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松竹梅の法則でメニュー価格を決める手順|飲食店・サロンの3段階例

2026.11.08・集客・営業

文責:藤田 泰仁

松竹梅の法則でメニュー価格を決めるときは、先に竹にしたい商品を決め、梅と松の中身を作ってから、3つとも粗利が残る価格を確かめて載せます。真ん中が選ばれやすい傾向は研究で確かめられていますが、一人客では確認されなかった研究もあるため、変更前後の注文数と粗利を見て続けるかどうかを判断してください。

松竹梅の法則とは、価格や内容が3段階に並ぶと、両端を避けて真ん中を選ぶ人が増えやすい傾向のことで、研究では「妥協効果」や「極端の回避」と呼ばれます。ただし、竹が一番売れると決まっているわけではありません。ドイツの専門料理店の注文データを分析した研究では、メニュー変更で中間の選択肢になった料理のシェアは平均で約5%増えた一方、一人客では統計的に意味のある差が出ませんでした(Pingerほか「The Compromise Effect in Action」IZA Discussion Paper No.9648、2016年1月)。

松竹梅の法則でメニュー価格を決めるには?(要点)

メニュー価格を松竹梅で決めるときは、先に「竹」にしたい商品を決め、次に梅と松の中身を作り、最後に3つとも粗利が残る価格を確かめます。粗利とは、売上から材料費など直接かかった費用を引いた残りのことです。一定の倍率で機械的に価格を決めるやり方は、今回調べた研究では裏づけを確認できませんでした。効きやすいのはグループのお客様で、商品を見比べにくい初めてのお客様にも向くと考えられます。一人客や、指名買いの常連客が中心の店では、大きな変化を期待しすぎないほうが安全です。変更後は、段階ごとの注文数と1組あたりの粗利を比べて、続けるか直すかを決めます。

松竹梅の法則でメニュー価格を決める手順は?全5段階

手順は次の5段階です。竹の中身を先に決めて、金額は後から決めるのがポイントです。

  1. 3段階にする商品を1つ選ぶ … 注文数を数え、まず1カテゴリに絞る
  2. 竹にする内容を決める … 粗利と手間を見て、いちばん選んでほしい内容を置く
  3. 梅と松の中身を作る … 同じ物差しで違いが分かるようにする
  4. 3つの価格を決める … すべてに粗利が残るかを確かめる
  5. 価格表に載せて数える … 税込で並べ、変更前後の数字で判断する

松竹梅の法則が効く条件と効かない条件は?

効くかどうかの違いは「誰と選ぶか」「比べる材料が足りているか」「買わない道があるか」の3点です。研究で確かめられたことと、店での読み替えを表にしました。読み替えの列は研究結果そのものではなく、実務上の判断です。

条件研究で分かっていること店での読み替え
効きやすい:グループで選ぶレストランの分析で、効果が特に大きかった(Pingerほか)家族連れや会食の利用が多い飲食店
効きやすい:比べる情報が足りず迷う情報が一部欠ける実験で、真ん中の選択率が大きく伸びた(Chuangほか)初めてのお客様、違いが分かりにくいサービス
効きにくい:一人で選ぶ一人客では統計的に意味のある差が出なかった(Pingerほか)一人客が中心の店は、大きな変化を見込まない
効きにくい:「どれも選ばない」を選べる選ばない道を認めると、真ん中の選択率が下がった(Chuangほか)予約前に他店と比べられるWebの価格表
効きにくい:足りない情報を自分で補う推測を促すと、真ん中の伸びが小さくなった(Chuangほか)常連客や、その商品に詳しいお客様
弱まる:実際に代金を払う効果は残るが、架空の選択より有意に小さい(Müllerほか)アンケートや実験の数字を売上予測に使わない
「店での読み替え」は研究結果をもとにした実務上の判断で、調査で確かめられた数値ではありません。

真ん中が選ばれやすい傾向そのものは、繰り返し確かめられています。142件の実験結果をまとめたメタ分析(複数の研究を統合して全体の傾向を見る方法)では、真ん中の選択肢が他より有意に多く選ばれたと報告されています(Neumannほか「A meta-analysis of extremeness aversion」Journal of Consumer Psychology、2016年)。同じ分析では、品質の高い選択肢を上に足す場合や、実用目的の商品、数字で表しにくい特徴で比べる場合に現れやすいことも示されています。

一方で、効果の大きさは条件で大きく変わります。学生252人が架空の買い物をした実験では、掃除機の真ん中の商品の選択率は、2択から3択にしたとき、情報がそろう条件で50%から67%へ、情報が一部欠ける条件で47%から83%へ伸びました。推測を促すと、この伸びは39ポイントから15ポイントに縮みました(Chuangほか「The effect of incomplete information on the compromise effect」Judgment and Decision Making、2012年)。

実際に代金を払う実験でも効果は残りましたが、架空の選択より有意に小さくなりました(Müllerほか「Fact or artifact?」Journal of Retailing and Consumer Services、2010年)。冒頭のレストランの約5%も1店の分析なので、どの店でも同じ幅になるとは言えません。

松竹梅の法則とデコイ効果・アンカリングの違いは?

違いは「足す選択肢の役割」と「動く判断」の2点です。松竹梅は真ん中に置くこと自体で選ばれやすくする考え方で、見劣りする商品を混ぜるデコイ効果や、最初の数字を基準にするアンカリングとは別の仕組みです。

名前何が起きるか価格表での例
松竹梅の法則(妥協効果)両端を避けて、中間が選ばれやすくなる上下の段階を足し、主力を真ん中に置く
デコイ効果(魅力効果)明らかに見劣りする選択肢を足すと、比べられた別の選択肢が選ばれやすくなる内容が少ないのに価格がほぼ同じ商品を並べ、本命を良く見せる
アンカリング最初に見た数字が判断の基準になる先に松を見せると、竹が手頃に感じられる

国内でも、大学生145人の実験で妥協効果を含む3つの効果が確認されています。ただ、妥協効果の条件で足した選択肢は、選ばれる割合が高い一方、確信度(自分の選択にどれだけ自信があるか)は低く、選ぶのに時間がかかりました(都築ほか「多属性意思決定における類似性効果,魅力効果,妥協効果に関する多測度分析」心理学研究83巻5号、2012年)。真ん中を選んだお客様が納得しているとは限らないので、価格表には竹を選ぶ理由を書いておきたいところです。

アンカリングや損失回避など、価格の見え方に関わる心理の説明はここでは省きます。詳しくは割引が効くのはなぜ?クーポンと期間限定の心理効果を小さな店向けに解説で整理しています。

段階1:3段階にする商品はどう選ぶ?

この段階のゴールは、3段階にする商品を1つに絞ることです。

  • 商品別の注文数・予約数を、伝票や予約履歴から数える
  • お客様が1回に1つ選ぶ商品(定食・コース・施術など)を候補にする
  • 最初に変えるのは1カテゴリだけにする

全メニューを一度に変えると、何が効いたのか分からなくなります。現場でよくあるのは、価格表全体を作り直したあとで、効果を測れなくなるケースです。一品料理やドリンクのように組み合わせて頼む商品は、3つから1つを選ぶ形になりにくいので、後回しで構いません。

段階2:竹にする商品はどう決める?

この段階のゴールは、いちばん選んでほしい内容を竹として1つ決めることです。今売れている商品をそのまま竹にするのではなく、粗利と手間を見て決めます。

  • 候補の粗利と、提供にかかる手間を書き出す
  • 今の主力商品を「竹」と「梅」のどちらに置くか決める
  • 竹を選ぶ理由を一文で書く

今の主力の置き方による違いは、「客単価を上げたいのか」「入口を広げたいのか」の1点です。客単価とは、お客様1人(1組)が1回に支払う金額のことです。

置き方向いている狙い注意点
今の主力を梅にして、上に2つ足す客単価を上げたい今の価格は変わらないので値上げに見えにくい。上の段階が選ばれなければ変化は出ない
今の主力を竹にして、上下に1つずつ足す安い入口を作りたい、高い印象を和らげたい今のお客様が梅に流れ、客単価が下がるおそれがある

主力を竹にするなら、梅に流れたときの損を先に計算します。説明用の仮の数字で、粗利1,020円の主力が月100食売れているとしましょう(粗利は月102,000円)。粗利650円の梅を新しく作って30食が流れると、粗利は月90,900円になり、11,100円減ります。粗利1,400円の松に竹から移ってもらう場合、1食で増える粗利は380円なので、埋めるには約30食の移動が必要です。

段階3:梅と松の中身は何を変える?

この段階のゴールは、3つの違いが同じ物差しで一目で分かる状態にすることです。

  • 比べる項目を1〜2個に絞る
  • 梅は「これで十分」と思える内容にする
  • 松は実際に提供できる内容だけにする
業種差をつけやすい項目避けたい差のつけ方
飲食店品数、主菜の食材、デザートの有無料理が3つとも別物で、比べられない
サロン施術時間、デザインの数、ケアの範囲「より効く」など、効果の強さを段階の差にする

売るつもりのない松を置くと、信頼を損ない、表示の問題にもなりえます。実際には用意がない商品や、取引する意思がない商品を広告すると、景品表示法の「おとり広告」に当たるおそれがあります(消費者庁の景品表示法関係ガイドライン一覧に運用基準が掲載。類型の説明はTKCの解説。2026年11月8日確認)。最初の対策は、松の材料と予約枠を実際に確保し、数量が限られるなら「1日3食まで」のように具体的に書くことです。

段階4:松竹梅の価格はどう決める?

この段階のゴールは、3つとも利益が残る価格を決めることです。

  • 税抜の売価から原価を引いて、粗利を出す
  • 時間のかかる施術やコースは、1時間あたりの粗利も出す
  • 価格差が中身の差に見合っているかを確かめる

原価とは、その商品を作るのに直接かかる材料費などのことです。竹の粗利が梅より小さいと、竹が売れるほど利益が減ります。松竹梅の見た目より先に、この順番が崩れていないかを見てください。

価格の比率には、確かめられた正解がありません。一定の倍率で決める方法を見かけますが、今回調べた研究の範囲では、飲食店やサロンで最適な倍率を示したものは確認できませんでした。先ほどのChuangらの実験では、両端の商品が真ん中から同じ距離になるよう設計されています。実務では、差を開きすぎると比べてもらいにくくなると考え、中身の差で説明できる幅に収めるのが現実的です。

段階5:価格表にどう載せて、効いたかをどう確かめる?

この段階のゴールは、3段階を同じ形式で見せ、続けるか直すかを数字で決めることです。

  • 税込価格を同じ形式で横に並べる
  • 竹を選ぶ理由を、事実で書く
  • 変更前後で、段階ごとの注文数と1組あたりの粗利を比べる

お客様にあらかじめ価格を示すときは、消費税を含む税込価格の表示が義務です。店頭の表示やチラシなど、媒体は問いません(国税庁タックスアンサーNo.6902「『総額表示』の義務付け」、令和8年4月1日現在法令等、2026年11月8日確認)。税率や表示の特例は変わることがあるので、価格表を作り直すときは同じページを確かめてください。

竹の理由には、「小鉢がつくので、初めての方でも店の味を一通り試せます」のように中身を書きます。「一番人気」は、実際の注文数で言えるときだけ使いましょう。完全予約制の店なら、コースの違いを予約ページにも同じ形で載せておくと、予約前に比べてもらえます。予約までの流れは完全予約制の飲食店の集客|グルメサイトに頼らず予約が入る導線の作り方で順番に解説しています。

効果は、同じ曜日・同じ長さの期間で、変更の前後を比べます。値上げやキャンペーンと同時に行うと、原因を切り分けられません。

起きたこと考えられる理由次の一手
竹が増え、1組あたりの粗利も増えた狙いどおりに比べてもらえている続ける。次のカテゴリを検討する
梅に流れて、粗利が減った梅の内容が十分すぎる、竹の理由が弱い梅の内容か、竹の説明を見直す
松がほとんど出ない中身の差が伝わっていない、客層に合っていない竹が増えているなら残す。増えていなければ中身を変える
ほとんど変化がない一人客が中心など、効きにくい条件に当たっている3段階にこだわらず、商品の中身を見直す

数字を毎月同じ形で残しておくと、次の判断が楽になります。残し方は小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方が参考になります。

飲食店の価格表はどう3段階にする?昼定食の仮の例

昼定食なら、小鉢とデザートの有無で差をつけると、3つを比べやすくなります。次の金額はすべて説明用の仮の数字です。実際の価格は、お店の原価と客層で計算してください。

段階内容税込価格(仮)税抜価格(仮)原価(仮)粗利(仮)
梅季節の定食(主菜・ご飯・汁物)1,100円1,000円350円650円
竹季節の定食+小鉢2品・デザート1,650円1,500円480円1,020円
松特選主菜の定食+小鉢3品・デザート・食後の飲み物2,420円2,200円800円1,400円
金額はすべて説明用の仮の数字です。税率10%で計算しています。

この例では、竹の粗利は梅より370円多いので、竹が選ばれるほど利益が増える形になっています。松は特選の食材を用意するぶん、仕入れの無駄が出ないよう、数量を決めて提供するのが現実的です。

サロンの価格表はどう3段階にする?ネイルの仮の例

サロンは段階が上がると施術時間も延びるので、粗利の額だけでなく1時間あたりの粗利も比べます。次の金額も説明用の仮の数字です。

段階内容時間(仮)税込価格(仮)税抜価格(仮)材料費(仮)粗利(仮)1時間あたり粗利(仮)
梅ワンカラー60分5,500円5,000円300円4,700円4,700円
竹ワンカラー+アート2本80分7,700円7,000円500円6,500円4,875円
松定額デザイン+ハンドケア120分11,000円10,000円900円9,100円4,550円
金額と時間はすべて説明用の仮の数字です。税率10%で計算しています。

この例では竹の1時間あたり粗利が最も高く、松は1回の粗利は大きいものの、1時間あたりでは最も低くなります。一人で施術する店では、松が増えると1日に受けられる予約が減ることがあります。予約枠が埋まっている時期と空いている時期で、どの段階を増やしたいかを考えておきましょう。

松竹梅の価格表でよくある質問

真ん中がいちばん売れると考えてよいですか?
いいえ、選ばれやすくなる傾向はありますが、いちばん売れるとは限りません。効果の大きさは客層や選び方の条件で変わるため、変更前後の注文数で確かめてください。
一人客が多い店でも3段階にする意味はありますか?
意味はありますが、真ん中が選ばれやすくなる効果は期待しすぎないほうが安全です。レストランの分析では、一人客で統計的に意味のある差が出ませんでした。内容の違いを分かりやすく見せる目的で使うとよいでしょう。
松がほとんど売れません。外してもよいですか?
すぐに外さず、竹の注文数が変わったかを見てから決めましょう。松が売れなくても竹が増えているなら、残す理由があります。竹も増えていなければ、松の中身か見せ方を変えます。
3段階にするのと同時に値上げしてもよいですか?
分けて行うほうが判断しやすくなります。同時に変えると、注文の変化が価格のせいか並べ方のせいか切り分けられないためです。
4段階以上にしてもよいですか?
最初は3段階で始めるのがおすすめです。段階が増えるほど違いの説明が難しくなり、どの段階が効いたのかも見えにくくなります。これは実務上の判断で、最適な段階数を示す研究を確認したものではありません。

松竹梅の価格表を作ったあと、次は何を決める?

価格表ができたら、次は店全体の優先順位を決めます。どの商品の粗利を伸ばすのか。どの客層を増やしたいのか。集客や予約の流れは、その価格に合っているのか。一つひとつは考えられても、順番を決めて店を回しながら進めるのは、なかなか大変です。

合同会社well coの事業戦略顧問では、商品や価格の設計、集客、業務改善の優先順位を整理し、実行まで経営者の方と一緒に進めています。「価格表だけでなく、事業全体を一度整理したい」と感じたときの相談先の一つとして、ご覧いただければと思います。

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