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飲食店開業の融資で通る売上計画とは|席数・客単価・集客の根拠の作り方

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

飲食店開業の融資で通りやすい売上計画とは、「席数×客単価×回転数×営業日数」の掛け算で売上を出し、客単価はメニュー構成から、客数は商圏と集客の手段から根拠を示した計画です。そのうえで開業直後は稼働率を控えめに置き、損益分岐点と返済額を下回る期間を運転資金でまかなえることまで示せると、面談で筋の通った説明ができます。

飲食店開業の融資で通りやすい売上計画は「席数×客単価×回転数×営業日数」に根拠を添えたもの

飲食店開業の融資で通りやすい売上計画とは、月の売上を「席数×客単価×回転数×営業日数」の掛け算で出し、それぞれの数字に根拠を添えた計画です。日本政策金融公庫(以下、公庫)のコラム「事業計画を数字にする」(2023年2月22日)では、カフェの例で「組数×客単価×回転数×営業日数」から最大の売上を出し、創業当初は稼働率30%、軌道に乗った後は50%として売上を分けて試算しています。公庫は創業融資について、自己資金よりも「創業計画全体がしっかりしているか」が重要だと案内しています。つまり、売上の数字そのものより、その数字をどう組み立てたかが見られます。

飲食店の開業準備では、内装や厨房機器の見積もりは細かく集めても、売上の欄は「月商150万円くらい」と目標の数字だけを書いてしまう、ということが現場でよくあります。融資の審査は総合的な判断なので、売上計画だけで結果が決まるわけではありません。それでも、売上の根拠は面談で話題になりやすい部分です。この記事では、公庫の公開資料をもとに、飲食店の売上計画を「席数」「客単価」「集客」の3つの根拠から組み立てる手順を整理します。

融資で通りにくい売上計画と通りやすい売上計画は何が違う?

違いは「売上の出し方」「開業直後の見込み方」「客数の根拠」の3点です。どれも、数字の大きさではなく、説明の筋道の違いです。

比べる点通りにくい売上計画通りやすい売上計画
売上の出し方「月商150万円」と結果の数字だけを書く席数×客単価×回転数×営業日数の掛け算で出し、式も書く
開業直後の見込み方初月から満席に近い数字で計算する稼働率で「開業直後」と「軌道に乗った後」を分け、立ち上がりの期間を見込む
客数の根拠「味に自信があるので来てくれるはず」と期待で書く商圏の人口、予約の見込み、開業前の告知など、来店につながる手段とつなげて書く

3点とも、公庫の面談で聞かれる「借りたお金の使いみち」と「事業計画」に直結します。公庫の創業予定の方向けの手続き案内では、面談で資金の使いみちや事業計画について話を聞き、担当者が店舗の予定地を訪ねたうえで判断するとしています。予定地を実際に見られる以上、立地と合わない客数は説明がつきません。

飲食店の売上計画はどんな順番で作る?5つの段階

売上計画は、次の5つの段階で作ると、根拠が途中で抜けにくくなります。

  • 1. 席数と回転数から「最大の売上」を出す
  • 2. 稼働率で「開業直後」と「軌道に乗った後」の売上に分ける
  • 3. 客単価の根拠をメニュー構成から作る
  • 4. 客数の根拠を商圏と集客の手段から作る
  • 5. 損益分岐点と返済額で、計画が回るかを確かめる

創業計画書全体の書き方(動機・経験・資金計画など)は、新事業の創業計画書の書き方で項目ごとに解説しています。この記事では、そのうち飲食店の「事業の見通し」欄、つまり売上の根拠づくりに絞って進めます。

段階1:飲食店の最大の売上は席数と回転数からどう出す?

この段階のゴールは、店が満席に近い状態で回ったときの「最大の売上」を、式つきで出すことです。

  • 席数(カウンター・テーブル)を図面から数える
  • 営業時間から、1日に何回転できるかの上限を決める
  • 定休日を引いた月の営業日数を決める

回転数とは、1つの席が1日に何回お客様に使われるかを表す数字です。20席の店に1日40人が来れば、回転数は2回転です。ランチとディナーでは客単価も回転数も大きく違うため、時間帯を分けて計算すると根拠を説明しやすくなります。平日と週末で客足が違う業態なら、曜日でも分けておきましょう。

たとえば、ディナーのみ・20席・客単価4,000円の店を仮に考えます。営業時間から1日1回転が上限とすると、最大の売上は「20席×4,000円×1回転×25日=200万円」です。これはあくまで上限の数字で、計画にそのまま使うものではありません。なお、公庫の各種書式ダウンロードページには、飲食業の記入例として「洋風居酒屋」の創業計画書と、参考資料「売上高等の計算方法について」が載っています。自分の業態に近い形で式を組むときの参考になります。

段階2:開業直後と軌道に乗った後の売上は稼働率でどう分ける?

この段階のゴールは、最大の売上に稼働率を掛けて、「開業直後」と「軌道に乗った後」の2つの売上を出すことです。

  • 開業直後の稼働率を控えめに置く
  • 軌道に乗った後の稼働率と、そこまでの期間の見込みを決める
  • 2つの売上を、事業の見通し欄に分けて書く

稼働率とは、最大の売上(満席で回った状態)に対して、実際にどのくらい席が埋まるかの割合です。前述の公庫のコラム「事業計画を数字にする」では、最大で6回転の店について、稼働率50%なら3回転、30%なら1.8回転として回転数を下げ、創業当初の売上は30%稼働で54万円、当面の目標は50%稼働で90万円と分けて試算しています。また、創業当初の売上では利益がマイナスになることも、そのまま表に示しています。

先ほどの20席の店に当てはめると、開業直後を稼働率30%とすれば月60万円、軌道に乗った後を50%とすれば月100万円です。ここでの30%・50%は公庫のコラムの例をなぞった数字で、どの店にも当てはまる基準ではありません。大切なのは、「開業直後は売上が低い時期がある」と自分から計画に書き込み、その期間をどう乗り切るかまで示すことです。

段階3:飲食店の客単価の根拠はどう作る?

この段階のゴールは、客単価を「メニューの価格」と「1人あたりの注文の組み合わせ」から説明できるようにすることです。

  • メニューと価格を先に決める
  • 1人が平均で何を何品注文するかの型を作る
  • 近くの同業店の価格帯を実際に調べて比べる

客単価とは、お客様1人あたりが1回の来店で支払う平均の金額です。「客単価4,000円」と書くだけでなく、「料理2品とドリンク2杯で約4,000円」のように、注文の組み合わせで示すと根拠になります。コース中心の店ならコースの価格とドリンクの注文率、ランチ中心の店なら定食の価格と追加注文の割合、というように業態に合わせて分解しましょう。

あわせて、原価率も決めておきます。原価率とは、売上に占める食材やドリンクの仕入れ代の割合です。前述の公庫のコラムでは、公庫の「小企業の経営指標調査」に載っている喫茶店の数字を参考に、原価率を30%と置いています。同業での勤務経験があれば、その店での実際の数字も根拠として使えます。

段階4:客数の根拠は集客の計画とどうつなげる?

この段階のゴールは、「なぜその人数が来るのか」を、商圏と具体的な集客の手段で説明できるようにすることです。売上計画のなかで、いちばん根拠が弱くなりやすい部分です。

  • 店の周りにどんな人がどれくらい住み、働いているかを調べる
  • 開業前から見込み客とつながる手段を決める
  • 開業後の集客の手段と、それにかける費用を計画に入れる

商圏の人口は公的な統計地図で確かめる

商圏とは、店に来るお客様が住んでいたり働いていたりする範囲のことです。政府統計の総合窓口e-Statの「地図で見る統計(jSTAT MAP)」は、統計を地図上に表示し、エリアの分析ができる地理情報システムで、「誰でも使える」と案内されています。予定地を中心にした範囲の人口や世帯の様子を確かめておくと、「この商圏で1日○人」という数字に説明がつきます。あわせて、平日の昼と夜、週末に予定地の前を実際に歩き、人通りや近くの同業店の混み具合を見ておくと、面談でも自分の言葉で話せます。

開業前から見込み客とつながる手段を書く

開業直後の客数は、開業前にどれだけ見込み客とつながっているかで大きく変わります。前職のお客様、知人、SNSのフォロワー、開業前の試食会の参加者など、開業をお知らせできる人が何人いるかを数えておきましょう。特に完全予約制や小さな店では、開業前の予約の入り方が客数の根拠になります。予約が入る流れの作り方は、完全予約制の飲食店の集客|グルメサイトに頼らず予約が入る導線の作り方で詳しく解説しています。

開業後の集客の手段と費用を計画に入れる

開業後に新しいお客様をどこから呼ぶのかも、計画に書いておきます。地図アプリで店を探す人に向けたGoogleビジネスプロフィールの整備、SNS、チラシなど、手段ごとに「誰に届けるのか」と「月にいくらかけるのか」を決めましょう。集客の費用は広告宣伝費として経費に入れます。地域の飲食店がまず整えたい地図アプリでの見え方は、MEO対策とは?飲食店・整骨院・サロンが自分でできる最初の手順で紹介しています。

段階5:飲食店の売上計画は損益分岐点と返済額でどう確かめる?

この段階のゴールは、「赤字にならない売上」と「返済もできる売上」を出し、それを1日の客数に直して、計画が回るかを確かめることです。

  • 毎月の経費(家賃・人件費・水道光熱費など)を合計する
  • 損益分岐点売上高と、返済額を足した目標売上を出す
  • 目標売上を1日の客数に直し、席数と稼働率で無理がないかを見る

損益分岐点売上高とは、利益がちょうどゼロになる売上のことです。公庫のコラム「赤字にならない売上はいくら?損益分岐点売上高と売上高目標」(2023年3月22日)では、毎月の経費41万円、売上総利益率70%(原価率30%)の例で、損益分岐点売上高を約58.6万円と計算しています。さらに、毎月の返済額6.7万円を経費に足すと、目標の売上は約68.1万円になるとしています。売上総利益率とは、売上から原価を引いた利益が売上に占める割合です。

同じ考え方で、先ほどの20席の店を仮に計算してみます。数字はすべて説明のための例です。

項目計算結果(月)
毎月の経費と返済額経費56万円+返済7万円63万円
目標の売上63万円÷売上総利益率70%90万円
1日の目標の売上90万円÷25日3.6万円
1日の目標の客数3.6万円÷客単価4,000円9人
必要な稼働率9人÷最大20人(20席×1回転)45%

この例では、開業直後の稼働率30%(月60万円)は目標の90万円に届きません。つまり、稼働率が45%に上がるまでの数か月は、毎月の不足分を運転資金でまかなう必要があります。このように「いつまで足りないか」「その間のお金をどこから出すか」まで計画に書いておくと、借りる金額の根拠にもなります。融資と補助金のどちらで、どの順番で資金を用意するかは、創業融資と補助金の違いと使い分け方で整理しています。

飲食店の創業融資で、売上計画のほかに確かめておくことは?

飲食店は「生活衛生関係営業」に当たるため、融資の書類が一部ほかの業種と違う場合があります。生活衛生関係営業とは、飲食店や理容・美容、旅館など、暮らしの衛生に深く関わる業種のことです。千葉県の生活衛生関係営業者向けの政策金融の案内(2025年9月8日更新)でも、対象業種に飲食店営業が挙げられています。

公庫の手続き案内では、生活衛生関係の事業の場合、都道府県知事の推せん書または生活衛生同業組合の資金証明書が必要書類に挙げられています。ただし、設備資金が500万円以下なら推せん書は不要とされています(2026年11月4日確認)。推せん書の発行は都道府県の生活衛生営業指導センターが窓口になっていることが多いため、必要になりそうな場合は早めに確かめておきましょう。

日程にも余裕を持たせます。公庫の創業支援のQ&Aによると、申込から融資が決まるまでは平均で3週間程度で、条件によってはもっとかかる場合があります。また、開業前後の人が使える公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が対象です。内装工事の契約や物件の家賃が発生する日から逆算して、相談の時期を決めましょう。

まとめ:飲食店開業の売上計画は「式」と「根拠」をセットで書く

飲食店開業の融資で見られるのは、売上の数字の大きさよりも、その数字の組み立て方です。席数と回転数で最大の売上を出し、稼働率で開業直後と軌道に乗った後に分けます。客単価はメニューと注文の組み合わせから、客数は商圏と集客の手段から根拠を作ります。最後に損益分岐点と返済額で確かめ、足りない期間を運転資金でまかなえるかまで示しましょう。

一つひとつの計算は自分でできても、「どの集客の手段にどれだけお金と時間をかけるか」「開業直後のどこに力を入れるか」といった優先順位は、一人だと決めきれないことがあります。当社の事業戦略顧問では、融資の相談も含めて、事業戦略・集客・業務改善をまとめて見ながら、経営者と一緒に計画を整理し、開業後の実行まで伴走しています。「この売上計画の根拠で筋が通っているか、一度外の目で確かめたい」と感じた方は、気軽にご相談ください。

よくある質問

飲食店の売上計画は、満席を前提に書いてもよいですか?
満席の数字は「最大の売上」として出し、計画には稼働率を掛けた数字を使うのがおすすめです。公庫のコラムでも、創業当初は稼働率30%、軌道に乗った後は50%と分けて試算しています。開業直後は売上が低い時期があると見込み、その間の資金をどうするかまで書いておくと説明しやすくなります。
飲食店の経験がなくても、売上計画の根拠は作れますか?
作れます。メニューと価格、注文の組み合わせ、商圏の人口、近くの同業店の価格帯や混み具合は、経験がなくても自分で調べて根拠にできます。公庫は、自己資金よりも創業計画全体がしっかりしているかが重要だと案内しているので、調べた内容を計画に反映させることが大切です。
回転数と稼働率はどう違いますか?
回転数は1つの席が1日に何回使われるかの数字で、稼働率は最大の売上に対して実際にどのくらい埋まるかの割合です。公庫のコラムでは、最大6回転の店で稼働率50%なら3回転、30%なら1.8回転というように、稼働率を掛けて回転数を下げて計算しています。
飲食店の創業融資で、推せん書は必ず必要ですか?
必ずではありません。公庫の手続き案内では、生活衛生関係の事業の場合に都道府県知事の推せん書または生活衛生同業組合の資金証明書が必要書類に挙げられていますが、設備資金が500万円以下なら推せん書は不要とされています。条件は変わることがあるので、申し込む前に公庫の窓口で確かめてください。

出典:日本政策金融公庫 コラム「第5回 事業計画を数字にする」(2023年2月22日)/日本政策金融公庫 コラム「第6回 赤字にならない売上はいくら?損益分岐点売上高と売上高目標」(2023年3月22日)/日本政策金融公庫「START 政策金融公庫の創業支援 Q&A」/日本政策金融公庫「創業予定の方 ご利用の手続き」/日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」/日本政策金融公庫「各種書式ダウンロード(国民生活事業)」/千葉県 生活衛生関係営業者向けの政策金融の案内(2025年9月8日更新)/e-Stat「地図で見る統計(jSTAT MAP)」(いずれも2026年11月4日確認)

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