は、広告として出すほうが向いています。同じ話題でも「なぜ今それをするのか」「地域の誰にどんな変化があるのか」まで書けると、ニュースとして読んでもらいやすくなります。
題材が見つからないときの3つの問い
- この地域で、うちが初めて(または珍しく)始めたことは何か
- この取り組みで、地域の誰がどう助かるか
- なぜ今なのか(季節、行事、地域の出来事とのつながり)
現場でよくあるのは、経営者本人が「当たり前」と思っていることに、ニュースの種が隠れているケースです。開業のきっかけや、地元の取引先とのつながりなどは、外から見ると立派な話題になります。社員や常連のお客様に「うちの何が珍しいと思う?」と聞いてみるのも1つの方法です。
A4一枚のプレスリリースはどんな構成にする?
プレスリリースは、A4一枚に情報をまとめるのが基本です。京都府の案内でも「A4用紙1枚に情報が集約され、記事にしやすい文言が記載」されていることが、記者の目に留まるポイントとして挙げられています。上から順に、次の項目を並べます。
| 順番 | 項目 | 書くこと |
|---|---|---|
| 1 | 日付・宛先 | 発表したい日付と「報道機関各位」。右上に会社名を入れる |
| 2 | タイトル | 何が起きるかが一目で分かる一文。告知か取材のお願いかも明記 |
| 3 | リード文 | あらましを50〜100字程度で。記事の見出しになるイメージ |
| 4 | 本文 | 5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように)で簡潔に |
| 5 | 詳細 | 日時・場所・料金・申込方法など。写真や地図を添える |
| 6 | 会社概要 | 会社名、所在地、事業内容、WebサイトのURL |
| 7 | 問い合わせ先 | 担当者名、電話、メール、連絡がつく時間帯 |
この並びは、京都府の案内にある「書き方の注意点」を、小さな会社向けに整理したものです。J-Net21の解説でも、本文は誰が・何を・どのような目的で・いつ・どうしたかを5W1Hで正確に書き、会社紹介と問い合わせ先をはっきりさせることが勧められています。
タイトルとリード文にいちばん時間をかける
記者のもとには、毎日たくさんの資料が届きます。タイトルとリード文だけ読んで、続きを読むか決めることも多いと考えてください。J-Net21では、タイトルは新聞の見出しのように伝えたいことを1つに絞るよう勧めています。たとえば「〇〇店からのお知らせ」ではなく、「西宮の〇〇店、地元農家の規格外野菜でスープを商品化 12月1日発売」のように、誰が・何を・いつが一文で分かる形にします。
書くときに気をつけたいこと
- 専門用語や業界用語は使わず、中学生にも分かる言葉に言い換える
- 「地域初」「No.1」などは、根拠を示せるときだけ使う(京都府の案内でも「数字の根拠は重要」とされています)
- 写真は、人が写っていて場面が想像できるものを1〜2枚添える
- 形容詞(すごい、画期的な)より、数字や事実で書く
- 問い合わせ先は、記者が連絡したときに確実につながる番号にする
送り先はどう選ぶ?
送り先は「その話題を、誰の読者・視聴者に届けたいか」で選びます。小さな会社の地域の話題なら、全国紙の本社より、地域を担当する支局や地元の媒体のほうが合っています。主な送り先は次のとおりです。
| 送り先 | 向いている話題 | 送り方のポイント |
|---|---|---|
| 市役所などの記者クラブ | 地域の話題やイベント | 受付のルール(部数・時間・形式)を事前に確認する |
| 新聞社の支局・総局 | 市や地域に根ざした話題 | 担当地域の支局に直接送る |
| 地元のテレビ局・ラジオ局 | 映像や音で伝わる話題(体験、作業の様子など) | 取材できる日時や場所をはっきり書く |
| 地域情報誌・フリーペーパー・地域のWebメディア | 新店舗、新商品、イベント | 各媒体の情報提供フォームや窓口を使う |
| 業界紙・専門誌 | 業界の中で新しい取り組み | 自社の業界を扱う媒体を選ぶ |
| 有料のプレスリリース配信サービス | 広く一度に届けたい話題 | 費用と配信先の範囲を確認してから使う |
最初から全部に送る必要はありません。まずは自社の地域の記者クラブと、地元の新聞社の支局、地域情報誌の3つほどから始めると、手間をかけすぎずに続けられます。
市役所の記者クラブに資料を届けるには
記者クラブとは、市役所や県庁などに置かれた、報道機関の記者が集まる部屋や団体のことです。資料を届けると、加盟する新聞社やテレビ局に配ってもらえます。たとえば西宮市の記者クラブへの情報提供のページでは、地域の話題やイベントなどの情報を、紙の資料15部で広報課へ持参または郵送する方法が案内されています。表紙に配布日と問い合わせ先を書くこと、受付は開庁日の午前9時から午後5時までであることなども示されています。
受付のルールは、自治体や記者クラブごとに違います。京都府の府政記者室の場合、営利を主な目的とするものなどは内容によって断ることがあると明記されています。市役所の記者クラブを使うときは、必ずその自治体のWebサイトで受付方法を確かめ、分からなければ広報の担当課に問い合わせてから届けましょう。
送る時期はどう決める?
イベントや発売日のある話題は、記者が取材の予定を立てられるよう、余裕をもって届けます。京都府の案内では、大きな事件・事故・行事があると紙面がそちらに割かれ、掲載される可能性が低くなるとして、時期とタイミングを考えるよう勧めています。地域の大きな行事や選挙の時期とぶつかっていないかも、カレンダーで確かめておきましょう。
送った後は何を準備しておく?
送った後は、記者からの連絡にすぐ応じられる状態にしておくことが大切です。京都府の案内でも、問い合わせ先に連絡がつかないと掲載のチャンスを逃すことがあるとして、記者と読者の両方からの問い合わせに備えるよう呼びかけています。
- 記者からの電話に出られる人と時間帯を決めておく
- 取材で聞かれそうなこと(始めたきっかけ、価格、今後の予定)を答えられるようにしておく
- 掲載後の問い合わせや予約を受けられるよう、電話・予約ページ・SNSの案内をそろえておく
- どこに、いつ送ったかを一覧に記録しておく
特に3つ目は見落とされがちです。せっかく記事を見た人が問い合わせようとしても、Webサイトに情報がなかったり、予約の方法が分かりにくかったりすると、そこで止まってしまいます。問い合わせが増えない原因の探し方は、問い合わせが増えない会社の「詰まり」の見つけ方でもまとめています。
配信後、WebサイトやSNSでどう活かす?
プレスリリースは、媒体に載らなくても自社の発信に使えます。J-Net21の解説でも、自社のWebサイトに同じ内容の記事を載せると、情報を求める人の目に留まりやすくなるとされています。1回作った文章を、次のように使い回しましょう。
| 載せる場所 | 使い方 |
|---|---|
| 自社Webサイトのお知らせ・ブログ | プレスリリースの内容をそのまま、または読みやすく書き直して載せる |
| Googleビジネスプロフィール | 「最新情報」や「イベント」の投稿として載せ、Google検索やマップで見た人に知らせる |
| Instagramなどの SNS | 写真を中心に、取り組みの背景や作っている様子を伝える |
| 店頭・チラシ | 記事に載った場合は、掲載された事実を伝える |
Googleビジネスプロフィールは、お店の情報をGoogle検索やGoogleマップに出す無料の仕組みです。Googleのヘルプによると、投稿には「最新情報」「特典」「イベント」の種類があり、ボタンを付けて予約ページや詳細ページへ案内することもできます。地域のお客様に知ってもらう入口としての使い方は、MEO対策とは?飲食店・整骨院・サロンが自分でできる最初の手順も参考にしてください。
記事に取り上げられたときは、「〇月〇日の〇〇新聞に掲載されました」とWebサイトやSNSで伝えるのがおすすめです。ただし、記事の画像や本文をそのまま載せたいときは、媒体ごとに利用の条件があるため、事前に確かめましょう。
取り上げられなかったときはどうする?
1回で取り上げられないのは、珍しいことではありません。京都府の案内にも、新聞掲載やテレビ取材を約束するものではないと明記されています。大事なのは、送ったことを無駄にせず、次の1本に活かすことです。
- 題材を見直す:自社の宣伝になっていないか、地域にとっての新しさが伝わるか
- タイトルを見直す:一文で何が起きるか分かるか
- 時期を見直す:大きな行事や出来事と重なっていなかったか
- 送り先を見直す:その話題を扱う媒体・担当に届いていたか
プレスリリースは、年に何度か新しい話題が出るたびに送り続けることで、記者に会社の名前を覚えてもらえることもあります。地域でのWeb集客全体の始め方は、西宮の小さな店のWeb集客、何から始める?でも紹介しています。
まとめ
小さな会社のプレスリリースは、宣伝ではなく「地域にとって新しい話題」を1つ選び、A4一枚にタイトル・リード文・5W1Hの本文・会社概要・問い合わせ先をまとめます。送り先は、その話題を扱う地域の記者クラブや新聞社の支局、地域情報誌などから絞り込み、受付のルールを確かめてから届けます。掲載されなくても、同じ内容を自社サイトやGoogleビジネスプロフィール、SNSに載せれば、知ってもらうきっかけとして残せます。
一方で、「どの話題を先に出すか」「プレスリリースと、SNSやWebサイト、紹介などのほかの集客をどう組み合わせるか」は、事業全体の状況を見ないと決めにくいところです。集客の手段が増えるほど、何から手をつけるかの優先順位づけに迷う経営者の方は多いと感じます。自社の強みや伝えたい題材を一度整理したい方は、外の目を入れて一緒に考える事業戦略顧問も選択肢の1つにしてみてください。
よくある質問
- 小さな会社でもプレスリリースを出してよいのですか?
- 出してかまいません。会社の規模より、話題が地域の人にとって新しく、知る価値があるかが大切です。小さな会社の地域の話題は、地元の媒体や記者クラブと相性がよいことも多いです。
- プレスリリースは何枚にまとめればよいですか?
- A4一枚にまとめるのが基本です。写真や詳しい資料を添えたいときは、別紙として付けます。一枚目だけで何の話か分かるようにしておきましょう。
- プレスリリースを出すのに費用はかかりますか?
- 媒体への掲載費はかかりません。記者クラブや新聞社に自分で届ける場合は、印刷代や郵送費などがかかる程度です。有料の配信サービスを使う場合は、そのサービスの料金がかかります。
- 市役所の記者クラブには、誰でも資料を届けられますか?
- 自治体や記者クラブによってルールが違います。部数や受付時間、受け付ける内容が決まっていることがあり、営利を主な目的とする内容は断られる場合もあります。事前にその自治体の広報担当課に確認しましょう。
- 取り上げられなかったプレスリリースは、無駄になりますか?
- 無駄にはなりません。自社のWebサイトのお知らせやGoogleビジネスプロフィールの投稿、SNSに同じ内容を載せれば、お客様に知ってもらうきっかけになります。題材やタイトルを見直して、次の1本に活かしましょう。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「プレスリリースを行う方法を教えてください。」/京都府「プレスリリース方法のご紹介」/西宮市「記者クラブへの情報提供」/Google ビジネス プロフィール ヘルプ(投稿の作成と管理)
