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10%割引なら客数は何%増やす?損益分岐点の計算式と粗利率別の早見表

2026.11.07・集客・営業

文責:藤田 泰仁

10%割引で粗利を減らさないために必要な客数の増加率は「割引率÷(粗利率−割引率)」で求められ、粗利率60%なら20%、40%なら33.3%、20%なら100%です。再来店を見込むときは、単発の赤字額と回収の期限を先に決め、自店の実績で確かめながら続けるかを判断しましょう。

10%割引で粗利を減らさないために必要な客数の増加は、粗利率60%なら20%、40%なら33.3%、20%なら100%です。計算式は「必要な客数の増加率=割引率÷(粗利率−割引率)」で、粗利率は売上のうち原価を引いて残る割合を指します。この式は、中小機構J-Net21が示す損益分岐点販売量の考え方(固定費÷1個あたりの利益)を、割引の判断に当てはめたものです。

割引でお客様が動く心理は「割引が効くのはなぜ?クーポンと期間限定の心理効果を小さな店向けに解説」にまとめています。この記事はその続きとして、割引しても利益が残るかを計算する実務に絞って説明します。

割引の損益分岐点はどう計算する?(要点)

割引の損益分岐点は、割引前と同じ粗利の総額を残すために必要な客数のことです。求め方は「割引前の粗利総額÷割引後の1人あたり粗利」です。増加率だけなら「割引率÷(粗利率−割引率)」で出せます。割引しても原価は下がらないので、割引分はそのまま粗利から減ります。たとえば客単価5,000円、粗利率60%、月200人の店が10%割引をすると、1人あたり粗利は3,000円から2,500円に減り、必要な客数は240人です。割引率が粗利率以上なら、客数を増やしても粗利は戻りません。再来店を見込むときは、低めの見込みでも耐えられるかを確かめます。

10%割引なら客数は何%増やす?粗利率別の早見表

10%割引で必要な客数の増加率は、粗利率80%で14.3%、50%で25%、30%で50%です。粗利率が低いほど、同じ割引でも必要な客数は急に増えます。

粗利率\割引率5%10%15%20%30%50%
20%33.3%100%300%回収不可回収不可回収不可
30%20%50%100%200%回収不可回収不可
40%14.3%33.3%60%100%300%回収不可
50%11.1%25%42.9%66.7%150%回収不可
60%9.1%20%33.3%50%100%500%
70%7.7%16.7%27.3%40%75%250%
80%6.7%14.3%23.1%33.3%60%166.7%
全員に割引し、原価は変わらず、追加費用がない場合の計算例です(小数第2位を四捨五入)。「回収不可」は割引後の粗利が0以下になる組み合わせです。実際の必要客数は、自店の数字で計算してください。

増加率が100%なら、客数が2倍になってようやく割引前と同じ粗利です。表の数字は「これだけ増える」という予測ではなく、「これだけ増えないと粗利が減る」という最低ラインです。自店の数字で試す手順は、次の5段階です。

  1. 粗利率を出す … 割引する商品やメニューの粗利率を、実績から計算する
  2. 条件と費用を決める … 割引率、対象、期間、チラシ代などの追加費用を書き出す
  3. 必要な客数を計算する … 店の席数や予約枠で受けられるかも確かめる
  4. 再来店を見積もる … 単発の赤字を、何回の再来店で回収するかに直す
  5. 答え合わせをする … 実施後の実績を計画と比べ、続けるかを決める

通常の損益分岐点と割引の損益分岐点は何が違う?

違いは「基準」と「式に入れる数字」の2点です。損益分岐点とは、J-Net21の解説では利益がゼロになる売上の規模のことです。一方、この記事で計算するのは、割引前と同じ粗利を残すための客数です。

比べる点通常の損益分岐点割引の損益分岐点
基準利益がゼロになる点割引前と同じ粗利が残る点
式に入れる数字固定費と限界利益率割引前の粗利総額と割引後の1人あたり粗利
計算式固定費÷限界利益率割引前の粗利総額÷割引後の1人あたり粗利
答える問い赤字にならない売上はいくらか割引しても粗利が減らない客数は何人か

粗利と限界利益はどう使い分ける?

粗利とは売上から売上原価を引いた利益で、限界利益とは売上から変動費を引いた利益です。変動費は、売上に応じて増減する費用を指します。まずは粗利率で計算し、売上に連動する費用が大きい店は限界利益率に置き換えるのがおすすめです。

原価以外に売上に連動する費用には、決済手数料、クーポンサイトの成果報酬、売上に応じた歩合給などがあります。こうした費用が大きいのに粗利率で計算すると、必要な客数を少なく見積もります。なお、日本政策金融公庫の創業者向けコラム(2023年3月22日掲載)でも、売上原価を変動費として売上総利益率で損益分岐点を計算する例が紹介されています。

割引で必要な客数を求める式は?

必要な客数は「割引前の粗利総額÷割引後の1人あたり粗利」で求めます。増加率だけを知りたいときは、3つ目の式が早道です。

  1. 割引後の1人あたり粗利=客単価×(粗利率−割引率)
  2. 必要な客数=割引前の粗利総額÷割引後の1人あたり粗利
  3. 必要な客数の増加率=割引率÷(粗利率−割引率)

3つ目の式は、1人あたり粗利が「粗利率」から「粗利率−割引率」に減る分を、客数で埋めると考えて導いたものです。海外の価格戦略の解説でも、粗利に近い貢献利益率60%で20%値下げすると、数量は50%増が必要という例があり、早見表の数字と一致します。

客単価5,000円・粗利率60%の店の計算例

この例では、10%割引で必要な客数は200人から240人に増えます。下の表は説明のための計算例で、実在の店の数字ではありません。

項目割引前10%割引後
客単価5,000円4,500円
1人あたり原価2,000円2,000円
1人あたり粗利3,000円2,500円
客数200人240人
売上100万円108万円
原価の合計40万円48万円
粗利の総額60万円60万円
計算の例です。検算:式では10÷(60−10)=20%で、200人×1.2=240人。表では108万円−48万円=60万円で、割引前の粗利と一致します。

注目したいのは、売上が8%増えても粗利は同じという点です。客数が230人で止まると、売上は103万5,000円と3.5%増えるのに、粗利は57万5,000円と2万5,000円減ります。現場でよくあるのが、この「売上は増えたのに、手元に残るお金は減った」という状態です。割引の結果は、売上ではなく粗利で確かめましょう。

この式が成り立つ3つの前提は?

式が使えるのは、次の3つが成り立つ場合です。当てはまらないときは、手順3の式で調整します。

  • 割引してもお客様が買う内容は変わらず、1人あたりの原価が同じ
  • 割引がなくても来たはずのお客様を含めて、全員が割引を使う
  • チラシ代や掲載料などの追加費用がかからない

手順1:自店の粗利率はどう出す?

この段階のゴールは、割引する商品やメニューの粗利率を1つの数字にすることです。

  • 直近の月の売上と売上原価を、会計ソフトやレジ、仕入れの請求書から書き出す
  • 「(売上−売上原価)÷売上」で粗利率を計算する
  • 割引の対象が一部の商品なら、対象だけの粗利率も出す

たとえば売上180万円、売上原価63万円なら、粗利は117万円で、粗利率は65%です。10%割引なら、10÷(65−10)で必要な増加率は約18.2%です。税込と税抜の金額を混ぜると粗利率がずれるので、どちらかにそろえてください。

店全体の粗利率だけで計算すると、判断を誤ることがあります。全体が60%でも、割引する商品が40%なら、必要な増加率は20%ではなく33.3%です。もともと200人に売れている商品なら、240人と約267人で27人の差が出ます。

手順2:割引の条件と追加費用はどう書き出す?

この段階のゴールは、割引のために新しく出ていくお金を、計算に入れられる形にすることです。

  • 割引率、対象のお客様、対象の商品、期間を1行で書く
  • チラシの印刷・配布、クーポンの掲載料、臨時の人手など、割引のために増える費用を足す
  • 決済手数料や成果報酬など売上に連動する費用は、1人あたり粗利から引く

定額割引は、客単価で割ると割引率に直せます。客単価5,000円で500円引きなら10%です。整骨院やサロンのように売上原価が小さい業種は、粗利率が高く出ます。その分、予約枠が埋まって人を増やすなら、その人件費も追加費用に入れます。

手順3:一部の客だけ割引なら、必要な客数は何人?

この段階のゴールは、増やす必要がある人数を出し、店で受けられるかを確かめることです。一部の客だけが割引を使う場合や追加費用がある場合は、次の式を使います。

追加で必要な客数=(割引がなくても来たはずで割引を使う人数×割引額+追加費用)÷割引後の1人あたり粗利

  • 割引がなくても来たはずで、割引を使いそうな人数を見積もる
  • 式に入れて、追加で必要な客数を計算する
  • 必要な客数を営業日数で割り、空いている席や予約枠に入るかを確かめる
条件(客単価5,000円・10%割引)計算追加で必要な客数
全員が割引を使う、追加費用なし(200人×500円)÷2,500円40人
全員が割引を使う、追加費用3万円(200人×500円+3万円)÷2,500円52人
もともと来る40人が割引を使う、追加費用3万円(40人×500円+3万円)÷2,500円20人
もともと来る人は誰も使わない、追加費用3万円3万円÷2,500円12人
粗利率60%、割引前は月200人とした計算の例です。1行目の40人は、計算例の240人−200人と一致します。

「新規限定」にしても、割引がなくても来たはずの新規客は割引を使います。過去の同じ時期の新規客数を目安に、その人数を計算に入れてください。

追加の40人を月25日の営業で受けるなら、1日あたり1.6人です。すでに満席の時間帯に割引しても客数は増えず、割引の分だけ粗利が減ります。空いている時間帯や予約枠に限ると、計算と実態が合いやすくなります。

手順4:再来店を見込むなら、何回戻れば元が取れる?

回収に必要な再来店の回数は「単発の赤字額÷通常価格での1回あたり粗利」で求めます。この段階のゴールは、期待を回数に置き換え、低めの見込みでも耐えられるかを確かめることです。

  • 割引で来た新規客だけの単発の損益を計算する
  • 赤字を回収するのに必要な再来店の回数を出す
  • 回収の期限と、許容できる赤字額を先に決める

計算の例です。客単価3,000円、粗利率50%の店が、新規客限定で20%割引をします。追加費用は8万円で、割引がなければ来なかった新規客が50人来たとします。割引後の1人あたり粗利は900円なので、初回の粗利は50人×900円で4万5,000円です。8万円を引くと、単発では3万5,000円の赤字です。通常価格での1回あたり粗利は1,500円なので、3万5,000円÷1,500円=約23.3で、回収には24回の再来店が必要です。

再来店する人(50人中)1人の平均回数再来店の合計再来店の粗利単発の赤字を含む損益
10%(5人)2回10回1万5,000円−2万円
20%(10人)2回20回3万円−5,000円
20%(10人)3回30回4万5,000円+1万円
40%(20人)3回60回9万円+5万5,000円
再来店は通常価格で、追加の費用はかからないとした計算の例です。実際の再来店率を示すものではありません。

同じ施策でも、再来店の見込みによって損益は−2万円から+5万5,000円まで、7万5,000円も動きます。単発の赤字3万5,000円は、新規客1人あたり700円です。これを「新規客を1人迎える費用」として払えるかどうかで考えると、判断しやすくなります。

再来店の見込みに頼ると何が危ない?

見込みに頼る危険は、計算上は黒字のまま、手元のお金だけが減っていくことです。最初の対策は、既存客の再来店率をそのまま使わず、割引で来た客だけを分けて数えることです。

割引で来た客が同じように戻るとは限りません。新聞社とオンライン食料品店の顧客データを分析したLewisの論文(2006年、Journal of Marketing Research)では、獲得時の割引が大きいほど再購入率と顧客の長期的な価値が低くなる関係が見られました。35%割引で獲得した客の長期的な価値は、販促なしで獲得した客のおよそ半分とされています。

米国の割引サイトを使った324業者への調査(ライス大学の2011年6月14日の発表)では、利益が出たのは55.5%、損失は26.6%で、割引客のうち通常価格で再購入した人は19.9%でした。業種別に利益が出た割合は、レストラン・バーが43.6%、サロン・スパが53.7%です。どちらも海外の特定の条件での結果なので、小さな店の目安としてそのまま使うのではなく、「自店の実績で確かめる理由」として受け止めてください。

危険何が起きるか最初の対策
既存客の再来店率をそのまま使う回収の見込みが甘くなる割引で来た客だけを分けて数える
再来店のたびに割引する通常の粗利で計算した回収が成り立たない再来店分も割引後の粗利で計算し直す
もともと来る客を「増えた客」に数える割引の効果を大きく見積もる過去の同じ時期の客数と比べる
回収の期限を決めない「そのうち戻る」と赤字の施策を続ける期限と、やめる基準を始める前に書く
回収までのお金を考えない費用が先に出て、資金繰りが苦しくなる許容できる赤字額の上限を先に決める

再来店の実績がまだない店は、再来店ゼロでも許容できる赤字額に収めると安全です。たとえば先の例なら、3万5,000円を失っても困らないかを先に考えます。

手順5:割引のあとはどう答え合わせをする?

この段階のゴールは、計画と実績を比べて、続けるか、変えるか、やめるかを決めることです。

  • 割引した期間の客数、割引の利用数、売上、粗利を計画と並べる
  • 割引で来た客の再来店を、期限まで数える
  • 粗利が計画に届いたか、外れた理由は何かを1行で書く
見る数字計画の例判断のしかた
客数240人届かないなら、割引の条件か告知を見直す
粗利の総額60万円割引前を下回るなら、次回は条件を変える
再来店の回数期限までに24回届かないなら、再来店の前提を下げて計算し直す
表の数字は、この記事の計算例をもとにした記入例です。自店の数字に置き換えてください。

再来店を数えるには、誰がいつ来たかの記録が要ります。記録の作り方は「飲食店・整骨院・サロンのリピーターを増やす方法|顧客台帳の作り方」を参考にしてください。毎月の見直しに組み込むなら、「小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方」の表に、割引の欄を足すと続けやすくなります。

必要な客数が多すぎるときは、割引の代わりに何を比べる?

値引き額ではなく、店が実際に負担する金額で比べます。同じ計算で、割引率を下げた場合や特典に変えた場合の最低ラインを出せます。

施策(客単価5,000円・粗利率60%)1人あたり負担1人あたり粗利必要な客数の増加率
10%割引500円2,500円20%
5%割引250円2,750円9.1%
原価200円の特典をつける200円2,800円7.1%
全員に適用し、追加費用がない場合の計算の例です。

ただし、最低ラインが低いほど良い施策とは限りません。お客様を動かす力は施策ごとに違うからです。最低ラインが現実的な施策を選び、1週間だけ、または1つの配布先だけで小さく試してから広げると、外れたときの損を抑えられます。

よくある質問

10%割引をしたら、客数は何%増やせばいいですか?
粗利率によって変わり、60%なら20%、50%なら25%、40%なら33.3%、30%なら50%、20%なら100%です。全員に割引し、追加費用がない場合は「10÷(粗利率−10)」で計算できます。
粗利率が割引率より低いとどうなりますか?
割引後の粗利がマイナスになるので、売るほど粗利が減ります。粗利率と割引率が同じ場合も粗利はゼロで、客数を増やしても割引前の粗利には戻りません。
粗利率と限界利益率のどちらで計算すればよいですか?
まずは粗利率で十分です。決済手数料、成果報酬、歩合給など売上に連動する費用が大きい店は、それらも引いた限界利益率で計算すると実態に近づきます。
500円引きのような定額割引でも計算できますか?
計算できます。割引額を客単価で割って割引率に直してください。客単価5,000円で500円引きなら10%で、同じ式を使えます。
再来店で取り戻せるなら、単発で赤字の割引をしてもよいですか?
自店の再来店の実績があり、赤字額の上限と回収の期限を決められるなら、判断できます。実績がないときは、再来店がなくても許容できる赤字額に収めると安全です。

まとめ:10%割引は粗利率から逆算して決める

割引を決める前に、まず粗利率と割引率を式に入れてみてください。必要な客数が店で受けられる人数か、再来店が少なくても耐えられるかを確かめれば、「なんとなくの割引」は減らせます。

計算そのものは自分でできます。一方で、割引と値付け、集客、業務の見直しのどれを先に動かすかは、数字だけでは決めにくいものです。事業全体を整理して優先順位をつけたいときは、事業戦略顧問で専門家と一緒に考える方法もあります。

出典(2026年11月7日確認):独立行政法人中小企業基盤整備機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」/日本政策金融公庫「第6回 赤字にならない売上はいくら? 損益分岐点売上高と売上高目標」(2023年3月22日)/Impact Pricing「Break Even Volume Calculator」/Lewis, M. (2006) Customer acquisition promotions and customer asset value, Journal of Marketing Research 43(2)の書誌・要旨/Rice University, EurekAlert!(2011年6月14日)

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