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Web制作のクロスセル商材は何を選ぶ?納品後の困りごとから決める順番

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

Web制作のクロスセル商材は、売りたいものからではなく、納品後にお客様から何度も出る困りごとから選ぶのが基本です。困りごとを集めて分け、自社でやるか・提携か・紹介かを決め、法令と権限を確かめてから1社で小さく試す、という順番で進めると失敗しにくくなります。

Web制作のクロスセル商材は「納品後に何度も出る困りごと」から選ぶ

Web制作のクロスセル商材は、納品後にお客様から何度も出る困りごとを解決するものから選ぶのが基本です。クロスセルとは、すでに取引のあるお客様に、関連する別の商品やサービスをあわせて提案することです。困りごとの代表が、サイトを安全に保つ管理です。IPA(情報処理推進機構)の2024年度の調査では、中小企業がセキュリティ対策の課題として最も多く挙げたのが「対策費用の用意、費用負担の検討」で、51.3%でした([IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」2025年5月27日公開](https://www.ipa.go.jp/security/reports/sme/sme-survey2024.html))。お客様が自力で手を回せず、お金のかけ方にも迷う分野ほど、制作会社が引き受ける意味があります。

この記事は、少人数の制作会社やフリーランスのWeb制作者に向けて、制作のあとに何を提案すればよいかを整理するものです。商材の売り方や料金の相場は、確かめられる公的な資料がないため扱いません。代わりに、どの商材を選ぶかを決める順番に絞ります。選ぶ順番は、次の5段階です。

  1. 納品後の相談・依頼を書き出して、困りごとを集める
  2. 困りごとを「サイトの中」「集客」「お店の業務」の3つに分ける
  3. 商材ごとに、自社でやる・提携する・紹介するのどれにするか決める
  4. 法令とアカウントの権限を確かめる
  5. 1社で小さく試し、続けるかどうかの基準を決める

Web制作のクロスセルとアップセルは何が違う?

違いは「同じものの上位版か、別のものか」の1点です。アップセルは、同じ商品のより上の版を勧めることです。たとえば5ページのサイトを10ページにする、保守プランを上位の枠に広げる、といった提案がこれに当たります。クロスセルは、サイトとは別の商品をあわせて勧めることです。地図検索の対策、SNSの運用支援、写真撮影、予約の仕組みづくりなどが当てはまります。

現場でよくあるのは、この2つを区別しないまま「何でもやります」と伝えてしまうことです。すると、お客様は何を頼めるのかが分からず、結局は無料の相談だけが増えていきます。まずは「サイトを広げる提案」と「サイト以外の困りごとを解く提案」を分けて考えるだけで、商材の棚が整理しやすくなります。

納品後の困りごと別に、どんなクロスセル商材が合う?

合う商材は、困りごとが「サイトの中」「集客」「お店の業務」のどこにあるかで変わります。代表的な組み合わせを表にまとめました。

よくある困りごと合うクロスセル商材区分選ぶときの注意点
更新のやり方が分からない、プラグインの更新が怖い保守・更新代行サイトの中月の作業量の上限を決める。範囲外は別見積もりにする
写真や文章が足りず、ページが古いまま撮影・ライティングサイトの中外注するなら、写真や文章を使える範囲を契約で決めておく
Googleマップで見つけてもらえないMEO(地図検索の対策)の支援集客ビジネスプロフィールのオーナー権限はお客様に残す
SNSを始めたが続かない、反応が少ないSNS運用の支援集客依頼を受けた投稿は広告の表示が必要。順位や件数は約束しない
問い合わせのあとの返信や予約管理が追いつかない予約・顧客管理・自動返信の仕組みづくりお店の業務お客様の個人情報を扱うため、管理する人と保存先を決める
補助金を使いたいが、何から調べればいいか分からない補助金の情報提供・計画づくりの相談お店の業務報酬を得て申請書類を作るのは行政書士の業務。代行はしない

表のうち、上の2つはサイトの延長なので、制作会社が始めやすい商材です。真ん中の集客と、下のお店の業務は、サイトの外に広がります。お客様にとっては「サイトを作った人なら分かるだろう」と相談しやすい分野ですが、制作とは別の知識や人手が要ります。業務の困りごとをどう整理するかは「「時間がない」を減らす業務改善の進め方|手間の大きい作業から順に」で、お客様側の目線から手順をまとめています。提案の前に読んでおくと、話がかみ合いやすくなります。

クロスセル商材の選び方で起きやすい失敗と、最初の対策は?

起きやすい失敗は、困りごとではなく「売りやすさ」や「紹介料」から商材を決めることです。始める前に、次の表で確かめておきましょう。

よくある失敗何が起きるか最初の対策
紹介料の高さで商材を選ぶお客様に合わない提案になり、制作の信頼まで落ちる困りごとの一覧に載っていない商材は扱わない
商材を一度にたくさん増やす説明も対応も追いつかず、どれも中途半端になる最初は1〜2つに絞り、1社で試してから広げる
サイトの外の仕事を、制作の料金のまま引き受ける作業が増えても売上が増えない制作とは別の商材として、範囲と料金を分けて示す
アカウントを制作側の名義で作る契約が終わるときの引き継ぎでもめるGoogleや各SNSのアカウントはお客様名義にする
法令の線引きを確かめずに始める知らないうちに他の資格の業務に踏み込む補助金・広告表示など、法令が絡む商材は公式の情報で確かめる

どの失敗も、商材を「自社の売上を増やす道具」として先に決めたときに起きやすいものです。お客様の困りごとから逆算していれば、提案は「売り込み」ではなく「いつもの相談への答え」として受け取ってもらえます。

クロスセル商材は、どんな順番で決めればいい?

ゴールは、お客様が「この会社にはこれを頼める」と一目で分かる、小さな商材の棚を作ることです。冒頭の5段階を、1つずつ見ていきます。

ステップ1:納品後の困りごとは、どう集める?

  • 過去半年ほどのメール・チャット・電話のメモから、納品後の相談を書き出す
  • 相談ごとに「何に困っていたか」を一言で書く
  • 同じ困りごとが何社から来たかを数える

この段階のゴールは、困りごとの一覧と、その件数を手元に持つことです。書き出すのは、依頼の作業名ではなく、お客様の困りごとです。「バナーを差し替えた」ではなく「季節のキャンペーンを自分で載せられない」と書くと、どんな商材が合うかが見えてきます。複数のお客様から同じ困りごとが出ていれば、それが最初の商材の候補です。

ステップ2:集めた困りごとを3つの区分にどう分ける?

  • 前の一覧表を見ながら「サイトの中」「集客」「お店の業務」に振り分ける
  • どの区分にも入らない困りごとは、いったん保留にする
  • 区分ごとに、件数の多い順に並べる

この段階のゴールは、どの区分の困りごとが多いかを知ることです。サイトの中の困りごとが多ければ、保守や撮影といった、今の仕事に近い商材から始められます。集客やお店の業務の困りごとが多い場合は、制作とは別の知識が要るため、次のステップで提供の形を慎重に決めます。保留にした困りごとは、無理に商材にしないほうが無難です。

ステップ3:自社でやる・提携する・紹介するをどう決める?

  • 自社に知識と人手があるものは、自社の商材にする
  • 知識はあるが人手が足りないものは、提携先と組む
  • 自社では責任を持てないものは、専門家への紹介にとどめる

この段階のゴールは、商材ごとに「誰が責任を持つか」をはっきりさせることです。自社でやる形は利益が残りやすい反面、手が足りなくなると制作の納期にまで響きます。提携や紹介は手軽に始められますが、相手の対応がそのまま自社の評判になります。紹介や取次ぎの形で他社の商材を扱うときの考え方は「代理店ビジネスとは?儲かる仕組みと始める前に知る5つのリスク」にまとまっているので、提携先を選ぶ前の点検に使えます。

ステップ4:補助金・SNS・MEOの商材で確かめる法令と権限は?

  • 補助金:申請書類の作成代行は扱わず、情報提供と計画づくりの相談にとどめる
  • SNS:お客様の依頼で投稿するときは、広告であることを分かるようにする
  • MEO:Googleビジネスプロフィールのオーナー権限はお客様に残す

この段階のゴールは、商材が他の資格の業務やルールに触れないことを確かめることです。補助金については、行政書士や行政書士法人でない者が、報酬を得て他人の依頼を受け、官公署に出す書類を作ることは制限されています。2026年1月1日に施行された改正行政書士法では、この制限が「手数料」「コンサルタント料」など報酬の名目を問わないことが条文で明確になりました(総務省「行政書士制度」)。制作のついでに申請書を書く、という商材は作らないほうが安全です。

SNSの運用支援では、景品表示法のステルスマーケティング規制に気をつけます。ステルスマーケティングとは、広告なのに広告であることを隠す行為です。消費者庁によると、2023年10月1日から規制が始まり、規制の対象は商品やサービスを提供する事業者、つまり広告主です(消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」)。運用を代行する制作会社が規制の直接の対象でなくても、責任を問われるのはお客様です。投稿のルールは、契約の段階で一緒に決めておきましょう。

MEOでは、Googleの「ビジネス プロフィールのサードパーティ ポリシー」が、お客様が常にオーナーか共同オーナーの権限を持つこと、代行する側は管理者として入ることを求めています。契約が終わるときは、お客様が権限を取り戻せるよう対応することも示されています。お客様の立場から見た確認点は「MEOコンサルティングの契約前に確認したい5項目|費用・範囲・解約」で解説しています。商材の説明書を作るときの点検表として使えます。

ステップ5:新しい商材は、どう小さく試して続けるか決める?

  • ステップ1で同じ困りごとを相談してくれたお客様1社に、試しに提案する
  • かかった時間と、お客様の反応を記録する
  • 「続ける」「やめる」の基準を、始める前に決めておく

この段階のゴールは、商材を広げる前に、手間と手ごたえを数字で確かめることです。最初の1社は、その困りごとを実際に相談してくれたお客様にします。「先日の相談を、決まった形でお手伝いできるようにしました」と伝えれば、売り込みではなく相談への答えとして受け取ってもらいやすくなります。続ける基準は、たとえば「1社あたりの作業時間が見積もりの範囲に収まったか」のように、自社で確かめられる数字にしておくと判断がぶれません。

まとめ:Web制作のクロスセル商材は何から決めればいい?

最初の一歩は、納品後に受けている相談を書き出し、お客様の困りごととして並べ直すことです。そこから3つの区分に分け、自社でやるか・提携か・紹介かを決め、法令と権限を確かめてから1社で試せば、小さな制作会社でも無理なく商材を増やせます。商材の数より、お客様の困りごとに合っているかどうかが、長く頼られる関係につながります。

とはいえ、制作の仕事を回しながら、どの困りごとに手を広げるか、どこまで自社で抱えるかを決めるのは簡単ではありません。商材選びは、集客や業務の進め方、人手の配分まで含めた事業の形の見直しでもあるため、社内だけでは優先順位がつけにくいものです。当社の事業戦略顧問では、商品設計や集客、業務改善を含めた事業全体の整理から実行まで、経営者の方と一緒に進めています。どこから手をつけるか迷ったときは、考えの整理からご相談ください。

よくある質問

Web制作のクロスセルで、最初に扱いやすい商材は何ですか?
保守・更新代行や撮影など、サイトの延長にある商材が始めやすいです。今の制作の知識と道具で対応でき、お客様にも頼む理由が伝わりやすいためです。集客やお店の業務に広げるのは、困りごとの件数を確かめてからにしましょう。
補助金の申請サポートをクロスセル商材にしてもいいですか?
申請書類の作成代行は商材にしないほうが安全です。行政書士でない者が報酬を得て官公署に出す書類を作ることは制限されており、2026年1月1日施行の改正で報酬の名目を問わないことが明確になりました(総務省)。情報提供や、計画づくりの相談にとどめましょう。
他社の商材を紹介して紹介料をもらうのは問題ありませんか?
紹介そのものは珍しくありませんが、紹介料の高さで選ぶと信頼を落としやすくなります。お客様の困りごとに合うかを先に確かめ、紹介料を受け取る場合はその事実をお客様に伝えておくと、あとで関係がこじれにくくなります。
SNS運用を代行するとき、ステマ規制の対象になるのは誰ですか?
規制の対象は、商品やサービスを提供する事業者、つまり広告主であるお客様です。消費者庁によると、依頼を受けた第三者は対象外とされています。ただし責任を負うのはお客様なので、広告であることの表示ルールは契約の段階で一緒に決めておきましょう。

出典:IPA「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」報告書について(2025年5月27日公開)/総務省「行政書士制度」/消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」/Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィールのサードパーティ ポリシー」(いずれも2026年11月4日確認)

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