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テイクアウト専門店の開業資金|間借り・シェアキッチン・テナント比較

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

テイクアウト専門店の開業資金は、間借りやシェアキッチンなら物件取得費と内装・厨房の工事費をほぼ抑えられ、テナントならそれらが加わる分だけ大きくなります。まず間借りやシェアキッチンで売れる数を確かめ、数字がそろってからテナントを判断する順番にすると、開業資金を必要以上に膨らませずに済みます。

テイクアウト専門店の開業資金は「どこで作るか」で大きく変わる

テイクアウト専門店の開業資金は、間借り・シェアキッチン・テナントのどれで始めるかで、必要な金額の桁が変わります。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(2025年12月5日公表)では、全業種の開業費用は平均975万円、中央値600万円で、500万円未満で開業した人が4割以上(41.8%)でした。テナントで店を構えると、物件を借りるお金と内装・厨房の工事費がかかり、この平均に近づきやすくなります。一方、間借りやシェアキッチンは、すでにある厨房を借りるため、この2つをほぼ抑えられます。そのぶん、営業できる時間や設備には制約があります。

なお、この調査は日本政策金融公庫が融資した開業後1年以内の企業が対象で、テイクアウト専門店だけの数字ではありません。調査では「持ち帰り・配達飲食サービス業」は「小売業」に含めて集計されています。あくまで開業資金の大きさをつかむ物差しとして使い、自分の計画は費用の中身ごとに積み上げて見積もりましょう。

間借り・シェアキッチン・テナントの違いは?費用と自由度の比較表

違いは「初期費用の中身」「毎月の固定費」「営業許可と営業時間の自由度」の3点です。間借りとは、営業中の飲食店の定休日や営業時間外などの空き時間に、その店の厨房を借りて営業することです。シェアキッチンとは、埼玉県の案内によると「複数の利用者で一つの調理場を共有する営業形態」で、時間単位などで使える施設を指します。テナントとは、店舗物件を自分で借りて、自分専用の厨房と売り場をつくる形です。

比べる点間借りシェアキッチンテナント
初期費用で大きいもの利用契約の初期費用、調理道具・容器、許可の手数料、販促利用登録の費用、調理道具・容器、販促(許可の扱いは施設しだい)保証金・敷金などの物件取得費、内装・厨房設備の工事費、許可の手数料、販促
毎月の固定費利用料(定額や売上の歩合など契約しだい)使った時間・日数に応じた利用料家賃、光熱費の基本料金、設備のリース代など
営業許可間借りする側も自分の許可が必要な場合がある(自治体による)施設の運営者名義か、利用者ごとに取るかは施設と保健所しだい自分で取る。工事の前に保健所へ図面を相談する
営業時間・設備の自由度貸す店の空き時間だけ。冷蔵庫や置き場所は相談しだい予約した枠だけ。ほかの利用者と共用自分で決められる
向いている段階売れる数や客層を、固定費を抑えて試したい仕込みや製造を、必要な時間だけ行いたい販売数の見込みが立ち、毎日営業したい

表のとおり、間借りとシェアキッチンは「最初のお金を小さくする代わりに、時間と設備の自由を手放す」形です。テナントはその逆で、最初のお金は大きくなりますが、営業日や仕込み量を自分で決められます。どちらが得かではなく、今の段階でどちらの制約なら受け入れられるかで考えるのが現実的です。

間借りとシェアキッチンはどう違う?混同しやすい2つの形

間借りは「1つの店の空き時間を借りる」、シェアキッチンは「共用を前提にした施設を複数人で使う」という違いがあります。間借りは「シェアレストラン」と呼ばれることもあり、貸す店の設備や客席、立地をそのまま使えるのが特徴です。シェアキッチンは、製造や仕込みの場として使い、販売はイベントやネット、別の場所で行う人もいます。どちらも「厨房を借りる」点は同じですが、契約の相手と、許可や清掃のルールの決まり方が違うので、分けて確かめましょう。

テイクアウト専門店の開業資金は何に分けて見積もればいい?

開業資金は「初期費用」「運転資金」「予備のお金」の3つに分けて見積もります。初期費用とは、開業までに一度だけ払うお金です。運転資金とは、開業後に売上が安定するまでの間、毎月出ていくお金をまかなうための資金です。テイクアウトでは容器や袋が売れた数だけ必要になるので、材料費と合わせて運転資金に入れておきます。

分け方主な中身間借り・シェアキッチンテナント
初期費用物件取得費、内装・厨房の工事費原則かからない(契約時の費用は確認)かかる。総額の中で最も大きくなりやすい
初期費用調理道具、保存容器、レジ・決済端末持ち込む分だけ店に合わせて一式そろえる
初期費用営業許可の手数料、食品衛生責任者の講習許可を自分で取る場合にかかるかかる
初期費用看板、チラシ、オープン告知貸す店のルールの範囲で自由に用意できる
運転資金家賃・利用料、材料費、容器・袋、光熱費、人件費利用料は使った分に近い家賃は売上に関係なく毎月かかる
予備のお金売上が見込みより少ない月、設備の故障など数か月分を別にしておく数か月分を別にしておく

現場でよくあるのが、初期費用だけで資金計画を立ててしまい、開業後の数か月で手元のお金が足りなくなるケースです。2025年度新規開業実態調査でも、開業時に苦労したことは「資金繰り、資金調達」(56.9%)が最も多く、次いで「顧客・販路の開拓」(49.9%)でした。お客様が定着するまでの期間を、運転資金で支えられるかを先に確かめておきましょう。

どの形態でも必要な手続きと、そのお金は?

どの形で始める場合も、営業許可・食品衛生責任者・衛生管理の計画の3つは準備が必要です。営業許可とは、食品衛生法にもとづき、飲食店などを営むときに保健所から受ける許可のことです。食品衛生責任者とは、施設ごとに置く衛生管理の担当者で、調理師などの資格がない場合は講習を受けて資格を取ります。

  • 営業許可:手数料は自治体ごとに違います。たとえば仙台市では、飲食店営業(常設)の新規申請が19,000円です。申請から許可書の交付まで、土日祝日を除いて最低14日程度かかると案内されています
  • 食品衛生責任者:仙台市の案内では、資格がない場合の講習料は9,900円です。開業日から逆算して、講習の日程を早めに押さえておきます
  • 衛生管理の計画:厚生労働省によると、2021年6月1日に「HACCPに沿った衛生管理」が完全施行されました。小規模な事業者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が求められ、業界団体が作り厚生労働省が内容を確認した「手引書」を使って、計画づくりと記録を行えば対応できます

HACCP(ハサップ)とは、食中毒などの原因になりうる工程を前もって洗い出し、重点的に管理して記録する衛生管理の方法です。お金はあまりかかりませんが、毎日の記録に手間がかかるので、営業時間が限られる間借りやシェアキッチンでは、片付けの時間に記録を組み込んでおくと続けやすくなります。手数料や講習の内容は地域で違うため、自分の出店先の保健所のページで確かめてください。

間借りでテイクアウト専門店を始めるとき、何にお金と注意が要る?

間借りは初期費用を抑えやすい一方、営業許可を自分で取る必要があるかを最初に確かめないと、無許可営業になるおそれがあります。仙台市は「間借りした別の営業者は新たに飲食店営業等の許可を取得する必要があります」と案内し、営業場所を管轄する窓口へ確認するよう求めています。扱いは自治体によって違うことがあるので、契約前に出店先の保健所へ相談しましょう。

契約の前に、貸す店と次の点をすり合わせておくと、あとで「思っていたのと違う」が起きにくくなります。

  • 利用料の決め方:月の定額か、売上の歩合か、光熱費は別か
  • 使える設備:冷蔵庫・冷凍庫の置き場所、仕込みに使える時間、食材を保管できる量
  • 許可の名義:誰の名前で許可を取るか、食品衛生責任者を誰にするか
  • 看板や告知:のぼり・看板を出せるか、店名や地図アプリへの登録をどうするか
  • トラブル時の扱い:設備の故障や事故のときの負担、解約の予告期間

シェアキッチンでテイクアウト専門店を始めるとき、何にお金と注意が要る?

シェアキッチンは、使った分だけ払う形が多く、固定費を最も小さくしやすい形です。ただし、許可の名義と、作った商品をどこでどう売れるかは施設ごとに違います。運営者の許可の範囲で営業する施設もあれば、利用者が自分で許可を取る施設もあるので、利用登録の前に「自分の商品と売り方が、この施設で認められるか」を運営者と保健所に確かめましょう。

もう一つの注意は衛生管理です。埼玉県は、シェアキッチンでは一見きれいに見えても前の利用者の汚れやアレルゲンが残っている可能性があるとし、施設によって運営者と利用者の清掃の分担が違うと注意を促しています。予約した時間の中に、使う前と使った後の清掃まで含めて計画しておくと、利用料の見積もりも現実に近づきます。

テナントでテイクアウト専門店を始めるとき、費用が膨らみやすいのはどこ?

テナントで費用が膨らみやすいのは、物件取得費と、保健所の基準に合わせた内装・厨房の工事です。物件取得費とは、保証金や敷金、礼金、仲介手数料、前家賃など、物件を借りるときに最初に払うお金のことです。工事は、営業許可の基準を満たす形にする必要があります。仙台市も、新規開店の場合は設計の段階で図面を持って相談するよう勧めています。工事のあとに直しが出ると、費用も開業日もずれてしまうからです。

テナントは毎月の家賃が売上に関係なくかかるため、「1日に何個売れれば家賃と人件費をまかなえるか」を契約前に計算しておきます。客単価と原価率(売上に占める材料費や容器代の割合)から、1日に必要な販売数を出し、その数が立地と営業時間で現実的かを確かめましょう。

間借り・シェアキッチン・テナント、どれから始めるかは何で決める?

決め手は「売れる数の根拠がどこまであるか」です。根拠が少ないうちは間借りやシェアキッチンで小さく試し、販売数・客単価・リピートの数字がそろってからテナントを判断する順番が、開業資金を膨らませすぎない進め方です。判断は次の順で進めると整理しやすくなります。

  • 1. 売りたい商品と客単価、1日に作れる量を決める
  • 2. 間借りやシェアキッチンの候補を探し、許可の扱いと利用料を確かめる
  • 3. 数か月営業して、1日の販売数・客単価・リピートの割合を記録する
  • 4. その数字で、テナントの家賃と人件費をまかなえるかを計算する
  • 5. まかなえる見込みが立ったら、物件探しと資金調達に進む

記録した数字は、毎月1枚にまとめておくと判断に使いやすくなります。まとめ方は小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方で紹介しています。

テイクアウト専門店の開業資金が足りないときは、どう集める?

開業資金は、自己資金と金融機関からの借入を組み合わせて集めるのが一般的です。2025年度新規開業実態調査では、開業時の資金調達額は平均1,219万円で、そのうち「金融機関等からの借り入れ」が平均827万円(67.9%)、「自己資金」が平均279万円(22.9%)でした。開業前後の人が使える融資には、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」があり、新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が対象です。

融資と補助金はお金が入る時期が違うので、開業資金に補助金を当てにするときは注意が必要です。違いと使い分けは開業1〜3年目の資金調達|創業融資と補助金の違いと使い分け方で、融資の相談で求められる計画のまとめ方は新事業の創業計画書の書き方|小規模事業者が動機から資金計画まで整理で解説しています。

まとめ

テイクアウト専門店の開業資金は、間借り・シェアキッチンなら物件取得費と工事費をほぼ抑えられ、テナントならそれらが加わる分だけ大きくなります。違いは「初期費用の中身」「毎月の固定費」「営業許可と営業時間の自由度」の3点です。どの形でも、営業許可の扱いを保健所に確かめること、初期費用だけでなく運転資金と予備のお金まで見積もることが、開業後に慌てないための土台になります。

とはいえ、「どの段階でテナントに移るか」「集客と資金のどちらに先にお金を使うか」は、商品・立地・資金の事情によって答えが変わり、一人で決めきるのは難しいところです。合同会社well coの事業戦略顧問では、開業資金や集客の計画も含めて、経営者と一緒に優先順位を整理し、実行まで伴走しています。考えることが多くて手が止まっているときは、一度整理の場として使ってみてください。

よくある質問

間借りでテイクアウト専門店を始める場合も、営業許可は必要ですか?
自分で許可を取る必要がある場合があるため、事前に保健所へ確認してください。仙台市は、間借りした別の営業者は新たに飲食店営業などの許可を取る必要があると案内しています。扱いは自治体によって違うことがあるため、出店先を管轄する保健所の判断に従いましょう。
シェアキッチンなら営業許可は要りませんか?
施設しだいで、要らない場合も要る場合もあります。運営者の許可の範囲で営業できる施設もあれば、利用者ごとに許可を取る施設もあります。自分の商品と売り方が認められるかを、利用登録の前に運営者と保健所に確かめてください。
テイクアウト専門店の開業資金は、いくら用意すればいいですか?
出店の形で大きく変わるため、一律の金額では決められません。参考として、日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査では、全業種の開業費用は平均975万円、中央値600万円でした。自分の計画は、初期費用・運転資金・予備のお金に分けて積み上げて見積もるのが確実です。
間借りやシェアキッチンから、テナントに移るタイミングは?
販売数の記録から、テナントの家賃と人件費をまかなえる見込みが立ったときが目安です。1日の販売数・客単価・リピートの割合を数か月記録し、その数字で計算してから物件探しに進むと、開業資金を膨らませすぎずに済みます。

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」(2025年12月5日)/日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」/仙台市「飲食店などの営業を始める前に」/埼玉県「シェアキッチンを利用される方へ」/厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(いずれも2026年11月4日確認)

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