文責:藤田 泰仁
税理士の紹介パートナーとは、税理士事務所に顧問先候補をつなぎ、事前に決めた条件で紹介料を受け取る協力者で、税務の相談に答えたり契約を代わりに受けたりすることはできません。報酬は一回払い・継続払い・固定の3つの型から選び、成約の定義や顧客情報の扱いまで書面で決めてから始めるのが安全です。
税理士の紹介パートナーとは?「つなぐ」までが役割の協力者
税理士の紹介パートナーとは、税理士事務所に顧問先の候補となる事業者を紹介し、事前に決めた条件で紹介料などを受け取る外部の協力者のことです。法律で決まった呼び名ではなく、「提携パートナー」「紹介代理店」などと呼ぶ事務所もあります。大事なのは、パートナーができるのは「税理士につなぐ」ところまでという点です。税理士法第52条により、税理士でない人は税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)を行えません。国税庁のリーフレット「その税務相談、違法です」では、これに反すると2年以内の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられる場合があるとしています。報酬は一回払い・継続払い・固定の3つの型が基本で、成約の定義や顧客情報の扱いまで、契約前に書面で決めておくことが欠かせません。
「紹介パートナー」と似た言葉に、税理士紹介サービス(マッチングサイト)や、他の士業との業務提携があります。違いは3点で、誰が紹介するか、お金の流れ、紹介する側の立場です。
| 比べる点 | 紹介パートナー | 税理士紹介サービス(マッチング会社) | 他士業との業務提携 |
|---|---|---|---|
| 誰が紹介するか | 保険・不動産・Web制作・コンサルなど、事業者と日ごろ接点のある会社や個人 | 税理士の紹介を事業にしている会社 | 社労士・司法書士など別の資格を持つ専門家 |
| お金の流れ | 税理士事務所が、契約で決めた紹介料をパートナーに払うことが多い | 税理士事務所が、紹介手数料や掲載料をサービス会社に払うことが多い | 紹介料を払わず、お互いに案件を紹介し合う形もある |
| 紹介する側の立場 | 本業のお客様の困りごとをきっかけに、信頼できる税理士を紹介する | 複数の税理士を比べられる場を用意する | それぞれの資格の範囲で仕事を分け合う。紹介料のやり取りは各士業の規程の確認が必要 |
税理士の紹介パートナーは、どんな仕組みで動く?
紹介パートナーの仕組みは、紹介・面談・契約・報酬の4段階で動きます。パートナーが関わるのは主に最初の段階で、面談から先は税理士とお客様が直接進めるのが基本です。
- 紹介:パートナーが、税理士を探しているお客様の同意を得て、税理士事務所に連絡先と相談の概要を伝える
- 面談:税理士がお客様と直接話し、業務の範囲と顧問料を説明する
- 契約:お客様と税理士事務所が直接、顧問契約(業務の委嘱)を結ぶ
- 報酬:パートナー契約で決めた条件を満たしたら、税理士事務所がパートナーに紹介料を払う
3つ目の「直接」には理由があります。日本税理士会連合会が示す税理士会綱紀規則の準則(ひな形)の第10条第2項には「会員は、委嘱者から直接業務委嘱を受けなければならない」とあります。パートナーがいったん仕事を受けて税理士に回す形は避け、契約はお客様と税理士の間で結ぶ形にしておきましょう。
紹介パートナーは、どこまで話してよい?
紹介パートナーが話してよいのは「税理士を紹介すること」と「その事務所の特徴」までで、税金の計算や申告の中身に踏み込んだ助言はできません。ここでいう税理士業務とは、税理士法第2条が定める、税務代理(税務署への申告などを代わりに行うこと)、税務書類の作成、税務相談(税額の計算などの相談に応じること)の3つです。
国税庁のリーフレットは、税理士でない人に依頼すると、本来より高い税額で申告されたり、税務調査で追徴課税されたりするなど、不測の損害を受けるリスクがあると注意を呼びかけています。善意の「ちょっとしたアドバイス」でも、お客様に迷惑がかかるおそれがあるということです。
| 場面 | パートナーがしてよいこと | 避けること(税理士に任せる) |
|---|---|---|
| お客様から「税理士を探している」と言われた | 事務所の得意分野や対応地域を伝え、紹介してよいか同意を取る | 「この経費は落とせますよ」など、税金の扱いを答える |
| 決算や申告の時期が近い | 早めに税理士と面談する日を決める手伝いをする | 申告書を代わりに作る、数字を入れる |
| 税務署から連絡が来たと相談された | すぐ税理士に相談するよう伝え、つなぐ | 税務署とのやり取りを代わりに行う |
| 顧問料が気になると言われた | 料金は税理士から直接説明を受けるよう案内する | パートナーが値引きや料金を約束する |
紹介する税理士が本当に税理士かどうかも、最初に確かめておきます。同じリーフレットでは、税理士証票の提示を求めるか、日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」で確認する方法が案内されています。
紹介パートナーの報酬(紹介料)は、どう決める?
紹介料は「一回払い」「継続払い」「固定」の3つの型から選び、何をもって成約とするかを先に決めるのが基本です。金額の相場は公的な統計がなく、事務所の顧問料や紹介の手間によって大きく変わります。型ごとの向き・不向きを比べて決めましょう。
| 報酬の型 | しくみ | 向いている場面 | 決めておきたいこと |
|---|---|---|---|
| 一回払い(成約時の定額) | 顧問契約が成立したら、決めた金額を1回払う | 紹介の件数が少なく、管理を簡単にしたいとき | 「成約」は契約書の締結時か、初回の入金時か |
| 継続払い(顧問料の一定割合) | 顧問料の一定割合を、決めた期間だけ払い続ける | パートナーが紹介後もお客様と関係を続けるとき | 支払う期間の上限、途中で顧問料が変わったときの計算 |
| 固定(月額などの提携料) | 紹介の件数にかかわらず、決めた額を定期的に払う | セミナーの共催など、紹介以外の協力も含むとき | 協力の中身と、成果が出ないときの見直しの時期 |
金額を決めるときは、税理士事務所の側から「お客様1件を得るのにいくらまでかけられるか」を考えると話がまとまりやすくなります。顧問契約が平均でどのくらい続くか、広告やホームページで直接集客した場合にかかる費用と比べて、無理のない範囲に収めるのが現実的です。
税金の面でも、事前の取り決めは大切です。法人が、紹介を本業としていない相手に紹介料を払う場合について、国税庁の租税特別措置法関係通達61の4(1)-8は、あらかじめ結んだ契約に基づくこと、提供を受ける役務の内容が契約で具体的に明らかで実際に提供を受けていること、金額がその役務に照らして相当であること、などを満たせば交際費等にあたらないとしています。口約束の「お礼」ではなく、契約書で中身と金額を決めておきましょう。経理の扱いは、顧問の税理士に確認するのが確実です。
紹介パートナー契約の前に、何を確認すればいい?
契約前に確認したいのは、次の8項目です。どれも、あとで「言った・言わない」になりやすいところなので、書面に残しておきます。
| 確認する項目 | 決めておく中身 | 決めていないと起きやすいこと |
|---|---|---|
| 1. 紹介の範囲 | パートナーが話してよいこと・話さないこと | 善意の助言が税務相談にあたり、お客様に損害が出る |
| 2. 成約の定義 | 契約締結時か、初回入金時か、一定期間の継続後か | 報酬が発生したかどうかで揉める |
| 3. 報酬の額と支払期日 | 型、金額、支払う時期と方法 | 支払いが遅れる、計算方法の食い違いが起きる |
| 4. 契約期間と終了後の扱い | 期間、更新、解約の申し出方、終了後の継続報酬の有無 | 解約後も報酬が続くのかで揉める |
| 5. 顧客情報の扱い | 紹介前に本人の同意を取る方法、伝える情報の範囲 | 同意のない情報提供になり、お客様の信頼を失う |
| 6. 広告・発信のルール | パートナーがSNSやサイトで事務所を勧めるときの表示方法 | 広告であることを隠した表示になる |
| 7. 税理士側のルール確認 | 所属する税理士会の綱紀規則に照らして問題がないか | あとから契約の見直しが必要になる |
| 8. 苦情・トラブル時の窓口 | お客様からの苦情を誰が受け、どう共有するか | パートナーの本業の評判まで下がる |
顧客情報を税理士に渡す前に、本人の同意は必要?
必要です。個人情報保護法第27条第1項は、例外を除き「あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」と定めています。紹介の前に「〇〇税理士事務所に、お名前と連絡先、ご相談の概要をお伝えしてよいですか」と確かめ、同意を得た記録を残しておくと安心です。税理士の側にも、税理士法第38条で業務上知った秘密を守る義務があります。ただし紹介料の支払いのために、お客様の顧問料などをパートナーに伝える場合は、伝える範囲を契約で決めておきましょう。
パートナーがSNSで税理士事務所を勧めるときの注意点は?
紹介料をもらっている関係なら、広告であることが分かる形で発信するのが原則です。消費者庁のステルスマーケティング規制のページでは、2023年10月1日から、広告であることを隠す表示が景品表示法違反になったと説明しています。規制の対象は商品・サービスを提供する事業者(広告主)で、第三者に依頼・指示した表示も広告に含まれます。つまり、パートナーに発信を頼む税理士事務所の側が責任を負うことになるため、表示のルールを契約に入れておくと双方が安心です。
個人のパートナーに頼むとき、フリーランス法は関係する?
紹介を業務として個人に委託するなら、関係する可能性があります。公正取引委員会のフリーランス法特設サイトによると、従業員を使用していない事業者に業務を委託するときは、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面またはメールなどで直ちに明示する必要があり、口頭では認められません。支払期日は、給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定めるとされています。紹介パートナーの契約がこの「業務委託」にあたるかは中身によるため、迷うときは公正取引委員会の資料で確かめましょう。
紹介パートナーを始める前に、自社の事業との相性はどう確かめる?
相性は「本業のお客様が、もともと税理士を探しているか」で確かめます。紹介料を目的に始めると、お客様には「売り込まれた」と映りやすく、本業の信頼に響くことがあります。現場でよくあるのは、創業の相談に乗る会社や、店舗の開業を支える会社のように、お客様から「いい税理士を知らない?」と聞かれる機会がもともと多いケースです。こうした会社なら、紹介は本業のサービスの一部として自然に受け止めてもらえます。
- お客様から税理士について聞かれたことが、この半年で何回あったか
- 紹介した税理士がうまく対応できなかったとき、自社の評判にどう響くか
- 紹介料がなくても、お客様のために紹介したいと思える事務所か
- 紹介の手間(日程調整・その後の確認)を、本業の時間からどれだけ割けるか
代理店のように「他社の商品を売って報酬を得る」形との違いや注意点は、代理店ビジネスの仕組みと始める前に知る5つのリスクで整理しています。紹介パートナーも、報酬の構造は代理店とよく似ているため、あわせて確かめておくと判断しやすくなります。
税理士事務所の側で、紹介パートナー制度を新しい集客の柱にしようと考えている場合は、紹介だけに頼らない形も同時に考えておきたいところです。紹介と自社への直接の問い合わせを両立させる考え方は、紹介業者に頼らない集客は可能?紹介と直接集客を両立させる考え方にまとめています。顧問契約以外のサービスづくりから考えたい方は、顧問契約だけで伸び悩む士業へ|新サービスの始め方を3つの順番で解説も参考になります。
紹介パートナーの仕組みを自分で整えるとき、どこが難しい?
難しいのは、契約書の項目そのものより、「紹介を事業の中でどう位置づけるか」を決めるところです。実際に進めると、次のようなところで手が止まりやすくなります。
- 紹介料の金額を、本業の利益や集客にかける費用と比べて決められない
- 紹介を増やしたいのか、本業の満足度を上げたいのか、目的が定まらない
- 紹介のほかに、どの集客の入口を育てるべきか優先順位がつけられない
- 契約を作っても、紹介の記録や支払いの管理まで手が回らない
紹介パートナーの話から始まって、「そもそも自社はどんなお客様に、何を届けたいのか」という事業全体の整理に広がることも珍しくありません。報酬の型や契約の項目は、その答えが決まってはじめて選びやすくなります。
まとめ
税理士の紹介パートナーは、税理士につなぐところまでを担う協力者です。税務の相談に答えたり、契約を代わりに受けたりはせず、契約はお客様と税理士の間で直接結んでもらいます。報酬は一回払い・継続払い・固定の型から選び、成約の定義、支払期日、顧客情報の同意、発信のルールまで書面で決めてから始めるのが安全です。
とはいえ、紹介を自社の事業のどこに置き、ほかの集客や本業とどう組み合わせるかを一人で決めるのは簡単ではありません。当社の事業戦略顧問では、集客や業務改善も含めて、経営者と一緒に優先順位を整理し、実行まで伴走しています。紹介の仕組みを含めて事業の進め方を一度整理したいと感じた方は、気軽にご相談ください。
よくある質問
- 税理士に紹介料を払ってもらうのは違法ですか?
- 紹介料の授受そのものを一律に禁じる税理士法の条文は見当たりませんが、相手や形によっては問題になります。日本税理士会連合会の綱紀規則の準則では、税理士でないのに税理士業務を行う人などから業務のあっ旋を受けることを禁じています。各税理士会の規則も異なるため、税理士側に所属する税理士会のルールを確認してもらいましょう。
- 紹介パートナーが、お客様の簡単な税金の質問に答えてもよいですか?
- 答えず、税理士につなぎましょう。税務相談は税理士業務にあたり、税理士法第52条で税理士でない人は行えないと定められています。「詳しくは税理士に確認しましょう」と伝えて、面談の日程を決める手伝いをするのが安全です。
- 紹介料の相場はいくらですか?
- 公的な統計はなく、一律の相場は言えません。顧問料の水準、契約の続く期間、紹介の手間によって適切な額は変わります。税理士事務所が1件のお客様を得るのにかけられる費用から逆算して決めるのが現実的です。
- 他の士業(社労士や司法書士など)と紹介し合う場合も同じですか?
- 同じではありません。士業ごとに紹介料の授受について独自の規程があることがあるため、相手の士業の会の規程も確認が必要です。紹介料を払わずにお互いに案件を紹介し合う形を選ぶ事務所もあります。
- 紹介パートナー契約は口約束でもよいですか?
- 書面にしておくべきです。口約束だと、成約の定義や支払時期で揉めやすくなります。法人が支払う紹介料は、事前の契約がないと交際費等として扱われることがあり、個人に業務として委託するならフリーランス法で取引条件を書面などで示す必要もあります。
出典(2026年11月4日確認):e-Gov法令検索「税理士法」/国税庁「その税務相談、違法です~にせ税理士にご注意~」/日本税理士会連合会「〇〇税理士会綱紀規則(準則)」/国税庁「租税特別措置法関係通達 第8章 交際費等の課税の特例」/e-Gov法令検索「個人情報の保護に関する法律」/消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法」/公正取引委員会「フリーランス法特設サイト」
