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サロンの物販(店販)の始め方|在庫を抱えすぎない仕入れと粗利の計算

2026.11.08

文責:藤田 泰仁

サロンの物販(店販)は、お客様の悩みに合う1〜2品を最小ロットで仕入れ、「粗利額×月の販売数」と「在庫月数」を計算してから始めると、在庫を抱えすぎずに続けられます。勧めるときは、商品の区分で言ってよい表現の範囲を確かめ、悩みを聞いたときだけ提案するルールを店で決めておきましょう。

サロンの物販(店販)とは、施術とは別に、シャンプーや化粧品などのホームケア用品を店で販売することです。日本政策金融公庫「美容店に関する消費者意識と経営実態調査」(2012年7月発表)では、美容店の61.7%が売上に占める店販の割合を「10%未満」と答え、店販が利益に「貢献している」は41.2%、「貢献していない」は41.9%とほぼ半々でした。

つまり、店販は始めれば利益になるとは限りません。差が出やすいのは、何を・どれだけ仕入れ・いくらの粗利で・どう勧めるかの設計です。この記事では、小さなサロンが在庫を抱えすぎずに物販を始める手順を、仮の数字を使った計算例とあわせて整理します。

サロンの物販(店販)の始め方の要点

サロンの物販は、最初から品数をそろえるより、お客様からよく聞く悩みに合う商品を1〜2品に絞り、メーカーや卸の最小ロットで始めるほうが在庫の負担を抑えられます。仕入れの前には、掛け率(定価に対する仕入れ値の割合)、最低発注数、返品の条件、商品の区分(化粧品・医薬部外品など)を確かめます。そのうえで「1個あたりの粗利額×1か月に売れる数」と「在庫が何か月分あるか」を計算し、無理のない量かを判断します。勧めるときは、商品の区分で言ってよい効能の範囲に言葉を合わせ、悩みを聞いたときだけ提案するルールを店で決めておくと、押し売りと受け取られにくくなります。

物販と店販はどう違う?

サロンで「物販」と「店販」と言うときは、ほぼ同じものを指します。店販は「店頭販売」の略で、美容室やエステ、ネイルサロンなどの業界で、施術とは別にホームケア用品を販売することを言うときによく使われます。物販は、施術などのサービス(役務)に対して「物を売ること」全般を広く指す言葉です。この記事では、サロンの店頭で商品を売ることを「物販(店販)」と呼びます。

サロンの物販はどんな手順で始める?

物販は、次の6つの段階で進めると、仕入れすぎや言い過ぎを防ぎやすくなります。

  1. 物販の目的と、在庫に使ってよい金額の上限を決める
  2. お客様からよく聞く悩みから、扱う商品を1〜2品に絞る
  3. 仕入れ条件(掛け率・最低発注数・返品・商品の区分)を確かめる
  4. 粗利額と在庫月数を計算し、仕入れる量を決める
  5. 言ってよい表現と勧め方を決め、スタッフでそろえる
  6. 月に1回、売れた数と在庫を見直し、続けるか決める

始める前に、つまずきやすい点を知っておくと、手順の意味がつかみやすくなります。現場でよく起きるつまずきは、大きく6つです。

つまずきやすい点何が起きるか最初の対策
最初から品数をそろえる売れない商品の在庫に現金が眠る1〜2品に絞り、最小ロットで始める
掛け率(粗利率)だけで商品を選ぶ売れる数が少なく、粗利の合計が小さい「粗利額×月の販売数」で比べる
値引きで売ろうとする1個あたりの粗利が大きく減る値引きより、試せる機会(テスター)を用意する
メーカーの説明をそのまま使う薬機法に触れる表現になるおそれがある商品の区分と、言ってよい範囲を先に確かめる
小分け・手づくりした商品を売る許可が必要な「製造」に当たる可能性がある都道府県の薬務課に作業内容を伝えて確かめる
来店のたびに勧める押し売りと受け取られ、来店の足が遠のくおそれ悩みを聞いたときだけ提案し、記録を残す

手順1:物販を始める前に、何を決めておく?

  • 物販で何を実現したいか(ホームケアで施術の満足を保つ、客単価を上げる など)を決める
  • 在庫に使ってよい金額の上限を決める
  • 物販の数字を記録する場所(売れた数・在庫数)を決める

この段階のゴールは、「なぜ売るのか」と「いくらまでなら在庫に回せるか」を先に決めておくことです。目的があいまいなまま始めると、メーカーに勧められた商品を次々に増やしてしまいがちです。在庫は売れるまで現金に戻らないため、運転資金(日々の支払いに回すお金)を圧迫しない金額を上限にします。記録は、紙の台帳でも表計算ソフトでもかまいません。月ごとの数字をまとめる型は、小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方が参考になります。

手順2:サロンの物販で扱う商品は、どう選ぶ?

  • カウンセリングや施術中に、お客様からよく聞く悩みを書き出す
  • 施術で実際に使っていて、感想を説明できる商品から候補を選ぶ
  • 候補を1〜2品に絞る

商品は、お客様の悩みと、施術で使っている実感の両方から選ぶのが基本です。日本政策金融公庫の同じ調査では、最近1年間に美容店で店販品を「購入したことがある」消費者は20.3%でした。購入した商品は「スタイリング剤」49.5%、「トリートメント」49.2%、「シャンプー」41.9%の順で、購入した人の82.6%が商品に「満足している」と答えています(2012年2月調査、消費者2,715名)。

つまり、買う人は多くないものの、買った人の満足度は高い傾向があります。最初から幅広くそろえるより、施術の仕上がりを家でも保つための商品など、説明しやすい1〜2品に絞るほうが、在庫の負担も説明の手間も小さく済みます。なお、調査は美容室が対象で時期も古いため、エステやネイルなど他の業態では、自店のお客様の声を優先してください。

手順3:仕入れる前に、メーカーや卸に何を確かめる?

  • 掛け率と、最低発注数(1回に注文しなければならない数)を聞く
  • 返品や交換ができるか、納品までにかかる日数を聞く
  • 商品の区分(化粧品・医薬部外品・医療機器・食品など)を書面で確かめる

掛け率とは、定価(上代)に対する仕入れ値(下代)の割合のことです。定価3,000円の商品を1,800円で仕入れるなら、掛け率は60%で「6掛け」と呼ばれます。最低発注数が大きいと、1回の仕入れで何か月分もの在庫を持つことになるため、掛け率と同じくらい大事な条件です。

商品の区分は、あとで「何と言って勧めてよいか」を決める土台になります。区分ごとに言ってよい範囲と、メーカーに確かめたい項目は、エステ商材を仕入れる前に確かめたい表示ルール|薬機法と説明の注意点で詳しくまとめています。

手順4:店販の粗利はどう計算する?

  • 1個あたりの粗利額と粗利率を出す
  • 「粗利額×1か月に売れる数」で、月の粗利を出す
  • 最低発注数を仕入れたとき、在庫が何か月分になるかを出す

粗利とは、販売価格から仕入れ値を引いた残りのことで、粗利率は粗利を販売価格で割った割合です。計算式は「粗利=販売価格−仕入れ値」「粗利率=粗利÷販売価格」です。在庫月数とは、手元の在庫が何か月で売り切れるかの目安で、「在庫数÷1か月に売れる数」で出します。以下の数字はすべて仮の数字で、税抜で計算しています。

項目(仮の数字)商品A商品B
販売価格(税抜)3,000円5,000円
仕入れ値(掛け率)1,800円(60%)3,500円(70%)
1個あたりの粗利(粗利率)1,200円(40%)1,500円(30%)
1か月に売れる数(見込み)8個3個
月の粗利1,200円×8個=9,600円1,500円×3個=4,500円
最低発注数と仕入れ額24個×1,800円=43,200円12個×3,500円=42,000円
在庫月数24個÷8個=3か月12個÷3個=4か月

1個あたりの粗利は商品Bのほうが大きいものの、売れる数が少ないため、月の粗利は商品Aの半分以下です。仕入れ額はほぼ同じでも、商品Bは在庫が4か月分残ります。このように、粗利率や1個の粗利だけで選ぶと判断を誤りやすく、「月の粗利」と「在庫月数」をあわせて見ることが大切です。

店販品を値引きすると、粗利はどれだけ減る?

値引きは、割引率よりも粗利の減り方のほうが大きくなります。商品Aを10%引きの2,700円で売ると、1個の粗利は1,200円から900円になり、25%減ります。値引き前と同じ月の粗利9,600円を得るには、9,600円÷900円=約10.7個、つまり月に11個売る必要があり、8個から3個増やさなければなりません。

割引には来店や購入のきっかけを作る力がありますが、店販の粗利を削りやすい手段でもあります。割引が人の判断にどう効くかは、割引が効くのはなぜ?クーポンと期間限定の心理効果を小さな店向けに解説で整理しています。店販では、値引きより「テスターで試せる」「使い方を実演する」といった、試す機会を用意するほうが粗利を守りやすくなります。

売れ残りや期限切れは、どれだけの損になる?

売れ残った在庫を処分すると、その1個の仕入れ値がそのまま損になります。商品Aを1個処分すると1,800円の損で、これを取り戻すには1,800円÷1,200円=1.5個、つまり実際にはもう2個多く売る必要があります。テスターとして開けた商品も同じく仕入れ値の分の費用になるため、テスターに回す数もあらかじめ決めておきましょう。

在庫を抱えすぎないために、仕入れる量はどう決める?

  • 最初の仕入れは最低発注数にとどめる
  • 「発注点」(この数まで減ったら注文する在庫数)を決める
  • 在庫月数が長くなった商品は、追加の仕入れを止める

この段階のゴールは、「売れた分だけ補充する」仕組みを作ることです。発注点は「納品までの日数に売れる数+予備の数」で決めます。仮に商品Aが月8個売れ、注文から納品まで2週間かかるなら、2週間で売れる数は約4個です。予備を2個とすると、在庫が6個まで減ったら注文する、というルールになります。

現場でよくあるのは、まとめて仕入れると掛け率が下がる条件に惹かれて、何か月分もの在庫を抱えてしまうことです。掛け率が少し下がっても、在庫が長く残れば現金が眠り、期限切れや劣化のおそれも増えます。まとめ買いの条件は、在庫月数が自店の上限(たとえば3か月など、店で決めた数字)に収まるときだけ使うと決めておくと、判断がぶれにくくなります。

手順5:サロンの物販で、言ってはいけない表現は?

  • 商品の区分ごとに、言ってよい効能の範囲を確かめる
  • POP・SNS・口頭の説明で使う言葉を1枚にまとめる
  • 迷う表現は、使う前に都道府県の薬務課などに確かめる

薬機法とは、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの品質や安全性、広告のルールを定めた法律で、正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。厚生労働省「医薬品等の広告規制について」は、同法第66条の誇大広告の禁止が「何人も」を対象にしていると説明しています。メーカーだけでなく、店頭やSNSで商品を説明するサロンも対象です。

化粧品として言ってよい効能は、厚生労働省の通知で56項目に決められており、その商品にあてはまるものだけが使えます。一覧は大阪府「化粧品の効能効果の範囲」で確かめられ、髪では「毛髪にはり、こしを与える」「毛髪につやを与える」、肌では「肌を整える」「肌荒れを防ぐ」などが並んでいます。三重県医療保健部薬務課「初めて化粧品を製造販売・製造・輸入される方へ」(令和7年12月版)も、頭髪用品で「育毛、脱毛の予防、発毛の促進」などは医薬部外品で認められる効能の例で、医薬部外品ではない化粧品はこうした効能を言えないと整理しています。シャンプーを勧めるときに「髪が生える」「抜け毛が減る」と言ってしまうのは、現場で起きやすい言い過ぎの例です。

言ってよいか迷う表現は、自己判断で使わず、店のある都道府県の薬務課(薬務主管課)に、商品の区分と使いたい文面を伝えて確かめてください。厚生労働省のページも、個別の案件は都道府県の薬務主管課に問い合わせるよう案内しています。健康食品や美容機器を扱う場合の注意点は、先に紹介した表示ルールの記事にまとめています。

業務用の化粧品を小分けして売ってもいい?

業務用の化粧品を小分けして売ると、許可が必要な「製造」に当たる可能性があるため、始める前に都道府県の薬務課に確かめてください。前述の三重県の資料によると、国内の化粧品製造販売業者が出荷した化粧品をそのまま売るだけなら許可は不要です。一方、茨城県「初めて化粧品を製造・製造販売・輸入される方へ」(2025年2月6日更新)は、製造とは原料を混ぜたり容器に詰めたりすることのほか、小分けや表示ラベルの貼り付けも含むと説明しています。大容量のシャンプーを小さなボトルに詰め替えて売る、オイルを混ぜてオリジナル商品として売る、といった扱い方は、この説明に当てはまるおそれがあります。具体的な作業内容を伝えて、許可が要るかを確かめてから進めましょう。

エステのコース契約と一緒に売る商品は、クーリング・オフの対象になる?

期間が1か月を超え、金額が5万円を超えるエステのコース契約と一緒に売る化粧品や健康食品などは、クーリング・オフの対象になることがあります。消費者庁「特定商取引法ガイド」の特定継続的役務提供のページによると、こうした契約は「特定継続的役務提供」に当たり、施術を受けるうえで購入が必要な商品として政令で定められた「関連商品」(エステでは健康食品、化粧品・石けん・浴用剤、下着類、美顔器・脱毛器)の販売契約も、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフできます。コース契約と店販を組み合わせるときは、契約書面の内容もあわせて確かめておきましょう。

押し売りにならない店販の勧め方は?

  • 勧めるのは、お客様が悩みを口にしたときに限る
  • 「今日は買わなくて大丈夫です」と先に伝え、試す機会を用意する
  • 提案した内容と反応を記録し、次回の会話につなげる

押し売りに見えない勧め方の基本は、売り込みではなく、お客様の悩みへの答えとして提案することです。日本政策金融公庫の同じ調査で店販品を買った人は2割ほどで、多くの人は買っていません。来店のたびに勧めると、それだけで居心地の悪さにつながりかねません。カウンセリングで「家でのお手入れで困っていることはありますか」と聞き、悩みが出たときだけ、施術で使った商品の使い方を見せるくらいがちょうどよい距離感です。

スタッフがいる店では、勧める場面と言葉を決めて全員でそろえます。人によって説明が違うと、誰かが効能を言い過ぎても気づけません。また、誰に何を提案し、買ったか・見送ったかを顧客カルテに残しておくと、同じ商品を何度も勧めてしまうことを防げます。記録の残し方は、飲食店・整骨院・サロンのリピーターを増やす方法|顧客台帳の作り方で紹介しています。

手順6:始めたあと、物販の数字は何を見直す?

  • 商品ごとに、月の販売数・月の粗利・在庫月数を記録する
  • 在庫月数が店で決めた上限を超えた商品は、追加の仕入れを止める
  • 3か月ほど様子を見て、続ける・入れ替える・やめるを決める

この段階のゴールは、続けるかどうかを数字で決められる状態にすることです。見るのは「何個売れたか」「月の粗利はいくらか」「在庫は何か月分か」の3つで十分です。売れない商品を「せっかく仕入れたから」と置き続けるより、在庫を売り切ったところで入れ替えるほうが、限られた棚と資金を生かせます。見直す期間はあくまで目安なので、商品の使い切りまでの期間や来店の間隔に合わせて決めてください。

サロンの物販を、事業全体の中でどう位置づける?

ここまでの手順は、経営者が自分で進められる内容です。一方で、物販の判断は、施術メニューや価格、客単価、集客で伝える言葉、スタッフの教育とつながっています。たとえば、店販を増やすなら施術の時間配分や接客の流れを見直す必要が出ますし、在庫に回す資金は他の投資とのバランスで決める必要があります。どれから手をつけるかの優先順位づけは、ひとりで考えると迷いやすい部分です。

当社の事業戦略顧問では、商品設計・集客・業務改善をまとめて見ながら、経営者と一緒に優先順位を整理し、実行まで伴走しています。「物販を始めたいが、事業全体の中でどう進めるか一度整理したい」と感じた方は、気軽にご相談ください。

よくある質問

サロンの物販は、最初に何品くらいから始めればいいですか?
最初は1〜2品から始めるのがおすすめです。品数を絞るほど、仕入れ額と在庫月数を管理しやすく、スタッフの説明もそろえやすくなります。売れ方を見て、在庫が回ってから増やしても遅くはありません。
店販の粗利率は何%を目安にすればいいですか?
公的な平均値で示せる目安はないため、粗利率だけで決めないことをおすすめします。商品ごとに「1個の粗利額×月の販売数」で月の粗利を出し、在庫月数とあわせて比べると、店に合う商品を選びやすくなります。
サロンで化粧品を販売するのに許可は必要ですか?
国内の化粧品製造販売業者が出荷した化粧品を、そのまま販売するだけなら許可は不要です(三重県薬務課の資料による)。ただし、小分けや詰め替え、原料を混ぜたオリジナル商品の販売は許可が必要な「製造」に当たる可能性があるため、都道府県の薬務課に確かめてください。
メーカーのパンフレットの言葉を、そのままPOPに使ってもいいですか?
そのまま使うのは避けたほうが安全です。薬機法の誇大広告の禁止は「何人も」が対象なので、店が書いたPOPも規制の対象になります。商品の区分で言ってよい範囲に収まっているかを確かめてから使いましょう。

出典(2026年11月8日確認):日本政策金融公庫「美容店に関する消費者意識と経営実態調査」(2012年7月5日)/厚生労働省「医薬品等の広告規制について」/大阪府「化粧品の効能効果の範囲」/三重県医療保健部薬務課「初めて化粧品を製造販売・製造・輸入される方へ」(令和7年12月版)/茨城県「初めて化粧品を製造・製造販売・輸入される方へ」(2025年2月6日更新)/消費者庁「特定商取引法ガイド」特定継続的役務提供

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