お問い合わせ

作って終わりのWeb制作から継続収入へ|小さな制作会社の月額メニュー

2026.11.04

文責:藤田 泰仁

Web制作の継続収入は、納品後も続く保守・運用・改善の仕事を、範囲と回数を決めた月額メニューにすることでつくれます。メニューは今の問い合わせの棚卸しから作り、成果は順位ではなく問い合わせなど確かめられる数字で報告するのが基本です。

Web制作の継続収入は「納品後に続く仕事」を月額メニューにすることでつくれる

Web制作の継続収入とは、サイトを納品したあとも毎月決まって入る売上のことです。つくり方の基本は、納品後に必ず発生する「保守」「運用」「改善」の仕事を、範囲と回数を決めた月額メニューにすることです。サイトは公開して終わりではありません。たとえばIPA(情報処理推進機構)は2026年7月22日、WordPressの脆弱性について注意喚起を出し、自動更新されたかを管理画面で確かめ、されていなければ手動での更新を検討するよう呼びかけています([IPA「WordPressの脆弱性対策について」](https://www.ipa.go.jp/security/security-alert/2026/alert20260722.html))。こうした「誰かが見ていないと困る仕事」こそ、月額の対価に置き換えやすい部分です。

この記事は、少人数の制作会社やフリーランスのWeb制作者に向けて、作って終わりの単発受注から、月額の仕事を少しずつ積み上げる形に移るための実務をまとめます。料金の相場や業界の平均は、確かめられる公的な資料が見当たらないため扱いません。代わりに、メニューの分け方、契約で決めること、成果の見せ方といった、自分で組み立てられる部分に絞って解説します。

Web制作の「保守」「運用」「改善」は何が違うのか?

違いは「目的」「作業の中身」「成果の見え方」の3点です。3つとも「月額サポート」とひとまとめに呼ばれがちですが、分けて考えるとメニューと料金の説明がしやすくなります。

区分目的主な作業の例成果の見え方
保守サイトを安全に、止まらずに動かし続けるCMS・プラグインの更新、バックアップ、サーバーやドメインの管理、不具合の対応何も起きないことが成果。作業記録で見せる
運用サイトの情報を新しく保つお知らせ・ブログ・写真の更新、営業時間や料金の修正、Googleビジネスプロフィールの更新補助更新の回数や内容で見せる
改善問い合わせや予約を増やすアクセス解析、導線やページの見直し、SEO・MEO・AEOの施策、ランディングページの修正問い合わせ数などの数字で見せる

保守とは、サイトが安全に動き続けるように裏側を手入れすることです。運用は表に出る情報を新しく保つこと、改善は数字を見ながらサイトの成果を上げることを指します。現場でよくあるのは、保守の料金で運用や改善まで頼まれ、作業量が増えても料金が変わらないケースです。最初に3つを分けておくと、「それは改善メニューの範囲です」と説明しやすくなります。

月額メニューでよくある失敗と、最初の対策は?

よくある失敗は、範囲・回数・成果の測り方を決めないまま月額を始めることです。始める前に、次の表で起きやすいことと対策を確かめておきましょう。

よくある失敗何が起きるか最初の対策
「何でも相談してください」で始める依頼が増えても料金は同じ。採算が合わなくなる月の作業時間や回数の上限を決め、超えた分は別見積もりにする
作業を報告しない保守は成果が見えにくく、解約の候補になりやすい月1回、作業記録と数字を短くまとめて送る
順位や件数を約束する約束どおりにならず信頼を失う約束するのは作業の中身と回数。数字は目安として共有する
アカウントを制作側で持つ解約時の引き継ぎでもめるドメイン・サーバー・Googleの各アカウントはお客様名義にする
既存のお客様に一斉に案内する押し売りに見え、関係が冷える相談が多いお客様から、困りごとに合わせて提案する

どの失敗も、月額メニューを「付き合いの延長」として始めたときに起きやすいものです。月額は小さな契約でも、単発の制作と同じように中身を言葉にしておくことが、長く続けるための土台になります。

小さな制作会社は、どんな順番で月額メニューを作ればいいか?

ゴールは、お客様が「何に毎月払っているか」を一目で分かる形にすることです。次の5段階で進めます。

  1. 納品後に受けている依頼を棚卸しする
  2. 依頼を保守・運用・改善の3段階に分ける
  3. 範囲・回数・契約の形を決めて書面にする
  4. 成果の測り方と報告の形を決める
  5. 相談の多いお客様から順に提案する

ステップ1:納品後の依頼を棚卸しするには?

  • 過去半年ほどのメール・チャットから、納品後の依頼を書き出す
  • 依頼ごとに、かかった時間と請求したかどうかを記録する
  • 何度も来る依頼に印をつける

この段階のゴールは、「無料でやっている仕事」を見える形にすることです。制作の仕事では、写真の差し替えや文言の修正、メールが届かないといった相談を、関係づくりのつもりで無料で受けていることがよくあります。こうした依頼こそ、お客様がすでに必要としている仕事です。新しいサービスを考えるより、今ある依頼を整理するほうが、受け入れてもらえるメニューになりやすくなります。

ステップ2:依頼を保守・運用・改善の3段階にどう分ける?

  • 棚卸しした依頼を、前の比較表の3区分に振り分ける
  • 保守だけ、保守+運用、保守+運用+改善の3つの組み合わせを作る
  • どの組み合わせにも入らない依頼は、別見積もりにする

この段階のゴールは、お客様が自分に合う段階を選べる形にすることです。保守はほとんどのサイトに必要なので、土台のメニューにします。運用は更新の手が足りないお客様向け、改善は集客の数字を伸ばしたいお客様向けです。段階を重ねる形にしておくと、最初は保守だけの契約でも、状況に合わせて運用や改善に広げる相談がしやすくなります。

ステップ3:月額の範囲と回数は、どう書面にする?

  • 月の作業時間または回数の上限と、超えたときの扱いを決める
  • 対応する日時と、返信までの目安を決める
  • 最低契約期間、解約の申し出の期限、解約後の引き継ぎを決める

この段階のゴールは、「どこまでが月額か」をお互いに同じ理解にすることです。月額の仕事は、多くの場合「準委任」の形になります。準委任とは、成果物の完成ではなく、決めた作業を行うこと自体に対価を払う契約の形です。民法では、仕事の完成に報酬を払う「請負」(第632条)と、事務の処理を任せる「準委任」(第656条で委任の規定を準用)が分かれています(e-Gov法令検索「民法」)。どちらの形で契約するかによって責任の範囲が変わるため、契約書の作り方に迷うときは、弁護士などの専門家に確かめておくと安心です。

ステップ4:月額の成果は、どう測ってどう報告する?

  • 保守は作業記録(更新したもの・バックアップの日付)で報告する
  • 改善は、問い合わせ・予約・電話など、お客様の売上に近い数字を決める
  • 月1回、A4一枚ほどの報告にまとめる

この段階のゴールは、お客様が毎月「払う理由」を確かめられる状態にすることです。保守は何も起きないことが成果なので、黙っていると価値が伝わりません。改善のメニューでは、アクセス数よりも、お客様が商売の手ごたえとして感じやすい数字を中心にします。報告書の作り方は「小規模事業者の月次レポートはA4一枚でいい|作り方と打ち手の決め方」が参考になります。お客様側の月次レポートと見る数字をそろえておくと、話が早く進みます。

ステップ5:既存のお客様には、どんな順で提案する?

  • ステップ1で依頼が多かったお客様から声をかける
  • これまでの依頼を例に、月額にするとどう変わるかを説明する
  • 新しく制作するお客様には、見積もりの段階で月額メニューも示す

この段階のゴールは、月額の契約を1件ずつ確かに増やすことです。いちばん受け入れられやすいのは、すでに何度も相談をくれているお客様です。「いつもの依頼を、決まった枠で安心して頼める形にしませんか」と伝えれば、売り込みではなく整理の提案として受け取ってもらえます。新規の制作では、納品後の体制を見積もりの段階で話しておくと、あとから月額を切り出すより自然です。

SEO・MEO・AEOを月額メニューに入れるときの注意点は?

結論は、順位を約束せず、作業の中身と報告の形を約束することです。Googleは公式の解説「SEO 業者が必要かどうか」で、Googleでの1位表示は誰にも保証できないとし、検索結果で1位になると保証する業者は避けるよう勧めています。改善メニューに検索対策を入れるなら、「月に何ページを見直すか」「何の数字を報告するか」を約束の中心にしましょう。

MEOとは、Googleマップで店や会社を見つけてもらうための取り組みです。Googleの「ビジネス プロフィールのサードパーティ ポリシー」では、お客様側が常にオーナー権限を持ち、代行する側は管理者として招待してもらうことが示されています。月額で運用を引き受けるときも、アカウントはお客様名義のままにしておくと、解約時の引き継ぎがスムーズです。お客様の立場から見た確認点は「MEOコンサルティングの契約前に確認したい5項目|費用・範囲・解約」にまとまっているので、メニューの書き方を考えるときの点検表として使えます。

AEOとは、ChatGPTやGoogleのAIによる回答など、AI検索で自社の情報が引用されやすいように整える取り組みです。新しい分野なので、効果の測り方はまだ定まっていません。月額に入れる場合も、よくある質問の整備や会社情報の統一など、作業として説明できる範囲にとどめるのが無難です。基本の考え方は「AEO対策とは?AI検索で小さな会社が引用されるために整えること」で解説しています。

まとめ:作って終わりから月額へ移るには何から始める?

最初の一歩は、納品後に無料で受けている依頼の棚卸しです。そこから保守・運用・改善の3段階に分け、範囲と回数、成果の報告の形を決めれば、小さな制作会社でも無理なく月額の仕事を積み上げられます。順位や件数は約束せず、作業の中身と、お客様の売上に近い数字を報告することが、長く続く契約につながります。

とはいえ、どのメニューから始めるか、制作の仕事とのバランスをどう取るか、今のお客様の誰に提案するかといった優先順位は、自社の中だけでは決めにくいものです。日々の制作に追われながら事業の形を見直すには、外から一緒に整理する相手がいると進めやすくなります。当社の事業戦略顧問では、商品設計や集客、業務改善を含めた事業全体の整理から実行まで、経営者の方と一緒に進めています。月額メニューの組み立て方に迷ったときは、考えの整理からご相談ください。

よくある質問

保守だけの月額メニューでも契約してもらえますか?
契約してもらえる可能性はあります。CMSの更新やバックアップは公開後も続く作業で、IPAもWordPressの更新状況を確かめるよう注意喚起しています。ただし保守は成果が見えにくいため、作業記録を毎月報告して価値を伝えることが大切です。
月額メニューの料金はどう決めればいいですか?
月に使う作業時間の上限から逆算するのが基本です。棚卸しで分かった1か月あたりの作業時間に、自社の時間単価を掛けて目安を出し、超えた分は別見積もりにします。業界の相場は公的なデータで確かめにくいため、自社の作業量を根拠にするほうが説明しやすくなります。
SEO対策で「上位表示」を目標にしてもいいですか?
目標として共有するのはよいですが、約束はしないほうが安全です。Googleは公式の解説で、1位表示は誰にも保証できないとしています。約束するのは作業の中身と回数にとどめ、問い合わせなど確かめられる数字を一緒に追いかけましょう。
月額契約を解約されたとき、サイトやアカウントはどうなりますか?
契約前に決めておけば、もめずに引き継げます。ドメイン・サーバー・Googleの各アカウントはお客様名義にし、制作側は管理者として入る形にしておくと、解約後も権限を外すだけで済みます。解約の申し出の期限と引き継ぐ資料も書面に入れておきましょう。

出典:IPA「WordPressの脆弱性対策について(CVE-2026-60137、CVE-2026-63030:wp2shell)」2026年7月22日/Google 検索セントラル「SEO 業者が必要かどうか」/Google ビジネス プロフィール ヘルプ「ビジネス プロフィールのサードパーティ ポリシー」/e-Gov法令検索「民法」(いずれも2026年11月4日確認)

CONTACT

経営者の挑戦を応援します

まずはお気軽にご相談ください。